最近無線LANの世界では、現場に郵送したAPをネットワークに接続するだけで通信が確立できる「ゼロタッチコンフィグ」「ゼロタッチプロビジョニング」といったキーワードがよく登場する。管理側で事前に設定することなく、すぐに利用できるようになる仕組みのことだ。
実はこの「事前設定不要」の機能も、実際には最初に必要な環境を設定した上で現地に送り込む必要があるケースも多く、厳密な意味でのゼロタッチではないことも少なくない。もちろん、工場出荷状態を直接現場に送り込み、ネットワークにさすことでインターネットに抜ける道を探し出し、何とかクラウドサービスに自動接続できるよう工夫されたものもある。
この製品の場合、APがイーサネットにつながっていなくても、つながっているAPが1台でもあれば、そのAPをブリッジして何とかインターネットに抜けようとする。ゼロタッチと聞けば響きがいいが、本当に一切触らずに設定できるゼロタッチなのか、あらためて確認してみることをお勧めする。数十台ばらまくだけでも、初期の作業負荷が大きく変わることだろう。
無線LANは、企業においてはエッジにおけるネットワークアクセスの手段だが、センタースイッチからAPに至るネットワーク全体をエンドツーエンドで見ていく場面は当然出てくるだろう。役割や振る舞い、場所などコンテキストに応じてリスクを判断し、ネットワーク全体のポリシーを自動適用させるといったことを行おうとすれば、ワイヤレスだけでなく、スイッチやルーター、UTMも含めて設定情報が円滑に反映できるような環境が必要だ。
たとえクラウドWi-Fiであっても、このエンドツーエンドでネットワークがコントロールできるかどうかについてはしっかり見ておきたい。複数のソリューションが必要でも、APIで柔軟に連携できるかどうかも含めて確認しておこう。
クラウドWi-Fiを提供するベンダーでは、独自の仕組みを実装するべく他社との協業を行っている。このあたりは、各ベンダーの戦略とも密接にかかわるため、しっかりと確認しておきたい。
例えば、マイクロソフトと提携しているベンダーでは、Skype for Businessで暗号化されたパケットが判断できるようになっており、音声や映像といったアプリケーションの種類に基づいたQoSが可能だ。
また、アップルと提携しているところでは、ネットワーク機器からのQoSだけでなく、iPhoneをはじめとしたデバイス側からもQoSが可能となり、双方向で通信品質を高めることができる。アプリケーションレイヤーでの差別化は、通信品質に大きく影響する部分であり、しっかりチェックしておきたい。
なおクラウド化が進むなかで、さまざまなサービスを連携させるためのAPIが発達し、APIエコノミーな環境を自社のサービスに取り込む企業は少なくない。当然クラウドWi-Fiでも外部連携のためのAPIへ柔軟に対応できるかどうかが求められる。
特にユーザーアクセスの手段となる無線LANについては、高度なセキュリティ機能との連携が積極的に行われており、そのためにはREST APIをはじめとしたAPIに対応していることが必要だ。連携先のベンダーと相互検証を実施していることもあるため、どこまで深く検証されているかどうかといった視点でも確認しておきたい。
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