先に紹介したホップバイホップ方式のSDNは、OpenFlowに準拠したハードウェア機器を導入する必要があり、ある程度の初期導入コストがかかる。そのためネットワーク機器の更新タイミングでまとまった投資を行うのが一般的な導入方法だ。
しかし大規模なクラウド環境やデータセンターを運営する企業ならともかく、一般企業が普段利用する中小規模ネットワークでは、ネットワーク機器に対する多額の投資は少しハードルが高いかもしれない。そうしたケースでは、初期導入コストをおさえられるオーバーレイ方式が適しているだろう。
オーバーレイ方式は、VMware ESXiなどの仮想化ハイパーバイザーの中に仮想スイッチの機能を取り込み、既存ネットワークインフラの上に仮想ネットワークのトンネルを通すというやり方でSDNを実現する。既存のネットワーク機器がそのまま使えるため、ホップバイホップ方式と比べるとハードウェア投資をかなり低くおさえられる。
ただしホップバイホップ方式と比べ、性能や自由度の面で多少の制約が掛かるため、コストだけにとらわれることなく、本当にオーバーレイ方式で自社のニーズを満たすことができるか、慎重に検討する必要があるだろう。
サーバ仮想化は、今日では企業やシステムの規模を問わず、ごく当たり前の技術として使われるようになった。当初はサーバ集約によるコストメリットが注目されたサーバ仮想化だが、その利用が浸透するにつれ、仮想マシンをライブマイグレーションで別の物理サーバに移動させることでシステムの可用性を高めたり、サーバリソースの稼働率を高めたりといった活用に乗り出す企業が増えてきた。
しかし、実際にライブマイグレーションを行うとなるとさまざまな技術面での困難にぶつかり、思うような成果を上げられないケースも多いと聞く。特に多いのが、仮想サーバを異なるネットワークセグメントに移動させた際、ネットワーク設定の更新作業がネックとなり、ライブマイグレーションのメリットを十分に生かしきれないというケースだ。
この問題にいち早く気付いたのが、仮想化ハイパーバイザーソフトウェアを開発・提供するベンダーだ。特にヴイエムウェアは、自社のサーバ仮想化製品のメリットを十分に引き出すにはネットワーク仮想化やSDNの機能もあわせて提供する必要があると判断し、早くからSDNに対する取り組みを進めてきた。同社のSDN製品「VMware NSX」はこのように背景の下に開発され、VMware vSphereの仮想化環境に対してソフトウェアベースのSDNを提供する。
SDNに必要な機能のほとんどがハイパーバイザーの中に組み込まれているため、VMware vSphereの仮想化環境を既に導入している企業であれば、最小限の手間と投資でSDN環境を構築できる。初期投資コストをおさえつつSDNのメリットを享受したいと考えている企業にとっては、有力な選択肢の1つだといえるだろう。
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