ゲストとして登壇した共同開発パートナーであるトロント大学 電気・コンピュータ工学部教授のアリ・シェイコレレスラミ(Ali Sheikholeslami)氏は「富士通とトロント大学は、20年前に私がインターンとして参加した富士通研究所で共同論文を発表した時からの長年のパートナー。2018年3月にはトロント大学内に新たな研究拠点、『富士通Co-creationリサーチラボラトリー』を設立しました。デジタルアニーラの活用は、医療、神経科学、経済学、ネットワーク、環境など多くの分野に拡大していくでしょう」と開発の展望を示した。
商用化に際しては1Qbit(1QB Infomation Technologies)と提携した。1Qbitは量子コンピューティング向けの開発ソフトウェアの提供元として知られており、従来型のコンピューティング環境と量子コンピュータの両方に対応できるイジングモデル実装フレームワークを提供する。これらを使ったソフトウェア開発に関するコンサルティングも手掛けている。
吉澤氏は提携の背景を「デジタルアニーラという従来にないハードウェアの価値を提供するには、ハードウェアだけでなく、ソフトウェアと知見が必要でした。そこで量子アニーリングのソフトウェアトップベンダーである1QBitとパートナーシップを結びました」と説明。基調講演には、1QbitのCEO、アンドリュー・フルスマン(Andrew Fursman)氏もゲストとして登壇した。
「量子コンピュータを使うソフトウェアを開発するために、より良いハードウェア環境を求めていました。富士通のデジタルアニーラは私たちが開発しているソフトウェアの力を発揮する最高の環境です。デジタルアニーラと1Qbitのソフトウェアで、未来を1つずつ実現させていきます」(フルスマン氏)
最後に田中氏は「富士通はつながるサービスに向けた研究開発力を高め、お客さまに価値をお届けできる専門力を磨き、グローバルに活躍している有力な企業、大学などの組織とエコシステムを構築していきます」と宣言、新分野の研究開発では外部の専門家らを積極的に協業や提携を進めていく考えを示した。
D-Waveが量子アニーリングという手法で量子コンピュータ開発の方向性に一石を投じたように、富士通が発表したデジタルアニーラもまた、量子コンピュータ開発の目的から本質を見つめ直したところから生まれたものといえる。いま、目の前にある問題を解決するために技術を生かす、ある種のデザイン思考が生かされているといえるだろう。
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