IoTにまつわるコストや簡便性の問題を解決するものとして打ち出されているのがLPWAのネットワーク規格の1つであるSIGFOXだ。開発を手掛けたフランスの通信事業者SIGFOXでは、既にフランス国内でデータを蓄積するためのクラウド環境と合わせてSIGFOXネットワークサービスを提供している。提携は1国1事業者に限定しており、KCCSは日本唯一のSIGFOXの提携企業になっている。
KCCSの大植氏は、SIGFOXネットワークの特徴を、非常に低速ではあるが、広域、長距離伝送に最適な通信技術だと説明する。
図2は、代表的な通信方法を俯瞰した図である。横軸はデータレートを指し、縦軸は伝送距離、すなわちデバイスから基地局まで電波がどのくらいの距離を飛ぶのか示している。SIGFOXを含むLPWAが占めるのは、低速かつ伝送距離の長いエリアだ。SIGFOXの場合はデータレートを落とし、1回の通信量を12バイトと少なくすることによって伝送距離を伸ばす仕組みで、通信速度は100bpsと低速ではあるが、他のLPWAと比べて広域のエリアをカバーするのが特徴だという。
図3は、実際のSIGFOXの伝送距離を評価する実証プロジェクトを行った結果である。永田町に基地局を設置し、新木場、葛西臨海公園、新浦安で電波を計測したところ、およそ16キロの地点に相当する新浦安においても電波を確認することができた。「開けた場所だけでなく、障害物が多いビル間においても、電波を飛ばすことが可能」と大植氏は話す。
大植氏は、デバイスや電力にかかるコストが低く、簡便性があることの2点をSIGFOXのメリットとして説明した。
SIGFOXが低コストであるという点について、KCCSでは通信費を1回線(デバイス)当たり、年額100円(税別)から用意すると説明する。3G回線では、通信料にもよるが1デバイスの月額がおよそ800円から数千円ほどに上ることを考えれば、低コストで済むといえるだろう。
デバイスコストへの考慮もある。ゲートウェイ装置は事業者が設置するため、ユーザーはSIGFOXのモジュールを装備したIoTデバイスを用意するだけでよい。このIoTデバイスについても、欧州では既に2〜3ドルのものが開発されている。乾電池で数年稼働するため、電力コストを削減できる。
また、IoTデバイスをすぐに活用できるという簡便性もポイントの1つだと大植氏は話す。SIGFOXのネットワークサービスでは、データを保管するクラウド環境を提供するため、サーバ環境の構築やペアリング設定などが必要ない。ユーザーが、IoTデバイスからクラウドに送信されたデータを取得して活用する環境を事業者側で用意する。
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