メディア

PCの持ち出し禁止で私用PCの残業? 働き方改革の実態イベントレポートアーカイブ(2/3 ページ)

» 2018年01月24日 10時00分 公開
[溝田萌里キーマンズネット]

社外からのスケジュール確認可能は3割 働き方改革におけるICT活用は不十分

 働き方改革ICT市場は順調な成長が予測できる一方、ユーザー企業では働き方改革におけるICT活用への取り組みが十分ではないという。市川氏は、17年6月に、働き方改革を実施している企業および実施検討中の企業を対象に行ったアンケート調査についても言及した。

 調査によれば、企業が働き方改革を実施する目的として多いのは、残業時間の短縮と労働生産性の向上であった。しかし、企業の具体的な取り組みを見ると「残業時間の短縮」が実施率50%と最も多く、それに続いて「仕事量および仕事進捗の見える化」や、労務環境の改善に関する項目などが上位を占める。「テレワークの導入」などICTツール活用によって働き方に寄与する施策は実施率が10%程度という結果になった。

企業における働き方改革実施内容 図3 企業における働き方改革実施内容

 「残業時間の短縮に関する取り組みと比べ、働き方改革の一環としてICTツールを導入することに企業のリソースが向いておらず、ICT活用による抜本的な生産性向上や柔軟な働き方につながる施策ができていない」と市川氏は指摘。実際に、労働生産性向上や柔軟な働き方に必須となる汎用業務ソフトウェアの社外利用がほとんどできていないといったデータも挙げた。

 図4にあるそのデータによれば、「電子メール」の利用は60%を超えるものの、「スケジュール」や「会議システム」といったソフトウェアは30%程度にとどまる。

社外から使用できる、またはできるようにするソフトウェアとアプリケーション 図4 社外から使用できる、またはできるようにするソフトウェアとアプリケーション

 「企業は、頭では重要性を理解していたとしても、ICTツールの活用による具体的な改革のステップに至っていない」と市川氏は話し、その理由としてICTツール導入は資金的なハードルが高いこと、また、多くの企業では残業時間の削減が最も緊急性の高いテーマであり、そちらに労力が割かれやすいことなどを挙げた。

 特に、残業時間の削減と比べて、生産性向上というテーマは効果を数値化しにくく、施策に着手できない企業も多いと市川氏は述べる。残業時間の削減をクリアしたところで、企業がICT活用による生産性の向上へと労力を移行するか疑問が残るという。

 同氏は「今後、ICTベンダーはICTの活用による働き方改革のユースケースの発表を継続し、また成果を数値で提示することによってユーザー企業のICT導入のきっかけを提供する必要がある」と提言した。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

会員登録(無料)

製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。