医療記録や会議議事録の作成支援に生成AIを使う場合、出力結果を誰が、どの段階で確認するのかを明確にすることが重要だ。九州がんセンターが議事録作成業務を70%削減した鍵は「任せ切らない」運用にあった。
生成AIの活用先は、対話応答や検索補助だけではない。例えば医療現場ではカルテや退院サマリー、診療情報提供書、カンファレンス記録、会議議事録の作成支援などでも使われる。ただし、そこで問題になるのはAIの出力をどこまで使い、どの段階で人が確認するかを決めることだ。なぜなら医療記録は間違いが許されないからだ。
九州がんセンターは、独立行政法人国立病院機構(NHO)に属するがん専門病院として高度な医療を提供する一方で、職員の記録業務や事務作業の負担軽減に取り組んできた。同院はこの一環として、初診時カルテの下書き作成、退院サマリーや診療情報提供書の下書き、インフォームドコンセントやカンファレンス記録、会議議事録などを生成AIで効率化することに決めた。
生成AIに関する運用課題に、同院はどう対処したのか。
導入に当たって同院は、Ubieの医療機関向けAIプラットフォーム「ユビー生成AI」について、独自の利用規定とガイドラインを策定した。AIの出力はあくまで下書きとし、最終確認は必ず医療職が実施するという原則を院内で徹底したという。併せて、国立病院機構本部のセキュリティ規定に対応したデータ連携の仕組みを整備し、電子カルテの前日分データを毎日1時に自動連携する環境を構築したとしている。
初診の支援については、医師事務作業補助者が紹介状から初診時カルテの下書きを生成する運用を確立した。1患者当たりの入力作成時間は平均22分から12分に短縮され、月間新患約300件換算で月間約3000分、約50時間の業務時間創出に相当するという。会議運営では、会議音声から文字起こしと議事録素案を作成し、議事録作成の労力を70%削減したとしている。
この事例で見えるのは、生成AI活用の焦点が「どれだけ自動化するか」だけではないという点だ。医療現場では、AIが作った文章をそのまま業務記録にするのではなく、人が確認することを前提とした運用設計が欠かせない。九州がんセンターの取り組みは、文書作成の負担軽減と確認責任の明確化を同時に進める運用例といえる。
同院は今後、今回の知見を基に使用権限を段階的に拡大し、病院全体での活用を進める予定だ。また、国立病院機構の先行モデルとして、活用事例や運用方法を全国のNHO病院へ共有、展開する考えも示している。なお、本稿は2026年7月2日にUbieが発表したリリースを基に再構成したものだ。
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