ジョブ型雇用に興味や関心を持っている中小企業経営者は過半数おり、それらの経営者は「正当な評価や業績への貢献度に応じて適正な報酬を支払いたい」と考えていることが分かった。
あしたのチームは2021年2月17日、中小企業の「ジョブ型雇用」に関する調査の結果を発表した。調査対象は、従業員数が5〜299人で人事評価制度があり、ジョブ型雇用を導入していない企業の経営者150人と、マネジメントや人事評価をする部下が5人以上いる管理職150人。調査結果によると、ジョブ型雇用に興味、関心を持っている中小企業経営者は過半数を占め、それらの経営者は正当な評価や業績への貢献度に応じて適正な報酬を支払いたいと考えていることが分かった。
ジョブ型雇用とは、「仕事に対して人が割り当てられる」という雇用形態。従来の「まず人を採用して、仕事を割り振る」という「メンバーシップ型雇用」とは異なる。ジョブ型雇用では、あらかじめ業務内容や勤務地、労働時間、報酬を職務記述書(ジョブディスクリプション)で細かく定めた上で雇用契約を締結する。年齢や勤続年数にかかわらず、担当する職務の内容や専門性の高さによって報酬を決める。
こうしたジョブ型雇用に対する関心度を経営者に聞いたところ、3.3%が「自社で導入したい」、52.7%が「興味・関心はある」と回答した。大企業に比べて中小企業ではジョブ型雇用の導入が進んでいないものの、経営者の半数以上がジョブ型雇用に興味や関心を持っていた。「自社では導入したくない」と答えた割合は22.7%だった。
ジョブ型雇用を「自社で導入したい」または「興味・関心はある」と回答した経営者に人事課題を聞くと、「優秀な人材の採用が難しい」と回答した割合が最も高く、42.9%(複数回答)。次いで、「各人のスキルの把握が困難」の33.3%、「重要な仕事をしている社員や高い成果を出す社員に賃金を重点配分できていない」の31.0%が続いた。
次にジョブ型雇用に期待することを経営者に尋ねると、最も多かった回答は「成果の可視化による正当な評価」で、60.2%を占めた(複数回答)。次いで、「業績への貢献度に応じて適正な報酬を支払うこと」が47.0%、「社員の成果に対する意識の変化」が38.6%だった。あしたのチームでは、ジョブディスクリプションによって業務内容と求める成果、成果に応じた報酬を細かく定める仕組みによって、評価や報酬決定方法が合理的になることに経営者は魅力を感じていると分析している。
今回の調査では、社員の成果と報酬が見合っていないと感じてる経営者や管理職が多いことも分かった。直近1年以内に、払っている報酬(給与)に見合う成果を出していないと思う社員と、払っている報酬以上の成果を出していると思う社員が、それぞれいたかどうかを聞いた。「報酬に見合う成果を出していない社員がいる」と回答した割合は経営者の62.7%、管理職の68.0%だった。これに対して「報酬以上の成果を出している社員がいる」と回答した割合は経営者の76.7%、管理職の71.3%だった。「報酬以上の成果を出している(給与が低すぎる)社員がいる」との回答割合が多いことから、成果を出している社員に適正な報酬を払いたいが、人事評価制度や給与決定の仕組みによって実現できず悩んでいる経営者が多いと、あしたのチームでは見ている。
そうした経営者は、できるなら出来高払いの報酬制度にしたいと考えているようだ。成果を明確に判断できる職種については、期間内の成果(出来高)に応じて給与額を増減させる賃金制度にしたいと「とても思う」と回答した経営者の割合は24.0%、「まあ思う」は54.0%だった。
実現したい人事評価での給与の決め方について聞くと、「業務の成果を重視」と回答した割合は経営者の78.0%、管理職の71.3%で、「業務の成果のみ」は経営者の8.0%、管理職の12.7%だった。「勤続年数や役職のみ」と回答したのは経営者の0.7%、管理職の2.0%だった。あしたのチームでは、これからは勤続年数や役職にとらわれず、業務の成果に応じた給与決定方法が主流になるかもしれないと分析している。
最後に、現在ジョブ型雇用を導入していない理由を聞いたところ「業務を細かく分けられないから」との回答が最も多く、40.0%(複数回答)を占めた。あしたのチームでは、少ない人数で複数の業務をこなすことの多い中小企業では、業務の切り分けや成果の定義づけが難しいと見ている。
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