私たちの業務の流れは必ずしもきめ細かにマニュアル化されているわけではない。また、マニュアルがあったとしても、手順通りに現場が動いているとは限らない。
実際の業務を反映したイベントログから得られたフローチャート(=プロセスモデル)は、見えていなかったプロセスを「発見」するものであることから、「プロセス発見(Discovery)」と呼ばれる。
見えていなかった業務プロセスが可視化されると「この業務は何のためにやっているのか」と感じる無駄や、処理案件が滞留するボトルネックが見えてくる。プロセスマイニングは、業務プロセスに潜んでいた問題を浮かび上がらせることができるのである。
業務マニュアルは作業標準化やコンプライアンス(法令順守)を目的として整備されることが多い。準拠すべきマニュアルがあっても実運用がその通りに実行されているとは限らない。
この問題を明らかにするために、プロセスマイニングではイベントデータから得られた現状プロセス(as is process)とマニュアルなどに記載されている標準(理想)プロセス(to be process)の比較分析を行う。この標準プロセスと現状プロセスの比較分析を行うことを「適合性検査(Conformance Checking)」と呼ぶ。
なお、分析の結果、標準プロセスと異なる業務プロセス(=「逸脱プロセス」あるいは「法令違反プロセス」)を発見した場合、基本的には「修正されるべきプロセス」として扱い、担当者への指導やトレーニング、継続的な監視を行うべきだろう。
さて、標準プロセスが存在していようがいまいが、多くの場合、現実の業務プロセスはワンパターンではなく、さまざまなバリエーションが存在する。結果として業務は進んでいるのだが、状況や担当者によって微妙に手順が異なる。
これらのバリエーションのリードタイムや効率性、すなわちパフォーマンスを比較すると、リードタイムが短かったり、効率性が高かったりするものが存在する。
この中で最も納期が短くなる、あるいは効率がよく、コストが低くなる業務プロセスは企業にとって歓迎すべきプロセス(=「ハッピープロセス」)だ。
そこでプロセスマイニングで見つかった「ハッピープロセス」は、新たな理想モデルとして抽出し、BPMに組み込み、業務プロセスの刷新を図る。こうして、業務プロセスを継続的に改善していくのが「プロセス強化(Enhancement)」である。もちろん、業務プロセスの修正に併せて、既存のシステムの改修や設定変更も行われることになる。
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