Teams会議をAIエージェントの「教材」に 埋もれた経験則を資産に変える新たな手法とは
AIエージェントの活用が広がる中、企業固有の「仕事の進め方」をどうAIに教えるかが課題になっている。Teams会議に埋もれた判断や経験則を、AIが扱える業務知識へどう変換するか。
AIエージェントが浸透しつつある一方で、企業が自社固有の業務をAIに任せる上では、人が経験や判断で身につけている仕事の進め方をどうAIに教えるかが課題になっている。
業務マニュアルやデータをAIに与えるだけでは、実際の仕事で必要となる判断基準や例外対応まで再現するのは難しい。例えば、設計レビューや案件検討、障害対応などの会議では、過去の事例やリスクを踏まえた判断がなされるが、その背景にある経験則や判断条件は、議事録として十分に残らないケースもある。
こうした「暗黙的な業務知識」をAIエージェントが利用できる形に変換しようとしているのが、ヘッドウォータースの「SyncLect Agent Garden」だ。同社は2026年9月18日、同サービスの提供を開始した。
Teams会議に眠る「人の判断」をどう資産化するか
企業固有のAIエージェントを構築する際には、単に社内文書を検索できるようにするだけでは不十分だ。実際の業務では、「どの条件なら次の工程に進むのか」「例外が発生した場合に誰へ確認するのか」「過去のどの事例を参考にするのか」といった判断が求められる。
こうした情報は、マニュアルに明文化されているとは限らない。担当者へのヒアリングや、日々の会議で交わされる議論の中に分散していることも多い。
これまでも企業がAIエージェントを開発する際には、業務担当者から知識を聞き出し、コンサルタントや専門人材が業務フローや判断基準を整理する方法が取られてきた。だが、部門や業務ごとにAIエージェントを増やしていく場合、専門人材の確保や開発期間、導入後の更新作業が負担になり得る。
ヘッドウォータースは、こうした課題に対して、日常的で行われている「Teams」での会議や既存の業務資料を業務知識の抽出元として活用する。
Teams会議から「判断」「経験則」「例外対応」を抽出
SyncLect Agent Gardenでは、Teams会議の録画やトランスクリプト、「Word」や「PowerPoint」「Excel」、PDF、CSV、Markdownなどの資料をAIが解析する。そこから、業務上の判断や経験則、標準ルール、業務手順、例外対応、判断根拠、関係者、利用データなどを抽出し、人と業務、データ、ルールの関係を示す「オントロジー」(業務の意味モデル)の候補として整理する。
ポイントは、AIが抽出した内容をそのまま業務ルールとして扱うのではなく、業務担当者が確認するプロセスを設けていることだ。
AIは判断基準や例外条件などの候補を提示し、不足している情報について追加質問を行う。業務担当者は必要な内容を選択、検証しながら、企業固有の業務知識として整備していく。
つまり、専門家が業務担当者から一つずつ知識を聞き出すのではなく、AIが日常の業務情報から「仕事の型」の候補を見つけ、担当者が仕上げていく仕組みだ。
「議事録をAIに覚えさせる」との違い
企業では既に会議の議事録を生成AIに読み込ませ、過去の議論を検索したり、質問に回答させたりする使い方がある。ただ、議事録から分かるのは基本的に「何が話されたか」だ。AIエージェントが業務を実行するには、「どの条件で、どう判断し、次に何をするのか」という情報が必要になる。
会議では、正式決定前の意見や却下案、その場限りの例外対応なども話される。そのため、会話をそのままAIに記憶させるだけでは、企業固有の業務を再現するためのルールとして利用するのは難しい。
SyncLect Agent Gardenでは、会議や資料から判断基準や例外対応などを抽出した上で、業務担当者による確認を加えることで、AIエージェントが利用できる業務知識へ変換する。
AIエージェントを「作って終わり」にしない
同サービスでは、業務知識の抽出だけでなく、AIエージェントの定義作成や回答検証までを支援する。
現行版では、業務知識や業務手順、AIエージェントの名称・説明、システム指示文、会話スターターなどを出力でき、「Microsoft 365 Copilot Agent Builder」でのAIエージェント作成に利用できる。
また、想定する業務上の質問を投げて回答を確認し、手順に沿って処理できるか、情報が不足した場合に適切な確認を行うかなどを検証する。新たな会議や資料、業務変更を反映しながら、業務知識とAIエージェントを継続的に更新することも想定している。
ヘッドウォータースは、FDEや「SyncLect Data Intelligence」(SDI)と組み合わせ、顧客企業の「Microsoft Azure」および「Microsoft 365」環境を中心に導入する。MicrosoftやDatabricksのデータ、AI基盤との連携も進め、業務の意味モデルと企業データを結び付けるとしている。
「AIに仕事を任せる」ための知識をどう資産化するか
AIエージェントの活用範囲が広がれば、企業内では問い合わせ対応や情報検索だけでなく、営業や審査、品質管理、システム運用など、用途ごとに多数のエージェントが必要になる。
そのとき問題になるのが、それぞれのAIエージェントに企業固有の仕事の進め方をどう教え、誰が更新するのかという点だ。
ヘッドウォータースが狙うのは、Teams会議や業務資料の中に埋もれている判断や経験則を継続的に取り出し、AIエージェントで再利用できる業務資産へ変えていくこと。AIエージェントの普及が進む中で、こうした業務知識の構造化が新たな企業課題になる可能性がある。
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