最近注目されているのは「移行ツールとしてのバックアップ」だ。仮想環境の活用が進む中、ある物理環境を別の物理環境へ、あるいは仮想環境へ移行するといった場合にバックアップツールが活用できる。
昨今のバックアップツールでは、データを異なるアーキテクチャを持つ物理/仮想マシンにも復元できる。これを応用してバックアップデータを別のマシンに“リストア”することで移行が完了するというわけだ。これは、クライアントPCだけでなくファイルサーバの移行でも使える方法だ。
当然のことながら移行作業後には本来のバックアップ用途で使える。1回の投資で複数の目的が達成できることを訴求すれば、何かと制約が大きいIT予算の獲得のための説得材料の1つにもなるだろう。システムリプレースを計画しているのであれば、まずはバックアップツールを先行して導入し、機能の検証を行ってみたい。
そしてもう1つ、バックアップの重要な役割として「セキュリティ対策」という側面が注目され始めている。この背景には、PCやサーバ内にあるデータを不正に暗号化し、その解除のために“身代金”を要求する「ランサムウェア」の台頭がある。セキュリティの専門家は、バックアップデータの取得こそ、ランサムウェア対策として最も有効かつ確実な対策だと指摘する。
2015年は、日本国内でも多くのランサムウェアの感染報告があった。そもそもの感染を防ぐことも大事だが、攻撃者はさまざまな手段を駆使して襲ってくる。そして忘れてはならないのは、データを不正にロックされてしまった場合に相手の言いなりとなって身代金を払ったとしても、本当に暗号化を解除してくれるかどうかの保証は全くないという点だ。だったらバックアップデータをリストアしたほうが確実かつ安上がりだろう。
ランサムウェア以外にも、企業Webサイトの脆弱性を狙った改ざん被害が多発している。この改ざんに対しても、バックアップがなければ復旧は不可能と考えてよい。バックアップ対策はセキュリティ対策としても必要であることは、情報システム部が把握しておかなくてはならないポイントだろう。
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