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IT資産管理ツールの導入状況(2021年)/前編

今後、従業員が各所に分散した働き方がさらに進めば、PCなどの端末管理手法も働き方に合った最適な方法を考えなければならない。それを支援するツールの一つにIT資産管理ツールがある。

» 2021年10月21日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 キーマンズネットは、2021年9月27日〜10月15日にわたって「IT資産管理ツール」に関するアンケートを実施した。前回の同様の調査(実施期間:2019年3月27日〜4月18日)では、「Windows 7」のサポート終了が迫り「Windows 10」へ移行せざるを得ない時期だったこともあり、IT資産管理ツールの導入目的として「Windows 10のアップデート管理」が約3割を占めた。

 対して今回のアンケートは「Windows 11」のリリース前後の時期に実施した。アプリやシステムの互換性確認などで、当面は多くの企業がWindows 10を使い続けると予想されるが、新OSのリリースといった大きなイベントがあった中で、IT資産管理の導入状況に変化は見られたのだろうか。

 前編では、IT資産管理ツールの導入状況を概観するとともに、導入目的とツール導入で重視するポイントなどを2019年の調査結果と比較する形で分析する。全回答者数225人のうち、情報システム部門が32.0%、製造・生産部門と営業・販売部門が同率で16.4%、経営者・経営企画部門が8.0%などと続く内訳であった。グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。

IT資産管理ツールの多数派はパッケージか、SaaSか

 最初に、IT資産管理ツールの導入状況から見てみよう。リプレースの有無に関係なく「既に導入済みである」とした人は59.5%で、リプレースを含め「導入を検討している」が8.9%、「必要性を感じない」が17.4%だった(図1)。

図1 IT資産管理ツールの導入状況(n=224)

 「導入している」と回答した人の割合を従業員規模別で見ると、5001人以上の企業に属する人が80.4%、51〜100人以下の企業に属する人が44.5%となり、大きな差をつける結果となった。IT資産管理ツールが必要となる一つの基準と考えられそうだ。

 ツールの利用形態は「パッケージソフトウェア」が51.9%、「SaaS(Software as a Service)」が18.2%、「検討中、分からない」が29.9%で、2019年4月に実施した調査と比較するとパッケージ型が14.8ポイント減少し、SaaS型が増加傾向にある(図2)。特に5001人以上の企業では、パッケージ型が32.6%に対し、SaaS型が25.6%と拮抗(きっこう)するところまでとなっている。

図2 IT資産管理ツールの利用形態(n=154)

相次ぐ“大イベント” ツール導入目的に変化はあったか?

 IT資産管理ツールの導入、利用目的の一つに、OSのアップデート管理がある。2021年10月5日(日本時間)にWindows 11がリリースされたが、年2回だった大型アップデートが年1回に変更になった。アップデートサイクルは変更になったものの、Windows端末のアップデート管理は引き続き必要になってきそうだ。

 2021年も2019年に続いてIT資産管理ツールの導入目的について聞いたところ(複数選択式)、「保有するIT資産を可視化し適切に管理するため」が63.0%、「セキュリティ、情報漏えい対策として」が62.3%と、この2つに票が集まった。次点に「適切なライセンス管理のため」55.2%と続いた(図3)。

図3 IT資産管理ツールの導入目的(n=154)

 ここ1年で急激にワークシフトが進んだことで、スマートフォンやノートPCなどのモバイル端末を中心に従業員1人当たりが利用する端末数が増加傾向にあるなか、機器やソフトウェアの利用状況を適切に把握することで、遊休資産の有効活用や情報漏えい対策などを期待している顕れと考えられる。

 IT資産管理ツールでの管理対象は「Windows端末」が98.7%、次いで「タブレット」「スマートフォン」31.2%、「USBメモリなどの外部記憶媒体」27.9%と続いた(図4)。管理対象とするクライアント台数は回答割合が高い順に、「5001台以上」が30.5%、「1001台〜5000台」が23.4%、「101〜500台」が18.8%となった(図5)。

図4 管理対象とするクライアント端末の種類(n=154)
図5 管理対象とするクライアント端末の台数(n=154)

コストだけでなく、時代の空気を“読む”ことも必要

 IT資産管理ツールの導入で一番重視するポイントを尋ねたところ、「導入、運用のしやすさ」22.1%、「セキュリティ関連機能の充実」20.1%、「導入コスト」14.9%と続いた(図6)。

図6 IT資産管理ツールの導入で最も重視するポイント(n=154)

 この結果を2019年4月に実施した調査と比較したところ、前回は導入や運用にかかるコストや保守、サポート面が最重要とされていたが、今回はセキュリティや管理項目などの機能面が重視される傾向にあった。

 言うまでもないが、この2年の間で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に伴うワークシフトという大きな変化があり、働き方に応じた適切なIT資産の管理と運用に意識が傾き始めたのだろう。

 IT資産管理や運用管理といった間接部門が中心となって利用するツールは、売り上げへの直接的な貢献が見えにくく、費用対効果が測りづらいとされてきた。今回のアンケートで、IT資産管理ツールの「必要性を感じない」と回答した人の理由で多かったのが「経営層の理解が得られないため」と「コストや費用感が見合わない」の2つだった。

 しかし働き方の変化やセキュリティ、コンプライアンスの意識の高まりといった潮流は、ツール導入を考える上で導入効果を実感しやすくする“追い風”になっているのではないだろうか。こうした環境変化への対応コストはなかなか数値では図りづらく、見えにくいものだが、今回の結果から必要性は増していると考えられる。利益につながらないからと考える企業は、そうした視点も含めながらあらためて考えたいものだ。

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