部下とはきちんと対話できている――そう思っているのは上司だけかもしれません。コミュニケーションのない職場は、ときに部下の病気を引き起こすこともあります。まずはチェックリストで診断してみましょう。
あなたの考え、行動は以下の内容に当てはまりますか?
もし上記に該当する項目が多い場合、あなたは部下と良好なコミュニケーションが取れていないかもしれません。「できている」と思っているのはあなただけで、部下はそう感じていない場合もあります。
前回は、残業削減に向けた取り組みを通して「健康いきいき職場」を作るという話をしました。健康いきいき職場とは“社員が活力にみなぎっている”、“心身共に健康である”ことを指します(※1)。今回は、そうした職場を作り上げるために、管理者が大切にすべき「部下とのコミュニケーション」について考えたいと思います。
職場のコミュニケーションというテーマについては、「いまさら」と感じられるかもしれません。しかし、何かトラブルが起きたときに、要因を分析すると「コミュニケーション不足」が関係していたということは珍しくありません。特に、最近はメールやチャット、LINEなど多くの便利なツールが登場し、多くの場面で「会話」がなくても業務が成り立ちますが、弊害は思わぬところに現れます。これを機に、職場のコミュニケーションについて見つめなおしてみましょう。
※1 厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究、『平成23年度総括・分担報告書』「労働者のメンタルヘルス不調の第一次予防の浸透手法に関する調査研究」、川上憲人、平成23年、URL:https://mental.m.u-tokyo.ac.jp/jstress/NBJSQ/労働安全衛生総合研究一次予防班H23総括分担研究報告書.pdf(厚生労働科学研究成果データベース閲覧システム)
コミュニケーションについて現場の声を聞くと、上司と部下では異なる返事が返ってきます。上司は「私は部下と良くコミュニケーションを取っています」と話します。その一方、部下は「上司とのコミュニケーションが取れていない」というのです。このギャップは何でしょうか。
伝えているつもり、指示しているつもり、支援しているつもり――でも相手に届いていないというケースがよくあります。これが上司と部下のギャップの元凶です。「え〜、もっと手厚くしないといけないなんて、そんな時間ないよ!?」と負担に感じる方もいるでしょう。ただコミュニケーションの量を増やすということではなく、その方法に気を付ければよいのです。
まずは、部下のスキルや経験に応じた対応が必要です。「Aさんにはこの程度で伝わった」と思っても、Aさんより経験が少ない部下や、それを不得意とする部下に対しては、さらに丁寧に、その人が理解できる言い方で伝える必要があります。部下に本当に伝わったかどうかを確かめるために、相手の口で再度説明してもらったり、進捗を頻繁に確認したりする必要があるでしょう。自分がこれだけやれば十分だろうと思うぐらいやって、部下から見て「ちょうど」の場合も多いのです。
逆の立場に立った場合、自分の上長に対してコミュニケーションを取る際も、何をしてもらいたいのかを明確に伝えることが必要です。話の内容からくみ取ってほしいという曖昧な伝え方では誤解を招いたり、求めている結果は得られなかったりするでしょう。
さらに、部下の話を聞く姿勢も重要です。自分の知りたいことだけを質問したり、相手の話を聞いたりしているだけではコミュニケーションを取ったことにはなりません。対話した内容について上司が反応し、行動を起こしてはじめて部下は自分の話した内容が伝わったと感じるでしょう。
実際に、良好なコミュニケーションがある組織とない組織ではどのくらいの違いが生まれるのか、想定される影響を見てみましょう。
職場におけるコミュニケーションの大きな役割の一つは、情報共有です。それが、きちんとできていれば、課題の早期発見と早期解決ができ、ロスコストの削減と生産性の向上につながります。「もっと早くいってよ」「どうして相談してくれなかったの」「そんなつもりではなかった」という仕事を進める上でのちょっとしたツマヅキも減るでしょう。
また、会話は部下の自己成長にもつながります。会話を通じて自己認識を深めることで、考える力、表現する力、交渉する力が育成され、その部下の職場における存在価値も高まります。
良好なコミュニケーションが取れていないと、上記と逆の現象が起こり得ます。問題発見が遅れるだけではなく、部下が「誰も見ていないし、どうせ何も言われないし」と考えてトラブルの隠蔽(いんぺい)や不正行為が起こる恐れもあります。組織全体の士気が低下しかねません。
また、部下のタイプによってはコミュニケーションがないことで孤立を感じる場合があります。周りがそれを気にせず放置していると、その従業員は徐々にストレスをため病気になってしまうかもしれません。
昨今、職場でのコミュニケーションはメールやチャット、LINEなど便利なツールが利用され、業務でなくてはならない存在になっています。しかしそれだけに頼るのではなく、できるだけ顔を見て会話をする機会を持ちましょう。文面では分からない感情だけでなく、テキストよりもはるかに多い情報量を伝えられるため、誤解も生まれにくいのです。
次回は、コミュニケーションを通して部下育成をする際に、“パワハラにならない指導”のポイントをお話ししたいと思います。「パワハラを恐れて部下をしかれない」といった悩みを抱える方は必見です。
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