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勤怠管理システムの利用状況(2020年)/前編

テレワークにおいて勤怠管理はどう変化したのだろうか。在宅勤務でも稼働時間を記録可能なシステムの導入率が増加しているものの、思わぬ不満の声が寄せられた。

» 2020年08月06日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 キーマンズネットは2020年7月10日〜7月29日にわたり「テレワークと勤怠管理システムの利用状況」(全回答者数103人)に関する調査を実施した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対策でテレワークに取り組む企業が増えてきている昨今、企業における勤怠管理の在り方に変化はあったのか。本稿では、勤怠管理システムの「導入状況」「満足度」などを2019年に実施した同様の調査と比較した形で分析する。

“コロナの影響”で勤怠管理の方法に若干の変化か?

 はじめに、勤務先でのテレワークの実施有無を聞いたところ「実施している(従業員の8割以上)」が41.0%、「一部の部門で実施している」が50.0%と回答者全体の91.0%がテレワークを実施していることが分かった(図1)。関連して勤怠管理システムの導入状況を尋ねたところ、80.6%が導入済みと回答。2019年12月の同様の調査と比較しても大きな変化は見られず、大多数の企業でテレワーク下においても引き続き勤怠管理システムが利用されている現状が見て取れた。

図1 テレワーク導入率

 次に勤怠管理システムで採用している打刻方法を尋ねたところ「Webシステムへ時間を直接入力」が60.2%と最も多く、次いで「PCへのログインにより自動で打刻」が29.5%、「IDカード認証」が22.7%、「スマートデバイスで打刻」が11.4%となった(図2)。

図2 勤怠管理システムで採用している打刻方法

 前回の調査結果と比較すると「PCへのログインにより自動で打刻」が「IDカード認証」を抜き2位に順位を上げた。前回調査からの約半年間でテレワークが一気に進んだため、オフィスでIDカードをかざして勤怠をつけるといった利用シーンが少なくなったようだ。また「スマートデバイスで打刻」する割合も増加しており「Webシステムへの直接入力」など従来型の打刻方法から、より柔軟で効率的な打刻ができる環境整備も進んでいる。

「脱・Excel」が急増、4月施行の法令やテレワークへの対応

 続いて勤怠管理システムを導入済みまたは検討中の企業に、勤怠管理システムを導入した目的やきっかけを聞いたところ「タイムカードやExcelでの管理に限界を感じたため」42.0%、「働き方改革関連法などの法令対応のため」36.4%、「テレワーク下での従業員の勤務実態を正確に把握するため」14.8%などが上位に続いた(図3)。

図3 勤怠管理システムを導入した理由

 前回調査時は19.8%と4位にランクインしていた「タイムカードやExcelによる管理」からの脱却を理由に挙げる割合が約半年間で22.2ポイントと急増した。また働き方改革関連法などの“法令対応”を目的にした導入も全体の4割弱と変わらず上位に位置していた。

 2019年4月1日に施行された働き方改革関連法では「年間で5日間の年次有給休暇の取得義務」や「時間外労働の上限規制」などが企業に義務付けられ、企業規模によって施行日に一定の猶予期間が与えられていた。猶予期間の終了を迎えた2020年の4月には「時間外労働の上限規制」が中小企業に、「同一労働同一賃金」が大企業に施行された。こうした背景もあり企業はより正確に従業員の勤怠状況を把握しなければならず、加えてコロナ禍によるテレワークに半ば強制的に対応したことで、勤怠管理の在り方を早急に見直すことになった。

PC監視で勤怠管理をしてみたら……部下が24時間働いていた?

 勤怠管理システムに対する満足度を聞いたところ「やや満足している」を含め全体の71.1%が“満足”と回答。一方、残りの約3割は“不満”を抱えており、その理由をフリーコメントで聞いたところ、良かれと思って導入したはずの勤怠管理システムが思わぬ弊害を生んでいることが明らかとなった。

 実際に挙げられた声について、3つの観点に分けて紹介したい。

 1つ目は「テレワークに対する自由度が少ない」「時差出勤、フレックスにうまく対応できていない」といったコロナ禍における多様な働き方に既存の勤怠管理システムが十分対応できていないことへの不満で、タイムリーな話題ということもあってか多数の声が寄せられた。

 2つ目は勤怠管理システムの仕様と運用方法が実態と則さないといった声だ。例えば、「PCのログイン状況でカウントされるが、そもそも複数のPCを利用している場合はカウントが複雑になる。さらに、そのまま電源を落とさずにスリープして翌日も使い続けると一日中出勤していることになる」「PCに勤務時間を直接入力する方法を採用しているが、参考としてPCの起動/停止時刻も表示している。上司はそれを見て判断しているが、土日祝日のメール確認だけでも当日の起動と停止として扱われる」「朝から仕事をして夕方に一度PCを停止、夜に再度ログインすると夜に稼働した時間しか記録されない」など、システムが柔軟性に欠けていることへの不満が多く集まった。

 3つ目は「人事システムとの連携が完全にできていない」「IDカードを忘れると正しく対応できない」「他のシステムと連動しておらず、複数のシステムに行動情報などを入れなければならないから」など、システム連携の観点で非効率な作業が発生しているといった意見だ。勤怠情報の再入力や修正など1つ1つはちょっとした操作かもしれないが、無駄が積み重なると従業員にとってはストレスとなってしまう。COVID-19の影響や法令対応による働き方の多様化に対応せざるを得なくなった昨今において、こうした不満の声も参考にしながら従業員の生産性を向上させるためのシステム活用が求められている。

 後編では、「残業時間」にフォーカスして調査結果を紹介したい。

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