通信やデバイス費用がかさむなど、活用に多くの課題があるIoT。打開策として注目を集める無線通信技術「LPWA」(Low Power Wide Area)のSIGFOX活用事例を紹介する。
「これからはデータの時代だ」「IoTを活用していかなければならない」とあおられ、焦燥感を感じている企業は多いのではないだろうか。2020年には、300億のデバイスがインターネットに接続されるという予測も出ており(図1)、自動販売機や洋服など、あらゆるものからデータを吸い上げ活用する時代が到来しようとしている。しかし、いざIoTをビジネスに活用しようと考えると、通信費やデバイス代の費用がかさむなど、多くの課題が立ちはだかる。
打開策の1つとなるのが、無線通信技術「LPWA」(Low Power Wide Area)だ。LPWAとは、BluetoothやWi-Fiと比べ、低消費電力でありながら広いエリアでの通信をかなえる技術であり、IoTの普及に伴って注目株となりつつある。日本では、2017年2月に京セラコミュニケーションシステム(以下、KCCS)がフランスのSIGFOXと提携し、LPWAのネットワーク規格である「SIGFOX」のサービス提供を開始した。
「SIGFOXの可能性に注目して事業をはじめている」と話すのは、KCCSのLPWAソリューション事業部 大植裕之氏。既に幾つかの導入事例もあり、宅配ピザチェーンの事業などにも貢献し始めている。SIGFOXは、IoT時代が抱えるどのような課題を解決できるのか、具体的にどのような事業に活用できるのか。2017年6月21日に開催された「Advantech IoT47 in 横浜」で同氏が話した内容を紹介したい。
「日本は、IoTマーケットにおいて世界で3番目の市場を持つにもかかわらず、IoTデバイスはまだ特定の産業でしか活用されていない」大植氏は話す。その原因として、IoTデバイスにまつわる3つの課題を説明した。
1つ目の課題はコストだ。IoT機器を設置すれば、通信コストに加えて、デバイスにかかるコスト、電力コストなどの費用がかさむ。例えばデバイスでは、計測器ごとのネットワークモジュール、デバイスからクラウドにデータを送るゲートウェイ装置などに投資が必要だ。通信機能を持てば、消費電力が増え、電力コストもかさむ。加えて、新たに商用電源が必要になるケースもある。
2つ目はIoTの環境をすぐに整えられないという簡便性の問題だ。例えば、BluetoothやWi-Fiを使用する場合にはデバイスからの情報を収集するため、全てのIoTデバイスとゲートウェイ装置の間でペアリングを設定する必要がある。データ収集用のネットワークサーバの設計開発にも工数がかかる。
そして3つ目は海外展開の際にIoTデバイスをそのまま活用することが難しいという問題だ。海外にデバイスを持っていく際、データ通信SIMを使ったIoTデバイスの場合では、通信会社との契約次第で管理コストが跳ね上がることが、IoTデバイスの普及が進まない理由だと大植氏は説明する。
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