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ファイルサーバとクラウドストレージの利用状況(2021年)/後編

後編はクラウドストレージの利用状況に焦点を当てて深堀していく。現在、クラウドストレージを利用、ファイルサーバと併用しているとした人に対して、利用しているサービスを尋ねたところ、あのサービスが過半数を占めた。

» 2021年01月28日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 キーマンズネットは2020年12月28日〜2021年1月11日にわたり「ファイルサーバの利用状況」に関する調査を実施した。全回答者数128人のうち、情報システム部門が33.6%、製造・生産部門が24.2%、営業・販売部門が11.7%、総務・人事が6.3%と続く内訳であった。

 今回は主にクラウドストレージの利用状況、利用を予定、検討する理由などを調査した。なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。

コロナ禍を経てファイルサーバからクラウドストレージへの移行は進むのか

 前編では、ファイルサーバとクラウドストレージの利用状況や不満に感じるポイント、ファイルサーバとクラウドストレージにまつわるトラブル事例などを紹介した。回答者のうち何らかの形で「ファイルサーバを運用している」とした割合は9割以上という結果が見えた。

 テレワークの推進によるクラウドシフトを背景に、クラウドストレージの利用も進みつつある。前編でも触れたが回答者の39.8%が「ファイルサーバとクラウドストレージを併用している」としており、全体でも43.7%と半数に届く勢いだ。この結果を2019年1月に実施した同様の調査と比較したところ、2019年は33.2%であったことから、この2年で10.5ポイント増と年々利用が拡大傾向にあることが分かる。そこで、後編では主にクラウドストレージの利用状況に焦点を当てて、調査結果を見ていく。

 クラウドストレージとファイルサーバの併用割合は全体の約4割を占め、クラウドストレージ利用者の9割がファイルサーバと併用しているのが実情だが、ファイルサーバから完全にクラウドストレージへの移行を考えている企業はどの程度あるのだろうか。

 「ファイルサーバのみを利用している」とした回答者に対して、今後、クラウドストレージを利用する予定があるかどうかを聞いたところ、「予定がある」として割合は6.0%、「検討中」が19.4%となり、合わせて25.4%がクラウドストレージの利用を予定、検討している(図1)。関連して、ファイルサーバを利用する「予定がある」「検討中」とした回答者に対して、ファイルサーバとの併用か、もしくは完全にクラウドストレージへの移行かどうかを尋ねたところ、「ファイルサーバとクラウドストレージを併用する予定」が70.6%と過半数を占め、「ファイルサーバを廃止予定」は17.6%であった。

図1 「ファイルサーバのみを利用している」とした人のクラウドストレージの利用意向

 クラウドストレージの利用は進んでいるものの、完全なクラウドシフトはまだ時間がかかるようだ。COVID-19の世界的流行を背景に国内でも一部地域で2度目の緊急事態宣言が発令された。今後、働き方の変容がさらに進むと考えられるが、情報漏えいなどのセキュリティリスクを鑑みると、完全に移行するのは難しいというのが実情なのだろう。今後も柔軟性や効率性、セキュリティリスクやコスト面で自社にとってのバランスを見定めながら進めていく併用運用が現実解となりそうだ。

今、勤務先で利用が進むクラウドストレージはどれか

 次に、クラウドストレージを利用もしくは併用しているとした回答者に対して、現在利用しているクラウドストレージサービスを尋ねた。

 回答割合の高いものから、「Microsoft OneDrive」55.4%、「Box」28.6%、「Google ドライブ」19.6%、「Dropbox」10.7%と続く結果となった(図2)。「Microsoft 365」や「Google Workspace」といったオフィススイートに内包されているストレージサービスだけでなく、最近ではB2B向けコンテンツ管理プラットフォーム化を進めるBoxなども伸びを見せている。また、「その他」とした回答の中には、「自社構築のプライベートクラウド」を挙げる声もあった。

図2 勤務先で利用しているクラウドストレージサービス

クラウドストレージを利用する主な理由は「運用負荷軽減」と「テレワークシフト」

 最後に、クラウドストレージを利用する「予定がある」「検討中」と回答した人に対して、併用や移行を問わずクラウドストレージを「利用したい」と考える理由を聞いたところ、「ファイルサーバの運用、管理が煩雑なため」が41.2%と最も高く、次いで「就労形態がテレワークにシフトしたため」「データバックアップが面倒なため」が同率で35.3%、「サーバが老朽化したため」23.5%と続いた。

 データ管理やハードウェアの更新、老朽化にも関連する物理的なメンテナンスなどを挙げる声が目立った。2019年に実施した調査と明確に異なる点は「テレワークへのシフト」で、言うまでもなくCOVID-19の影響による変化が大きいと見て取れる。収束のめどが立たない現状では、今後もテレワークやリモートでの業務を見据えた体制を構築しなくてはならない。そうした背景からもクラウドストレージを利用、検討する企業は今後さらに増えることが予想される。

 ちなみに、クラウドストレージを利用する「予定がある」「検討中」とした人に対して、利用を考えているクラウドストレージを聞いたところ、「Microsoft OneDrive」35.3%、「Box」29.4%、「Dropbox」23.5%「Google ドライブ」11.8%の順で利用意向が高く、現状のシェアと比較するとより各社横並びの状況だ。ただし「分からない」とした割合は41.2%で、自社の状況に合ったサービスの検討がまさに行われている状況と見たほうが正確なのかもしれない。

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