企業システムにおける仮想化の利用率は高まり続けるが、Windows Server 2003の延長サポート終了への対応が進む過程で、その傾向に拍車が掛かっているように見受けられる。ただし、仮想化が進めば進むほど、当初は予想していなかった問題に直面するIT部門も少なくない。
例えば、特性が異なる多数のワークロードが相乗りする仮想基盤の管理だ。それぞれ物理的に異なる環境で管理してきたものを1つのプラットフォーム上に集約することになるため、従来に比べてパフォーマンスやサービスレベルの維持に腐心する場面も多くなることだろう。
そんな課題を解決する際には、垂直統合型システムは有効な解決策となるはずだ。これは裏を返せば、課題意識がないところに垂直統合型システムのメリットは理解されないものとなる。
新規サービスの俊敏な立ち上げやシステムリソースの柔軟な増減など、ビジネス側からの明確な要望に応える基盤として、垂直統合型システムは有力な選択肢となる。
ただし、IT基盤に対して単なるコスト削減のみを求めるのであれば、垂直統合型システムは最適な解決策にはならない。仮想化によってサーバやストレージのリソース利用率を高める、あるいはパブリッククラウドへ移行するといった別の手段によっても目的を達成することが可能だからだ。
もちろん、基盤のインテグレーションコストは軽減できる可能性はあるものの、垂直統合型システムそのものに大幅なコスト削減効果を期待しない方が賢明だろう。
特に汎用タイプの垂直統合型システムにとって、最大のライバルはパブリッククラウドとなる。これまでオンプレミスでの運用を前提としたERPやビッグデータ分析も、パブリッククラウドでの実行環境のサポートが広がる現状を考えれば、目的特化タイプの垂直統合型システムも例外ではなくなりつつある。
ITシステムを「所有する」のか「利用する」のかといった論点でとらえた場合、垂直統合型システムを選択することの本質は「利用する」にあるにもかかわらず、導入実態としては「所有する」という道を選択することになる。
あえてITシステムを「所有する」ことにどんな意義を持っているのか。メリットとデメリットを、事前に十分吟味することが肝要だ。
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