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「ツール」から「コミュニティ」へ。提供価値を広げる「BizRobo!2.0」の世界 ──「BizRobo! LAND」講演レポート

» 2020年10月20日 10時00分 公開
[相馬大輔RPA BANK]

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RPA BANK

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)ツール「BizRobo!」を提供するRPAテクノロジーズ株式会社は2019年9月18日、RPAツールベンダーの単独主催イベントとしては国内最大規模となる「BizRobo! LAND 2019 TOKYO」を都内で開催。3,104人の参加者で盛況となった会場では、BizRobo!の最新製品および関連ソリューションの展示をはじめ、ユーザー企業による事例紹介、ツールの操作体験など多彩な催しが行われた。

本記事では、同イベントでRPA普及の現況と展望を示した同社社長の大角暢之氏による講演要旨をレポート。併せて、当日登壇した前IT担当大臣の平井卓也衆議院議員による発言要旨を紹介する。

■記事内目次

  • 1.「楽しい時代」を目指す5,772ユーザーの到達点
  • 2.先進ユーザーが確立した「現場増殖型」の開発とは
  • 3.統合された技術に人知を同期させる「BizRobo!2.0」
  • 4.平井卓也・前IT担当相「置き換えに終わらずデジタル独自の価値追求を」

「楽しい時代」を目指す5,772ユーザーの到達点

「自社でRPA未導入という参加者が、今回は4割を超えている。BizRobo! 以外のRPAツールを検討している方も多い。フラットな視点で見ていただけるのはありがたいことだ」

講演プログラムのトップを切って登壇した大角氏はまず、同イベントの来場登録者に行ったアンケートの結果を紹介。シビアな比較にさらされている状況をあえて明かし、独自のコンセプトを貫くBizRobo!への深い自信をのぞかせた。

大角氏は「今年5月末時点で1,560社がBizRobo!を導入し、複数ライセンス運用などを積算すると5,772ユーザーがロボットの実装と運用に携わっている」と発表。「RPA」という言葉がまだなかった2008年からソフトウエアロボットの普及に努めてきた沿革を振り返り「『業務の現場で人とロボットが協働する』というわれわれのコンセプトに対し、去年あたりからユーザーの共感が増えてきた」と手応えを語った。

仮想的な労働者(デジタルレイバー)として機能するロボットと共に働くことで、人間が「楽しい時代に進化する」ことをビジョンに掲げる大角氏は、著名な論客からも「まやかし」と批判を浴びてきたという。

しかし現在は、オリックスグループのシェアードサービス部門がデジタルレイバーの活用により「労働時間の短縮」「生産性向上を還元した一斉昇給」「リモートワークの導入」をそろって達成。実例をもとに「楽しい時代」の到来を説得的に語れるようになったという。

もっとも、そうした活用法をあまねく全国に行き渡らせるのは今後の課題だ。大角氏は「文房具やExcelと同じくらい、RPAを当たり前に使ってほしい」と強調。自社拠点の拡充やパートナー企業との連携強化に加え、地域や業種ごとにロボットの開発運用担当者が自律的なコミュニティを運営する「地産地消」的な取り組みも支援していくと述べた。

先進ユーザーが確立した「現場増殖型」の開発とは

RPAベンダーとしての立場から普及にかける思いを述べたのに続き、大角氏は「ユーザー企業にとってのRPA」に焦点を当てた。

同氏によると、2018年半ば以降、実地でのRPA活用結果を踏まえた賛否両面からの主張が数多く聞かれるようになったという。

「導入よりも定着段階に課題が集中しており、運用規模を拡大するユーザーと、そうでないユーザーの二極化が進んだ。この傾向は、今後いっそう顕著になると思っている」

入り乱れる意見に対する率直な見解をそう明かした大角氏は「RPAという概念を、経営においてどのような技術と位置づけ、いかに生かすかが少し見えにくい」と述べ、一般的な経営理論の延長上でRPA活用戦略を描くのが難しいことを認めた。

その一方で同氏は、社内研修で育成した800人がRPA開発に携わるLIXILグループを筆頭に、先進的なユーザー企業が「現場主導」での「高度な活用」というBizRobo!のコンセプトをいち早く体現していると紹介。

さらに、これらの企業が確立した「ロボットの品質担保の仕組みをIT部門が設け、アイデアを持つ現場が自由に開発する」手法を「現場増殖型」と名付け、強く採用を勧めた。

その理由として大角氏は、事業部門とIT部門の役割分担を特長とする現場増殖型が「製造」「サービス」「医療・福祉」など、特に人手不足が著しい業種で成果を上げている点を強調。多くのIT部門が基幹システムの更新を迫られる「2025年の崖」も念頭に「現場とIT部門の間によい循環を生み、経営課題の解決とDXの促進、さらにビジネスモデルの進化をもたらす構造を広めたい」と語った。

統合された技術に人知を同期させる「BizRobo!2.0」

1時間にわたった講演の最終盤、大角氏は今回の自社イベントを通じて表現したいという最新の世界観「BizRobo!2.0」を紹介。そのポイントを次のように説明した。

「これまでBizRobo!が果たしてきたIntergrate(統合)だけでなく、Synchronize(同期化)にチャレンジしたい」

同社が目指すのは、多様なシステムやアプリケーションをつなぎ合わせてきたBizRobo!が、単なる「ツール」の域を脱することだという。

「テクノロジーを統合するだけでなく、活用する人間の知見も同期したコミュニティを創出する」(大角氏)チャレンジがもし成功すれば、絶え間ない進化によってユーザーのビジネスモデルがどれほど姿を変えても、BizRobo!は常に中心的な役割を果たせることになる。その意味でBizRobo!2.0は、きわめて野心的な構想と言えそうだ。

構想の実現に向けた取り組みとして「ツールの機能強化」「ユーザー・パートナーとの協働による高度なDXの実用化」「現場増殖型モデルの全国展開」「地産地消型モデルの拡大」を挙げた大角氏は「各社でいま取り組んでいるRPAのプロジェクトにプラスして、ここに乗らない手はない」と断言。BizRobo!2.0の片鱗を体感できるというイベント各所の見どころを案内し、セッションを終えた。

平井卓也・前IT担当相「置き換えに終わらずデジタル独自の価値追求を」

この日の特別ゲストとして登場した平井卓也氏は、第4次安倍内閣の第1次改造で初入閣。ITや科学技術、知財戦略などを担当した政策通だ。会場では、自身が成立に関わった「デジタルファースト法」など、政府・与党が進めるデジタル化施策の最新事情を紹介。併せて、生産性向上に向けたRPAへの期待を語った。

平井氏はまず、2001年に「IT基本法」が成立してから20年近く経つ日本において、デジタル化の進展が進まない背景に「技術がもたらす変化を甘く見る風潮」があると分析し、次のように述べた。

「『デジタル化』という言葉は『デジタイゼーション(Digitization=アナログの技術をデジタルで置き換えること)』と『デジタライゼーション』(Digitalization=デジタルの特性を活用し、ビジネスモデルの変革や価値創出に役立てること)の2つの意味を含んでいる。例えば『テレビの地デジ化』はデジタイゼーションだった。切り替えこそスムーズだったが、本来はむしろデジタライゼーションに取り組み、いま世界を席巻している動画配信サービスのような新しいビジネスを推進すべきだった」

続けて平井氏は「日本はあと20年で『人口の半分が50歳以上』という史上例を見ない高齢社会を迎えるが、その後に続く国が約30カ国ある。そのため現在、海外の技術者や企業が実証実験の場として日本に注目している」と説明。

さらに「今後顕在化していく高齢社会の問題点を、思い切ったやり方で乗り切るのは、世界における日本のミッションだ。RPAやAIを、そうした大きな目的意識のもとで実装してほしい」と述べ、テクノロジー活用を単なる代替用途にとどめず、社会課題の解決につなげていくよう訴えた。

この日の平井氏は、内閣改造に伴う大臣退任からわずか1週間での登壇となった。後任のIT担当大臣が「はんこ文化との調和」に言及して波紋を広げたのとは対照的に、平井氏は所属する自民党の「IT戦略特命委員会」で扱う政策分野を、RPAを含むデジタル化全般に広げたいと表明。

さらに、行政手続のデジタル化によるコスト削減を国民に還元する「いわば、デジタル化加速化法案」(同)を、超党派の議員立法として近く国会に提出することも明らかにした。

平井氏は「デジタライゼーションの実現まで、日本に残された時間は多くない。次の時代のビジョンとして今後2、3年で理解を浸透させ、誰が担当大臣になっても方向性が保たれるよう、みなさま方のご協力をお願いしたい」とアピール。志を同じくする大角社長、さらにRPAホールディングス株式会社の橋知道社長と壇上で固く手を組むと、会場から大きな拍手が送られた。

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