リスク管理としてのソーシャルメディア活用も重要だ。自社のサービスや製品を利用している人が何らかのトラブルや不具合にぶつかったときに、ソーシャルメディアにつぶやかれた場合、その初期対応が大きな分岐点になる場合があるからだ。
例えば、食品業界においては異物混入の情報がソーシャルメディアに投稿された場合、容易に製品の情報、メーカーの情報とひも付けられ、「拡散」してしまう。その兆候を誰よりも早く見つけ、企業の正式な窓口から回答があれば、印象も大きく変わるだろう。
その場合、ソーシャルメディアへの書き込みを常にチェックする仕組みが必要なだけでなく、その精度を上げるということも必要だ。このような書き込みチェックを行う「ソーシャルリスティングサービス」では、例えば製品名に加えて「異物」「ガリッ」「混入」「気持ち悪い」など、もし異物混入があったときに一緒につぶやかれる可能性のある「ネガティブワードの辞書」をメンテナンスし、それを検索ワードとして利用している。リスクマネジメントの1つとしてソーシャルメディア分析を使う場合、サービスを提供しているツールがどのような工夫をしているかも重要なポイントになるだろう。
さらに、リスクマネジメントの一歩手前の部分こそが、ソーシャルメディアを活用する最大のポイントだ。これは企業の「サポート」の一部としての利用で、製品やサービスに関して不明な点を持つ利用者を探し出し、聞かれる前に答えるという使い方だ。実際に困っているときに公式の窓口から回答があることで、ともすると不安が不満になる可能性があるタイミングで、自分を見てくれていたという安心感を与えることすらできる。これもツールを使い、検索ワードを工夫し、常にウォッチすることで実現できるだろう。
このように、ソーシャルメディア分析ツールは、例えばマーケティング部ならば「世代ごとの嗜好(しこう)を調査したい」「季節ごとの反応の大きさを確認したい」、広報部ならば「自社のサービスが炎上しないかを確認したい」「ネット上で自社の不祥事が広まってないかを確認したい」など、企業内の各部署が望む「ゴール」を明確化し、そのゴールにあった機能が存在するかが選定のポイントになるだろう。昨今では導入のきっかけとして「同業他社がソーシャルで炎上したから」「同業他社が導入したから」という理由もあるという。
ソーシャルメディア分析は新しい分野のものであるため、多くの企業が手探り状態で運営をしている。それだけに、ツールは「サポートがどの程度充実しているか」もポイントになる。ソーシャルメディア分析の必要性を感じた企業は、まずツールに触れ、この世界に慣れ親しむことも重要だ。普段個人として使っているソーシャルメディアを異なる視点から見ると、ビジネスの展開が大きく変わるかもしれない。
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