緩やかな右肩下がりの成熟市場であるネットワーク機器市場が2017年には急伸した。その理由を探りながらネットワーク動向に迫る。
草野賢一(Kenichi Kusano):IDC Japan コミュニケーションズ グループマネージャー
国内ルーター、イーサネットスイッチ、無線LAN機器、ADC(アプリケーションデリバリーコントローラー)、SDN、NFVなど国内ネットワーク機器市場の調査を担当。ベンダー調査に加え、ユーザー調査やチャネル調査にも携わり、それらの調査結果をベースに、国内ネットワーク機器市場の動向を検証、市場動向の分析および予測を提供する他、さまざまなカスタム調査を実施している。IDC Japan入社前は、エンジニアとしてユーザー企業のネットワークの設計、構築を担当。商品企画にも携わる。
企業向けのルーターやイーサネットスイッチをはじめとしたネットワーク機器市場は、IDCではある程度成熟した市場と位置付けており、無線LANなど一部のカテゴリーを除いて今後大きな成長率は期待できないものと考えてきたが、2017年実績では全ての領域において高い成長率を達成することになった。その背景について探りながら、今後のネットワーク機器の予測も踏まえた市場動向について詳しく見ていきたい。
IDC Japanでは、企業向けルーターやイーサネットスイッチ、無線LAN製品をはじめとした国内企業向けネットワーク機器市場に関するレポートを作成、2017年実績や2022年までの予測に関する調査結果を2018年7月4日に発表した。まずは、この調査結果について紹介しながら、今のネットワーク機器における市場動向について見ていこう。
今回調査対象となっている国内企業向けネットワーク機器は、主に企業向けのイーサネットスイッチやルーター、無線アクセスポイント(以下、AP)、無線コントローラーであり、いわゆる業務システムのフロントに設置してトラフィックの負荷分散などに利用されるADCやセキュリティの要となるFWなどに関しては調査対象には含めていない。
そのことを前提に、ネットワーク機器市場の全体を見ていくと、2017年実績では国内企業向けネットワーク機器市場は、前年比8.3%増というプラス成長を達成、支出額ベースでの市場規模は2223億4600万円となった。これまで緩やかに右肩下がりの成熟市場とIDCでは位置付けてきたネットワーク機器市場だが、2017年はこれまでの傾向とは違う動きとなったわけだ。実は、2018年以降の予測では、緩やかな減少傾向と予測しており、2017年のみ特異な傾向であることが分かる。
実際に調査の中では、当初予想していなかった企業向けイーサネットスイッチ市場が例外的に成長する「特異年」であったことが市場を大きく躍進させた結果の1つとなった。イーサネットスイッチについては、2017年は新たに更新するタイミングを迎えた企業が多かったようだ。しかも、通常はほとんどの故障しないイーサネットスイッチだけに、更新のタイミングを迎えてもそのまま使い続ける企業も実は少なくない。それでも、2017年は企業においても経済的に良好な状況にあったことで、スペックを上げたモデルに切り替えた企業が多かったと考えられる。
また、企業向けルーター市場も、企業の拠点に設置されることが多いローエンドルーターとSOHOルーターは出荷台数を大きく伸ばす結果となった。その背景にあるのは、「クラウド利用の拡大」と「多機能かつセキュアなWANサービスに対するニーズの増加」によるVPNサービス市場の成長があったと分析している。
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