メディア

3分の1が「もう辞めたい」 経験不足の新人マネジャーが職場に与える悲劇

新人マネジャーはマネジメントやリーダーシップのスキルをいち早く身に付ける必要があるが、周りの従業員の目は厳しいようだ。

» 2023年08月17日 07時30分 公開
[Carolyn CristHR Dive]
HR Dive

 優秀なリーダーシップは組織が成功するための重要な鍵であり、新人マネジャーはリーダーシップに関するスキルを身に付ける必要がある。しかし、現実はそうも上手くいかないようだ。

 ある調査によれば従業員の約40%が仕事へのストレスや不安を感じ、その原因は新人マネジャーにあるという。この問題はどれほど深刻で、どうすれば解決可能なのか、調査結果と専門家の分析を通して探る。

新人マネジャーのスキル不足は職場に何をもたらすか

 リーダーシップ学習ソリューションを提供するOji Life Labが2023年7月18日(現地時間)に発表した報告書によると(注1)、米国の従業員の約40%が「仕事に行くことに対してストレスや不安を感じている」と報告している。

 その結果、36%の従業員が「仕事へのモチベーションが上がらない」と回答し、21%は夜に眠るのに苦労しており、3分の1以上の人々が「仕事を辞めたい」と答えた。

 彼らの懸念の大部分は、新人マネジャーに対するリーダーシップスキルやトレーニングの不足に関連していた。従業員は、新人マネジャーについて「対立を減らすこと」や「困難な状況に対処すること」「質の高いフィードバックを提供すること」「生産的な会議を運営すること」「決断を下すこと」が苦手だと評価した。

トレーニングを受けることなく昇進する新人マネジャー

 Oji Life Labの共同創設者兼CEO(最高経営責任者)であるマット・カーシュ氏は次のように述べる(注2)。

 「外科医やパイロットに対して、トレーニングを提供せずに現場で学べと言うことはないが、初めてマネジャーになる人物については、トレーニングを提供せずに昇進させることが往々にして存在している」

 米国の2000人以上の成人を対象とした調査では、対立を減らし、生産的なミーティングを運営し、意思決定するスキルについて、優秀なマネジャーは新人マネジャーの2倍の高評価を得た。80%以上の従業員が「最も優れたマネジャーはこれらのスキルに優れている」と述べた。

 一方で、新人マネジャーの下では、従業員は自身と企業に対する信頼の喪失、職場や家庭に対する悪影響を報告する傾向が強かった。

 55歳以上の従業員ほど、新人マネジャーを否定的に評価する傾向があった。55歳以上の従業員の半数以上が「新人マネジャーは対立解消や意思決定などのスキルが低い」と述べた。特に55歳以上の女性は「難しい状況への対処やフィードバックの提供において新人マネジャーのスキルが不十分だ」と述べる割合が高かった。

 全ての年齢層の女性に対して、新人マネジャーは大きな悪影響を与えた。全体の半数近くの女性が「新人マネジャーと仕事をしたときにストレスや不安を感じた」と回答している。また、仕事を辞めたいと考える割合は、男性が29%だったのに対して、女性は40%だった。

 カーシュ氏は「メンバーが辞めたいと思ってしまうような不安定なチームを新人マネジャーが作ってしまうのは当然だ。意思決定や良好なコミュニケーションの育成、コーチングなどの普遍的なリーダーシップスキルが未熟だからだ」と述べる。

 最近の報告書によると(注3)、新人マネジャーに対して効果的な研修を行うためには、組織のポリシーや新しいアイデアではなく、必要なリーダーシップの習慣と実践に重点を置く必要がある。対立の解消や効果的な意思決定などのスキルの育成は特に重視すべきだ。

 コーチングはチームを率いる方法をまだ知らない新人マネジャーを対象に、マネジャーの役割について個別に効果的な指導を行う方法として人気が高まっている(注4)。

 しかし、マネジャーやリーダーを目指す人が、これらの研修の機会を利用できない場合もある。小売業など特定の業界ではその傾向が顕著であり、昇進を目指すための学習や研修を半数以上の従業員が利用できずにいる(注5)。

© Industry Dive. All rights reserved.

会員登録(無料)

製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。