SIGFOXは具体的にどのような事業に活用できるのか。前述したようにSIGFOXの特徴は、低速で広域に電波を飛ばすことである。1日の通信回数は最大140回まで、1回に伝送可能な情報量は12バイトと小規模だ。
大植氏は「数分置きにデータをクラウドに上げる必要があるようなケースではなく、低頻度でデータを計測するような場合にSIGFOXのネットワークは有効だ」と話した上で、国内でのユースケースを紹介した。
例えばガスメーターの自動検針に活用することができる。LPガスにおける実証プロジェクトでは、SIGFOXの通信サービスとNECの開発した無線端末によってガスの残量を自動で検針し、配送効率を上げた(図4)。
従来、ガス使用量の目安となるガスメータの検針の機会は、事業者が売り上げを計上するために行う、月に1度の検針時と、LPガス容器を配送する時のみであった。LPガス交換の際には、最も早く消費した家に交換するタイミングで周辺のガスも一律で交換する仕組みをとっていたため、配送を余分に行う手間があった。
そこで、ミツウロコクリエイティブソリューションズ、NEC、KCCSが協業し、配送業務を効率化するソリューションを共同開発した。
どのようなソリューションなのか。まず、ガスメーターにNECが開発した「LPWA対応IoT無線化ユニット」を設置し、SIGFOXの通信サービスを利用して、メーターの使用量を遠隔で取得し、LPガス消費者の使用量を日次で把握した。このデータは、NECのIoT基盤「NEC the WISE IoT Platform」に送り、NECのAI技術である「NEC the WISE」を活用して、LPガス容器の最適な配送日と効率的な配送ルートを分析する。「これによって配送を効率化できた」と大植氏は語る。
遠隔からのデータ収集をかなえるSIGFOXネットワークは、ガスだけでなく、水道の自動検針にも活用することが可能だ。とりわけ、離島や山岳部といった検針の難しい場所において、有効であると大植氏は話す。「離島では、わざわざ船をチャーターして、人が検針に赴いていた。これではコストの負担が大きい」(大植氏)
現在は、水道の検針業務を行う第一環境、水道の検針メーターを使うアズビル金門、KDDI、KCCSの4社がタッグを組み、全国でプロジェクトを進めている(図5)。「水道の自動検針は、KCCSが本命で取り組んでいる事業だ」と大植氏は話した。
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