情シスは所属する企業の規模や業種業態によって求められるスキル、習得できるスキルが大きく異なる。読者調査を基に、情シスの有しているスキルや実際にキャリアで役立ったスキルをまとめた。
情報システム部門の従業員(以下、情シス)は、所属する企業の規模や業種業態によって求められるスキル、習得できるスキルが大きく異なる。そうした情シスの実態を明らかにするため、キーマンズネットは情シスに関する読者調査を実施した(実施期間:2024年8月7日〜10月4日、回答数:246)。
本稿は情シスの有しているスキルや、実際にキャリアで役立ったスキルについてを掘り下げる。以降では、情シスのスキルセットについて回答結果(企業規模別)を以下のようなレーダーチャートにまとめ、解説する。スキルアップで悩んでいる情シスには参考になるかもしれない。
まず、情シスに向けて「保有しているスキル」を聞いた(複数回答可)ところ、「PC管理」(56.1%)に最も多くの回答が集まった(図1)。企業規模別で見ると、5001人以上の企業に属する回答者の割合は平均から約16ポイント低い40.7%であることから、アウトソースなどで業務を切り分けている可能性がある。
2位は「上流工程」(要件定義、計画立案など)(45.5%)だ。上流工程と比べると「下流工程」(31.7%)は14ポイントほど低く、情シスにはシステムの実開発よりもSIerなどとの橋渡しが求められているのが分かる。ただ、100人以下の企業では「上流工程」が40.3%であるのに対し「下流工程」も40.3%と同じ割合であり、要件定義から開発までの全てが求められている。
3位以降は「IT戦略の立案」(43.9%)、「ヘルプデスク」(42.7%)、「プロジェクトマネジメント」(42.3%)と続いた。ヘルプデスクについては企業規模によってスキルの保有状況が異なり、101〜1000人の企業帯では58.7%が「保有している」と回答したのに対して、5001人以上の企業は28.8%と30ポイント以上の差が開いた。全体順位を見ると、上位5件のうち3件が「上流工程」「IT戦略の立案」「プロジェクトマネジメント」とビジネス戦略寄りのスキルであった。
上位5件以外で企業規模によって差異がみられた項目として、「オンプレミスの導入、運用、保守」(37.8%)が挙げられる。100人以下の企業の回答が44.4%、101〜1000人が42.9%、1001〜5000人が32.7%、5001人以上が28.8%と、企業規模が大きくなるに従ってスキルを保有している人の割合が減少した。企業規模が大きくなるほど、クラウドを基にシステムを構築する企業が増えるのだろう。
また、「データ分析」(20.7%)については、5001人以上の企業の28.8%がスキルを持つと回答し、平均を大きく上回った。100人以下の企業を見ると、「財務、会計」については19.4%(全企業平均:11.4%)がスキルを持つと回答し、法務については9.7%(全企業平均:5.7%)、人事5.6%(全企業平均:2.8%)が挙がり、100人以下の企業における“兼任情シス”の状況がうかがえる。
ここからは、企業規模帯ごとに情シスのスキルセットをレーダーチャートでまとめてみた。スキルを有している人の割合が10%を下回った項目についてはグラフから除外している。まずは従業員数100人以下の企業の情シスが有しているスキルだ(図2)。平均値と近い項目が多い中、上述したように「下流工程」「オンプレミの導入、運用、保守」の割合が高く、「予算の策定」「資料作成」も平均を上回っている。
次に、従業員数101〜1000人以下の企業の情シスが有しているスキルだ(図3)。「PC管理」「ヘルプデスク」といった項目の割合が高いことから、定型業務をアウトソースせずに自力で解決している企業が多いのかもしれない。また、「社内外との円滑なコミュニケーション」「ヒアリング能力」「部下や組織のマネジメント」といったマネジメントやコミュニケーションに関するスキルが平均を多く上回っているのも特徴だ。社内外のステークホルダーを相手に業務をドライブさせる役割を担っていると考えられる。
そして、従業員数1001〜5000人以下の企業の情シスが有しているスキルだ(図4)。特に他の企業規模帯に比べて万遍なく平均値を上回っているように見える。1000人以上の企業は大企業帯に分類されるが業務は細分化されず、いわゆる“何でも屋情シス”として働く人が多いのかもしれない。
最後に、従業員数5000人以上の企業の情シスが有しているスキルだ(図6)。平均を大きく下回るスキル項目が各企業規模帯の中で最も多く、レーダーチャートの面積も特に小さく見える。業務が細分化され情シスの役割が限定されているのだろう。
次に、「情シスが保有しているスキルのうち、業務やキャリアで特に役に立っているスキルを3つ」を聞いた。結果、1位が「IT戦略の立案」(24.8%)(図6)、2位が「上流工程」(19.5%)、3位が「プロジェクトマネジメント」(10.2%)であった。実作業寄りのスキルよりもビジネスに直接関わるスキルが求められているのが分かる。
1位の回答を企業規模別に見ると、100人以下では「ヘルプデスク」(12.5%)が全企業規模の平均値6.1%を大きく上回っている。また、101〜1000人の企業は「下流工程(プログラミング、テストなど)」(11.1%)が全企業平均4.9%を上回り、「社内外との円滑なコミュニケーション」(14.3%)も全企業平均8.1%を上回った。5001人以上の企業については、「AI/機械学習/生成AI」が10.2%と全企業平均の4.9%を大幅に上回っている。
あくまで参考までに、情シスが保有しているスキルと業務やキャリアで役に立ったスキルの差が大きい項目を見てみた。結果、「PC管理」(56.1%)が情シスが現在保有しているスキルとして一番高かったのに対し、業務やキャリアで役に立ったスキルとして「PC管理」を挙げたのはわずか8.9%だった。ヘルプデスクについても同様で、42.7%がスキルを有しているが、業務やキャリアに役立つとした人は6.1%と差が開いている。
今回の結果から、情シスが有しているスキルと実際にキャリアで役立つスキルのギャップや、企業規模ごとの特色が分かった。次回は、情シスのIT資格の保有や活用の状況についてを紹介する。
全回答者246人のうち、100人以下の企業規模帯は72人、101〜1000人は63人、1001〜5000人は52人、5001人以上は59人であった。
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