ガートナーは国内企業のITソーシングに関する調査結果を発表した。同調査では、企業のIT戦略遂行における開発、運用保守などのアウトソーシングの位置付けやデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みにおけるベンダー活用の意向を尋ねた。
ガートナーは2020年8月17日、国内企業のITソーシングに関する調査結果を発表した。同調査は2020年4月に国内企業を対象に同社が実施したものだ。
2020年4月、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止のため緊急事態宣言が発令されて以降、経済活動も抑制され、多くの企業でアウトソーシングの在り方も見直された。ガートナーの調査によると、委託中の開発や運用保守への影響を尋ねたところ、開発プロジェクトでは「一部工程における工期遅延」や「開発中システムの納期遅延」があったと回答した企業がいずれも40%を超えたという。
同社によると、企業によってはリモートでの開発でスケジュールの遅延を抑える動きも進みつつあるという。同調査で企業の対策を尋ねた結果としては、内部/外部ともに、「一部作業のリモートへの切り替え、自動化、作業の縮退などの代替策の導入」を進めている企業は54.0%となった。「既存の外部委託取引における作業体制/作業環境の棚卸し」など、リモート化や自動化が可能な作業を洗い出そうと取り組む企業も40%近くに達している。
一方、「委託先ITベンダー側の事業継続計画(BCP) ガイドラインの確認」「委託先ITベンダーのリスク・マネジメント規範の策定」「委託取引契約書中の『不可抗力』『免責事項』のパンデミック適用可能性の検討」に関しては、本調査の実施時点である2020年4月段階では、検討中や未対応の回答が多く見られたという。
同社のアナリストでプリンシパルの中尾晃政氏は次のように話す。「国内では、依然としてCOVID-19の再拡大の懸念が払拭(ふっしょく)されていません。企業は、COVID-19への対策のみならず、今後は中長期的な視点で、BCPやリスクマネジメントなど、アウトソーシングの継続性や安定性を高める施策を打っているかどうか、ベンダーとの契約更新や選定で評価していくべきでしょう」。
同調査では、企業のIT戦略遂行における開発、運用保守などのアウトソーシングの位置付けやデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みにおけるベンダー活用の意向についても尋ねた。
その結果、IT戦略遂行に関する質問では「極めて重要である」「重要である」と回答した企業は89.3%となった。企業のアウトソーシングに対する姿勢は、2019年の調査と変わらずその重要性は高いままだという。
中尾氏は「コロナ禍で、作業の縮退や代替策の導入を迫られましたが、IT戦略遂行におけるアウトソーシングの重要性は変わっていません。とはいえ、今後の実施においては、アウトソーシング・コストの最適化といった観点も重要になるでしょう。実際、今回の調査で、アウトソーシング・コストの適否について調査した結果、『現在のアウトソーシング・コストは適正である』と回答した企業は27%にとどまりました。今後のベンダーとの契約更新や、ベンダー選定においては、上述したBCPやリスク・マネジメントの観点に加え、アウトソーシング・コストの最適化を図るための施策も必要になってくるでしょう」と話す。
DXの取り組みにおけるベンダー活用については、「積極的には活用していない」と答えた企業は13.0%にとどまり、約8割の回答企業が外部の人材を活用していることが明らかとなった。
外部の人材を積極的に活用する領域としては、「企画案の創出」や「実証実験プロジェクトの遂行/管理」「実証実験におけるプロトタイプ作成や検証作業」といった項目の選択率が高かったという。
「DXはIT部門にとって、未経験のテクノロジーを用いるだけでなく、自社のビジネス自体を変える新たな取り組みでもあります。このため、専門的な人材や関連するテクノロジーを提供できるITベンダーが必要とされることが少なくありません。外部の人材については、大手ITベンダーがパートナー候補として挙げられますが、全ての大手ITベンダーが幅広いデジタルテクノロジーに精通しているわけではない点に留意すべきです。特定のデジタルテクノロジーに長けた小規模ITベンダーと直接組む機会や、補佐的な専門スキルを求める場合はクラウドソーシングやスキルシェアリングを介したフリーランスの活用も、これまで以上に検討していくべきでしょう」(中尾氏)
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