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Microsoftが終了を告げた「WSUS」 影響を受けるユーザーはどのくらい?IT資産管理ツールの利用状況/前編

Windows管理をクラウドに移行する目的で、MicrosoftはOS更新管理を担う「WSUS」の提供を廃止する予定だ。この発表は、管理ツールのクラウドシフトを促進させる契機となるだろう。

» 2024年10月03日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 IT業界において、企業買収による製品ポートフォリオの変更やサービスの終了が相次いでいる。PC管理の領域では、2024年9月20日にMicrosoftはOS更新プログラムを集中管理する「Windows Server Update Services」(WSUS)の廃止を公表した。約20年もの間、Windowsの更新プログラムの管理を担ってきただけにその影響は大きいだろう。

 こうしてIT資産管理に影響する話題がある中で、IT資産管理ツールの活用割合や用途はどう変化したのだろうか。キーマンズネットが「IT資産管理ツールの利用状況に関するアンケート」と題して実施した調査(実施期間:2024年9月13日〜27日、回答件数:144件)を基に、ツールの利用状況や課題点などを掘り下げる。

混乱必至か、Microsoftが廃止を宣言した「WSUS」の利用状況

 まず、勤務先でのIT資産管理ツールの利用状況を尋ねたところ、「導入済み(リプレース予定なし)」が39.6%、「導入済み(リプレース予定あり)」が12.5%となり、合計すると「導入済み」と回答した割合は52.1%。一方で「必要性を感じるが検討しない」は21.5%、「必要性を感じない」は18.1%で、全体の約4割が「ツールを必要としていない」とした(図1)。

図1 勤務先ではIT資産管理ツールを導入しているか

 この結果を従業員規模別に見ると、100人以下の中小企業では導入割合が16.7%、導入検討割合が9.5%であったのに対し、5001人以上の大企業では導入率77.5%、導入検討割合30.0%と大きく差が開いた。特に100人以下の中小企業における割合の低さが全体平均を押し下げている。

IT部門の新たな悩みのタネ「WSUS終了問題」 利用者の割合はどれほどか

 IT資産管理ツールにはOS更新管理機能を搭載しているものもあり、WSUSで更新プログラムを取得後クライアントに配信し、IT資産管理ツールで適用状況を確認するといったフローで運用している企業もある。前述の通り、WSUSは将来的に廃止される予定だ。勤務先におけるWSUSの利用割合は、現在どれほどなのだろうか。

 勤務先でWSUSを利用しているかと尋ねたところ、「利用している」が53.3%、「利用しているが、切り替えを検討」が6.7%。合計すると「利用している」とした割合は60.0%となった(図2)。2023年に実施した調査結果と比較したところ、前回の45.0%から15.0ポイント増加した。

図2 勤務先ではWSUSを利用しているか

 WSUS廃止後も現機能は維持され「Windows Server 2025」でも引き続き利用できるとのことだが、Microsotはクライアント更新管理用の「Windows Autopatch」や「Microsoft Intune」などのクラウドサービスへの移行を推奨している。

 言うまでもなく、OS管理はIT部門だけでなくPCを利用する全ての従業員に関わることだ。脆弱(ぜいじゃく)性を抱えたままのPCを利用し続けることは企業にとってリスクだ。WSUSだけでOSの更新管理をしている多くの企業は、OS更新管理フローの再構築を余儀なくされるだろう。

IT資産管理ツールで重視するポイント

 IT資産管理ツールも多機能化が進んでいるが、ユーザーが一番求めているもの何だろうか。「IT資産管理ツールで利用している機能」を尋ねた項目から、それを読み解いていく。

 利用している機能として上位に挙がったのが「資産台帳作成」(51.7%)や「ログ収集・監視」(48.3%)、「OSの更新管理」(47.1%)だ(図3)。周知の通り、ランサムウェアを使ったサイバー攻撃の被害件数は増加し、セキュリティ対策の難易度が上がっていることから、エンドポイントセキュリティを強化するために「OSの更新管理」(47.1%)や「セキュリティパッチ管理」(39.1%)の割合は上昇傾向にある。

図3 IT資産管理ツールで利用している機能はどれか

 ツールの導入時に重視するポイントは「管理項目、機能」(13.8%)や「セキュリティ関連機能の充実」(10.3%)の割合が年々上昇傾向にある(図4)。

図4 IT資産管理ツール導入時の一番の重視ポイント

未導入の理由は「問題が発生していないから」「Excelで十分」

 企業によってIT資産管理の手法はさまざまだ。前述した通り、従業員数100人以下の中小企業を中心に、全体の4割はIT資産管理ツールは「未導入」という状況だ。

 最後に、IT資産管理ツールの「必要性を感じない」と回答した人を対象に、その理由を尋ねた結果を紹介する。

 最も多かったのは、「管理するほどのIT資産がない」「PCやサーバの台数がそれほど多くない」「Microsoft Excelでの管理で十分」「小規模なので汎用(はんよう)的な構成管理DB(自社作成)で間に合っている」といった、そもそも管理対象が少ないため、ツールを導入するまでもないといったコメントだ。

 2つ目は「IT資産管理ツールにかける予算がおりない」「予算を捻出できない」といった「コスト」に関するコメントだ。予算を捻出できない理由として「他に優先順位が高いものがある」が大多数だった。中には「経営層への訴求が難しい」「有用なツールが分からない」など、ツールの必要性を感じているものの稟議プロセスに課題があり導入に至らないといったコメントもあった。

 一方で「まだトラブルが発生していないから」「特に問題は起きていないから」といったコメントもあり、問題が発生していないため良しとしているようだ。前述のように、セキュリティリスクが高まっている現在、コンプライアンスや内部統制、セキュリティの強化が今後ますます重要課題になう。問題を未然に防ぐ体制構築の必要性が問われ、こうした認識の企業はいま一度、IT資産管理の運用体制を見直してほしい。

 以上、前編では企業におけるIT資産管理ツールやWSUSの導入実態を紹介した。後編でも引き続き、ツールの利用状況を深堀するとともに、IT資産管理運用の参考とすべくIT資産管理で実際に生じた”他社事故例”を取り上げる。

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