ペーパーレス化が叫ばれて数十年、劇的に紙が減ったと感じる人はわずかだ。進まないペーパーレス化の実態をアンケートから読み解く。
早川泰弘(Yasuhiro Hayakawa):矢野経済研究所 ICT・金融ユニット 上級研究員
矢野経済研究所に入社後、食品や化粧品、文具、事務用品、オフィスサービスなどの生活、サービス分野を担当。その後ICT部門に転じ、複合機やプリンタ、デジタル印刷機などをはじめとしたオフィス機器関連、インフラIT、センサーネットワーク、M2M、次世代型モニタリングなどのIoT関連領域での市場調査、分析業務に従事する。また、他にも市場進出支援、販路開拓支援などのコンサルティング業務も手掛けている。
オフィスのペーパーレス化は、PCの普及や電子ファイリング、文書管理ツールの活用が進んだ1990年前後からずっと語られてきた。しかし、現実にオフィス内の文書、ドキュメント類が劇的に減ったと肌身に感じている人は今でも少ないだろう。その理由はなぜなのか。ペーパーレス化にはどのような課題があるのかについて今回は考えてみる。
矢野経済では、2016年4〜5月に企業内個人に対する1000人規模のWebアンケート「オフィスでの文書・ドキュメント類、デジタル情報などの管理および業務フローに関するアンケート」および直接面談取材を併用したマーケット調査を実施し、文書、ドキュメント管理の現状やオフィスのIT化、ペーパーレス化の進展などについての分析を行った。
本調査では、個人事業者のような中小・零細企業から従業員数1万人超の大企業までを5階層に分け、それぞれの階層でWebアンケート約200人、直接面談取材を行った。その結果から、オフィスのペーパーレス化はオフィスでのIT化の進展ほどには浸透していない実態が見えてきた。
結論からいうと、完全なペーパーレス化を実現した企業はどの階層でもほぼゼロであり、クラウドなどを活用した情報保管やドキュメント管理システムの利活用などはしていても、情報(原データなど)を紙のまま手元で保管しておきたいというニーズが根強く存在していることが分かった。以下では、この調査結果をベースにペーパーレス化を阻んでいる要因について考えてみる。
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