メディア

絶対に買ってはいけないポータブルSSD:679th Lap

「安物買いの銭失い」ということわざがあるが、お金だけならまだマシだ。ネットショップで売られているあるポータブルSSDは、お金だけでなくユーザーの大切な“あるもの”も奪う危険性があるという。

» 2022年09月30日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 オンラインショッピングを楽しんでいると、時にトンデモない掘り出し物を発見することがある。「掘り出し物だ」と飛びついた製品に驚くべきワナが潜んでいるとしたら……。

 今、あるオンラインショップで売られていたポータブルSSDが話題だ。この製品を見かけたら、“ポチる”前に一度冷静になって考えてみてほしい。その製品にはどんなワナが仕掛けられているのか。

 話題となったのは、米国の大手スーパーマーケットチェーンWalmartのオンラインショップで販売されていた「大容量ポータブルSSD」だ。Tech系サイトArs Technicaの記事によると、30TB、16TB、10TB、8TB、6TB、4TB、2TBと容量に応じて複数のモデルがラインアップされていて、最大容量モデルが39ドルで販売されていた。内蔵SSDはM.2対応、USB3.1対応、コネクターはUSB Type-CであるもののMicro USB変換コネクターおよびLightning変換コネクターが付属する。

 他のオンラインショップでポータブルSSDを検索してみると、容量1TBの製品が1万3000円前後(2022年9月下旬時点の価格)で売られていることを鑑みれば、異常なほど安い。少しでもデジタルデバイスについて知っている人なら、この時点で「おや?」と思うはずだ。HDDですら2022年にようやく容量20TBに到達したところだ。ポータブルSSDで30TBということは「複数のSSDをつないでいるのか?」という疑問が生じる。

 この疑問に対してセキュリティ研究者のRay [REDACTED]氏(Twitterのユーザー名)が、自身のTwitter(@RayRedacted)でそのカラクリを解明し、その模様をArs Technicaが紹介した。Ray [REDACTED]氏はWalmartで売られていたポータブルSSDが大手オンラインショップ「AliExpress」でも販売されているのを発見し、31.40ドルで購入してみた。

 同氏は、製品が無事到着するや早速分解してみた。すると、ポータブルSSDの中には小さな基板が収められ、そこには幾つかのチップとスロットに収まる2枚のフラッシュメモリがあった。それらは、スロットから簡単に着脱できないようホットボンドで固定されていた。Ray [REDACTED]氏の見立てによれば、フラッシュメモリはどうやら一般的なmicroSDだという。基板はUSB 2.0にしか対応していないことも判明した。

 つまりこのポータブルSSDは「USB 2.0対応のメモリカードリーダーにmicroSDが収められたもの」だと推測できる。Ray [REDACTED]氏がPCに接続してみたところ、このデバイスは「2基の15TBのSSDドライブ」として認識された。さらに検証を続けると、microSDの容量は実際には512MBしかなく、基板に搭載されているチップによって容量が偽装されていることが判明した。

 しかも、microSDの容量以上のデータを書き込むと、ディレクトリ構造を維持しつつデータを削除しながら上書きしていくという仕様だということも分かった。つまり、データを保存したつもりでも実際には保存されていない恐るべき外付けストレージだった。

 この検証を受けてArs Technicaの記事では、「ストレージ製品をオンラインショップで購入する場合は有名ブランドにこだわり、信頼できる販売者から購入すべき」と結んだ。なお、WalmartおよびAliExpressの当該製品の販売ページは削除されたようだ。掘り出し物を見つけたとき、購入前にもう一度冷静に吟味する必要があるだろう。


上司X

上司X: 格安ポータブルSSDを買ってみたら中身がトンデモなかった、という話だよ。


ブラックピット

ブラックピット: やっぱり「30TBのSSD」ってとこでちょっとおかしいな、と思わないと。


上司X

上司X: いや、誰もがキミみたいな洞察力を持っているとは限らんのだよ。


ブラックピット

ブラックピット: なんですか、そのちょっとビミョーなイヤミは。普通に考えたら分かるじゃないですか。


上司X

上司X: うん、まあな。30TBのSSDはないわ。


ブラックピット

ブラックピット: でしょ? でも、掘り出し物を見つけた時に思わずポチってしまう気持ちは分からないでもありません。


上司X

上司X: そうだよなあ。でもやっぱり「これは!」と思ったときこそいったん冷静になるべきかもしれん。俺も「iPad Airの新品が3000円!」みたいなうたい文句をフリマサイトで見つけたんだが、冷静に見てみたら「iPad Airの“箱”の新品」だったっていうね。買わなくてよかったよ。


ブラックピット

ブラックピット: わはは、それは買わなくて正解でしたね。掘り出し物がまがい物というのはまったく悲しいものです。


上司X

上司X: まあ、そういうきわどい掘り出し物というか詐欺商品のワナというのは少なくないわけで。「買っちゃって失敗した! わははー」で済むならいいけど、今回のSSDのように、場合によっては本気でデータを保存しようとした場合は大きな損害になることもあるわけだ。やっぱり冷静に見極める目は必要だな。

川柳

ブラックピット(本名非公開)

ブラックピット

年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)

昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。

上司X(本名なぜか非公開)

上司X

年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)

中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

会員登録(無料)

製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。