働き方改革の波が広がり、ベストプラクティスを耳にする機会も増えたが、取り組み企業からは不満の声も上がる。働き方改革の最新状況と、企業が抱える課題を聞いた。
2019年に注目すべきITトレンドは何だろうか。キーマンズネット編集部では「セキュリティ対策」「SaaS」「RPA」「改元対策」「EoS対策」「働き方改革」「AI」の7つのトピックスを抽出し、「IT活用状況調査」(有効回答数1541件、実施期間:2018年11月26日〜12月21日)を行った。企業における2019年のIT投資意向と併せて調査結果を全8回でお届けする。
第7回のテーマは「働き方改革」だ。
調査サマリー
安倍内閣の働き方改革が3年目に突入した今、働き方改革の文脈で多くのサービスが登場し、企業によるベストプラクティスを耳にする機会も増えた。2019年も引き続き重要なキーワードとなることは間違いない。
本稿では約1年前に実施した「ITへの投資状況に関するアンケート調査」(2017年12月11日〜19日、有効回答人数1549人)の調査結果とも比較しながら、企業の働き方改革の実態を紹介する。
まずは、働き方改革の取り組み状況について聞いた。調査結果によれば、働き方改革に「既に取り組んでいる」と回答した企業は51.9%を占めた(図1)。2017年に実施したアンケートでは、取り組む企業が42.6%だったのに対し、9.3ポイントの増加がみられる。また、調査や準備を進めているか否かにかかわらず、31.9%は、働き方改革に取り組む予定だと回答している。
従業員規模別に見ると、大企業ほど働き方改革に取り組む傾向が見えた。5001人以上の従業員を抱える企業は実に84.4%の企業が、働き方改革に従事していることが分かり、1年前の73.2%から11.2ポイント増加した。大企業を筆頭に、働き方改革の波は確実に広がっている(図1)。
一方、少数派ではあるが、「働き方改革に取り組む予定がない」(16.2%)という回答も見られた。世間で改革が叫ばれる中なぜ対策を講じないのか、その理由を聞いたところ1位に「必要性を感じない」、2位に「経営層などトップの理解がない」、3位に「何をしたらよいのか分からない」、4位に「人材不足で手が回らない」という回答が続いた。
さらに、フリーコメントの中には、「顧客の企業に常駐する業務で、顧客の都合に左右されるため」「他部署との不公平感が払拭(ふっしょく)できないため、改革を進めにくい」「サービス業のため、改革が難しい」など改革を進めたくとも難しいという意見があった。ちなみに、少数派ではあるが働き方改革が掲げる目標は達成しているため、取り組みを行う必要がないといったプラスの声も聞かれた。
ますます関心が高まる働き方改革だが、企業は何を目的に改革に取り組むのか、「既に取り組んでいる」「取り組む予定で調査している」企業を対象に聞いた。最も多く票を集めたのは、「生産性を向上するため」で32.0%。2位に「従業員の働き方の幅を広げるため」(27.4%)、3位に「労働時間を削減するため」(21.7%)が続いた。
1年前の調査結果と比較すると、上位3つの内容は変わっていないが、順位には変動があり、2017年は3位であった「従業員の働き方の幅を広げるため」という回答が2位に浮上している。企業の関心が、残業や長時間労働の是正から、柔軟な働き方の実現に少しずつシフトしていると考察できる結果だ。
一方で、企業の実際の取り組み内容を見ると、2017年と同様、「残業時間の削減」(77.1%)が最も多く、次に「有給休暇の取得推進」(64.8%)が続き、実際には残業や長時間労働の是正に関する施策に票が集まった。ちなみに、3位には「育児休暇や介護休暇制度の整備」(45.1%)、4位には「フレックスタイム制度や時短勤務制度などの導入」(44.6%)、5位には「テレワークの推進」(42.5%)が挙がり、上位5つ全ての取り組み順位は1年前の調査と変わらなかった(図2)。
1つ見るべきものがあるとすれば、柔軟な働き方の取り組みとして筆頭に上がる「フレックスタイム制度や時短勤務制度などの導入」「テレワーク」や「モバイルワーク」を合わせた数字が、2017年の110.9%から117.2%に増加したことだ。企業における働き方改革の目的や取り組みはこれから少しずつ変化していくのではないか、と考察できる結果だった(図2)。
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