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承認が遅いのは承認者のせいではない? ハンコを消したら、“判断待ち”の正体が見えてきた

紙の申請もはんこのリレーも減ったはずなのに、承認待ちはなくならない。どこで止まっているのか。誰が止めているのか。キーマンズネットの過去記事を振り返ると、ワークフロー化で見落とされがちな停滞の理由が見えてきた。

» 2026年07月15日 07時00分 公開
[中村篤志キーマンズネット]

 紙の申請書を持って上司の席を回る。承認印をもらうために担当者を探す。そうした光景は、ワークフローツールの普及によって以前より減った印象だ。ただ、申請や承認の面倒さがなくなったかというと話は別だ。承認待ちが続くと、つい「承認者の対応が遅い」と考えたくなる。だが、はんこをなくし、申請の流れをデジタル化したことで、別の停滞要因も見えやすくなってきた。

 キーマンズネットの過去記事を振り返りながら、ワークフロー化で残る“判断待ち”の正体を考える。

ワークフローは広がった それでも紙とメールは残っている

 申請・承認業務のデジタル化は、着実に進んでいる。2025年9月18日公開の調査記事では、社内の書類や申請案件の回覧、承認方法を調査した。調査では、専用のワークフローツールを使う企業が62.5%だった一方で、メールでの回覧や承認、紙の書類回覧、「Microsoft Excel」や「Microsoft Word」のファイルを送付する方法も残っていた。

 同記事では、2022年の前回調査と比べて専用ワークフローツールの利用が増え、汎用(はんよう)ツールによる申請が減ったことも分かった。この結果だけを見ると、申請・承認業務のデジタル化は進んでいるように見える。

 ただし、ワークフロー化が進んだことと、承認業務が分かりやすくなったことは同じではない。ツールを入れれば、紙の申請書を回す手間は減らせる。だが、どの申請をどのフォームに入力するのか、誰が承認するのか、例外時に誰へ相談するのかが曖昧(あいまい)なままなら、現場の迷いは残ってしまう。

「使いやすさ」が重視されるのは、現場が使い続けるツールだから

 ワークフローは一部の管理部門だけが使う仕組みではない。稟議(りんぎ)や経費精算、休暇申請、購買申請など、多くの従業員が日常的に触れる業務基盤だ。

 2025年9月25日公開の後編記事では、ワークフローツールを導入している企業の満足度や選定時の重視ポイント、現場課題を掘り下げた。同記事では、ワークフローツールの活用用途として「稟議・決裁申請」「経費精算・出張申請」「休暇・勤怠申請」「購買・発注申請」などが挙がった。

 ここで重要なのは、ツール選定時に「操作性・使いやすさ」が重視されていた点だ。ワークフローは、導入して終わりのシステムではない。申請者や承認者、管理者が日々使い、組織変更やルール変更にも対応し続ける必要がある。だからこそ、現場が迷わず使えるかどうかが、コストや機能の多さ以上に重要になる。

 裏を返せば、ワークフローの失敗は「機能が足りない」だけでは起きない。入力項目が分かりにくい、承認ルートが見えない、紙やメールの運用が一部に残る、部門ごとに申請方法が違う。そうした小さな迷いが積み重なると、ツールは効率化の手段ではなく、現場を疲れさせる仕組みになるということだ。

紙と複数システムの混在が、承認を複雑にする

 ワークフロー化の課題は、個別企業の事例からも見えてくる。2025年6月17日公開の事例記事によると、グループ2社の合併を機に発足した日テレWandsで、複数のワークフローシステムと紙ベースの申請が混在していた。従来の仕組みでは、申請のたびに申請者が承認経路やフォームを設定する必要があった。申請フォームの作成や編集にも専用アプリケーションが必要で、業務の変化に合わせた見直しがしにくい状態だったという。

 この事例が示すのは、承認業務の面倒さは「紙が残っているから」だけではないということだ。紙とシステムが混在する。複数のワークフローが並立する。申請者自身が承認経路を考えなければならない。こうした状態では、たとえ一部がデジタル化されていても、現場は迷う。

 ワークフロー化で本当に減らすべきなのは紙の枚数だけではない。申請者が毎回判断しなければならないこと、管理者が手作業で設定変更しなければならないこと、部門ごとに違うルールを探しに行くこと。こうした“見えにくい判断待ち”こそ、承認業務を止める原因になる。

AIワークフローでも、判断の責任は消えない

 承認業務を支援する技術も進んでいる。AI-OCRによる書類情報の抽出や転記、入力内容の自動チェック、申請金額や必要項目の確認、承認ルートへの振り分けなど、従来は人の目視や手作業に頼っていた作業を支援する機能が出てきた。

 2025年7月17日公開の解説記事では、こうしたAIワークフローの活用例を整理した。

 これらの機能は、申請・承認業務の手戻りを減らす上で有効だろう。記入漏れや添付漏れを申請時点で検知できれば、承認者に回ってから差し戻す手間を減らせる。申請内容の要約や分類ができれば、確認作業の負担も下げられる。

 ただし、AIが入れば承認業務の問題が自動的に解決するわけではない。AIが不備を見つけるとしても、どの不備を差し戻すのか、どこまでを自動判断に任せるのか、例外的な申請を誰が見るのかは、人と組織が決めなければならない。

 むしろAIワークフローの普及によって、これまで曖昧にしていた判断責任が見えやすくなる可能性がある。AIが承認可否を提案した場合、最終判断者は誰なのか。AIが承認ルートを推奨した場合、そのルートが誤っていたときに誰が修正するのか。AIを導入するほど、業務ルールと責任分担の設計が問われる。

承認が止まるのは、ボタンの前だけではない

 過去記事を束ねると、承認業務のつまずきは次のように整理できる。

・紙やはんこをなくしても、承認ルートが曖昧なら申請は止まる

・紙やメール、Excel、専用ツールが併存すると、現場はどの方法を使うべきかで迷う

・組織変更や例外処理に合わせてワークフローを更新できなければ、ツールは現場の実態からずれていく

・AIでチェックや振り分けを支援できても、判断責任や例外対応の設計までは自動化できない

 つまり、ワークフロー化の本質は、承認ボタンを画面上に置くことではない。誰が判断するのか、どの条件で次に進めるのか、例外時にはどこへ戻すのかを、現場が迷わない形にすることだ。

 では、今すぐできることは何か。まずは、よく使われる申請を数個選び、「申請者が迷う地点」を洗い出すことから始めたい。入力項目ではなく、どのフォームを使うべきか、誰に回すべきか、どの添付資料が必要か、例外時に誰へ聞くべきかを見る。

 次に、紙やメール、Excelで残っている申請を全て一気に置き換えようとするのではなく、ワークフローと併存している理由を確認する。残っている理由が「現場の慣れ」なのか、「ツールが対応していない例外」なのか、「承認者や管理部門の都合」なのかで、打ち手は変わる。

承認前の“判断待ち”をなくすのは業務設計

 承認が遅いとき、承認者の対応だけに目を向けても原因は見えにくい。過去記事を振り返ると、申請者が経路を選ぶ段階、例外を扱う段階、AIやシステムに任せる範囲を決める段階にも、承認前の“判断待ち”が残っていることが分かる。

 はんこをなくすことは、承認業務の改善に向けた一歩だった。だが、それだけでは申請が迷わず承認に届くとは限らない。承認を早くするために必要なのは、承認者を急かすことではなく、承認にたどり着くまでの迷いを業務設計として減らすことだ。

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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

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