ペーパーレス化(デジタル化)でのテーマの1つに、データが利用可能な状態でどれだけ長期保存できるかについての懸念もある。紙媒体ならば、保管環境さえ良ければ数百年の長期保管が可能なことが分かっており、一般的な保管環境でも数十年は大丈夫なのは経験的に納得できよう。
またマイクロフィルムなら、ISO/JISが規定する保管条件に従っている限り、最低でも100年の期待寿命がある。一方でHDDでは数年、テープや光ディスクでは数十年の保管が可能だが、定期的に他の媒体へのデータ移動を行わない限り、それ以上の寿命は期待できない。
紙媒体の長期保管に関しては、例えばビルオーナー、ビルメンテナンス会社では、ビルの改築、補修のために建物や設備図面の長期保管は必須だ。さらに原子力発電所などでは60年、橋などのインフラ建築物では100年以上にわたり図面が利用される可能性を考えると、少なくとも原紙、原本は紙で残しておく方が合理的だという判断はやむを得ない。
さらに本調査で指摘があったのは、文書管理システムなどの検索性だ。例えば「役所からの問い合わせに迅速に回答したい」「顧客からの問い合わせに即座に答えたい」といった場合、今の文書管理システムでは、紙文書(ファイルやキャビネット保管した紙文書)から探し出すよりも時間がかかる場合があるというのだ。それでは必要な情報は、紙で手元に置いておきたくなるのも無理はない。
一般的にデジタル情報の方が検索性に優れると思われているが、例えばインデックスがあまり整理されずに登録された文書管理システムでは、例外的な問い合わせに対して検索機能が役立たない場合がある。また、データベース上にある情報なら良いが、いったん切り離して磁気テープなどの外部保管媒体にアーカイブしてあるものだと、再度データベースにロードしないと検索できないこともある。この場合は、保管庫から文書類を探し出すよりはるかに長い時間と手間が必要になる。もちろん業務担当者だけでは対応できないのも問題だ。
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