同プロジェクトは、今後の具体的な展開として「オープン化とグローバルなコミュニティー形成」「成果の国際デファクト標準化、グローバル展開」「実用化、製品化の推進」を挙げる。これらは全て日本製SDNソフトウェアの世界への波及を目指すものといえる。
これまで日本発のソフトウェアが世界で受け入れられる事例は少なかったが、この領域だけは別物だ。SDN実用化に一歩先んじているメリットを生かし、かつ日本独特のきめ細かさを盛り込んだ管理制御プラットフォームがオープン化されれば、国内はもちろん諸外国でも専用機器の購入やネットワークの大幅変更の必要なくSDN化が図れるようになる。専用ハードウェアではなく、簡単にコピー可能なソフトウェアなので、導入が簡単でカスタマイズも可能だ。
ネットワークの管理や制御技術はいわばノウハウの塊だ。それが統一プラットフォームで共有されるようになれば、世界のネットワークのナレッジが集約できることにもなりそうだ。広域SDNにより、企業のネットワーク専門技術者に新しいスキルや技術が要求される時代が到来する。ネットワーク技術者の未来を創るか奪うか、大きな仕掛けとなるだろう。
ネットワーク機器を単一のソフトウェアで管理、制御する技術を適用したネットワークのこと。従来はネットワーク機器個別に専用運用管理ツールや独特の設定方法があり、ネットワーク構築や運用管理に専門技術者の知識と作業が必要だった。
このデメリットを解消するために、従来の機器から制御機能を切り離し、集中管理可能な単一ソフトウェアからの制御に任せたのがSDNだ。代表的なプロトコルのOpenflow対応SDNコントローラーが市販されて実用化が進んでいる。
「O3プロジェクト」との関連は?
SDN技術を利用して広域ネットワークでも単一ソフトウェアでネットワーク設計、構築、制御、運用管理が行えるようにするのがO3プロジェクトの目標だ。
ネットワークのSDN化には、SDNに対応する機器(Openflowプロトコル対応スイッチやルーターなどとSDNコントローラー)で新しくネットワークを構成する方式の他、既存の機器はそのままに、エッジスイッチをVXLANやGREなどの技術で結び(トンネリング)、そのうちの1つをSDNコントローラーにつなぐ方式がある。
後者は従来のネットワークにSDNをかぶせる格好になるのでオーバーレイネットワークと呼ばれる。例えば、データセンターが広域SDNに参加するときには、まず変更が少なくて済むオーバーレイ方式にし、将来的には全体をSDN対応機器に置き換えていくような方針が取れる。
「O3プロジェクト」との関連は?
O3プロジェクトが開発中の管理制御プラットフォームに対応するようにオーバーレイネットワークから情報を収集し、その中の機器を制御するためのソフトウェアモジュールが同時に開発されている。また、既存の設備から徐々にSDN対応機器へとネットワークを移行するプロセスを支援するために、移行管理のためのモジュールも同時に提供される予定だ。
企業間やデータセンター間の通信は、通信事業者が、電話回線に使用される高品質で高信頼のTDM(Time Domain Multiplex)やSDH(Synchronous Digital Hierarchy)回線を用いた専用線サービスが使われることが多かった。
パケットネットワーク技術の進歩により、SDHよりも柔軟で高速、低コストなパケット交換回線に置き換えるケースが増えている。従来の高品質で高信頼のTDMやSDH回線サービスと柔軟かつ低コストなパケットサービスが共存できるのがパケットトランスポートネットワークだ。
「O3プロジェクト」との関連は?
O3プロジェクトが開発中の管理制御プラットフォームに対応するネットワークドライバの1つとして、パケットトランスポートネットワーク用のドライバが開発されている。
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