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ノーコード/ローコード開発ツールの人気爆発に関わるSIerの思惑

市民開発を促すツールとして人気のノーコード/ローコード開発ツール。DX推進の手段としてのニーズが増える中で、SIerによる伴走型の人材育成、運用支援サービスも充実してきた。この潮流は、SIerの売上を大きく伸ばすチャンスと思いきや、短期的なもうけにはつながらないという。SIerがノーコード/ローコード開発ツールに注力する理由は他にあった。その思惑とは。

» 2023年08月25日 08時00分 公開
[キーマンズネット]

 子どもたちの夏休みに合わせて沖縄旅行を計画していたものの、台風の影響で飛行機が欠航。8月頭から沖縄で遊ぶ計画が頓挫し、子どもたちは意気消沈していた。そこで、沖縄に負けずとも劣らない水質を誇る海へ向かおうと、伊豆の下田へ向かった。

 急な計画変更であったものの宿がうまく手配でき、無事に夏の海を満喫することに成功。家族をして「来年からは沖縄でなくともいいのでは?」と言わしめるほど、充実した旅になった。

 ただし、東京からの移動に閉口したのが正直なところだ。伊豆半島の南端へ向かう高速道路が整備されておらず、伊豆縦貫自動車道などを経由することで、車移動に3時間半ほどかかってしまった。正直、腰がだいぶつらい。

 いずれにせよ、下田の海という成功体験を得たことで、旅の選択肢が大きく広がったことは何よりだ。

すぐにはもうからないノーコード/ローコード開発ツールに注力するSIerの思惑

 選択肢が広がったという意味では、アプリケーション開発においても大きな時代の転換を感じている人は少なくないはずだ。その要因の一つに挙げられるのが、ノーコード/ローコード開発ツールだ。専門的なコードを駆使せずとも、もしくは少しの知識があればアプリケーション開発が可能なツールやサービスを指す。

 事業部門が主役となりやすいツールであるため、その運用支援や開発人材の育成といった観点でのSIerによる支援サービスも充実してきた。ノーコード/ローコード開発ツールの人気に火が付いた今、さぞSIerの売上もほくほくなのだろうと思いきや、短期的にはたいした利益にならないらしい。SIerが支援サービスに力を入れる理由は別にあった。

 ノーコード/ローコード開発ツールは、アプリケーション開発の手法というだけでなく、アプリケーション開発を行うメンバーの選択肢を大きく広げるソリューションだ。Microsoftの「Microsoft Power Apps」、Googleの「Google AppSheet」、「OutSystems」やサイボウズの「kintone」などがメジャーなソリューションとして知られる。iPaaS(Integration Platform as a Service)をはじめとしたデータ連携ソリューションをローコード開発ツールとして打ち出している場合もある。

 多くの企業で、DX活動の強力な手段として、ノーコード/ローコード開発ツールを駆使しているケースをよく見る。高度なプログラミング知識が必要ないという通り、ドラッグ&ドロップでアプリケーションのUIや機能を設計でき、マスターとなるアプリケーションや外部システムとの連携もプロパティ設定で実現する。従来「Microsoft Excel」で実施してきた情報管理や申請・承認のワークフローをシンプルに実装できるのが利点だ。

 とはいえ、業務利用に耐え得るだけのアプリケーションをそこまで簡単に開発し得るのだろうか、とふと疑問がわく。

 導入企業に話を聞くと、事業部門を中心にうまく活用が進んでいて、いわゆる市民開発を実現するツールとして機能しているという。とはいえ、ガバナンスやセキュリティ、そして基幹システムとの連携部分などではIT部門の関与も必要だ。アプリケーション開発においては、データを取得するためのDBの考え方やテーブル構造、データの持たせ方などの作法をある程度意識する必要があり、適当に開発してしまうと後で後悔するリスクがある。

 その意味では、自社だけで開発や運用を担うのではなく、デベロッパーやインテグレーターといったSIerに伴走を頼むケースも増えている。こうした背景から、SIerは単発で開発を請け負うという稼ぎ方から、伴走型で継続的に支援するスタイルにシフトしていると、あるSIerは吐露する。SIとしての稼ぎ方が以前とは異なってきたようだ。

 正直SIerにとってノーコード/ローコード開発ツールの存在はうれしいのだろうか。そのSIerに聞いたところ、意外にも、売上よりも顧客と関わる時間が増えることが働くモチベーションにつながっているという。定例ミーティングといった顧客との接点を通じて、顧客の業務を深く理解できること、頼られる機会が多くなることがやりがいにつながるという話だ。SIerが、あたかも顧客企業の情報システム部門のように立ち回ることも少なくないようで、とにかく頼りにされるという。

 なるほど、ノーコード/ローコード開発ツールは、現場の課題解決に向けたアプリケーションを現場自らが開発できる手段であるだけでなく、SIerとしての承認欲求を満たしてくれるツールでもあるらしい。

5泊が13泊に、沖縄旅行の爪痕

 沖縄の代替えとして選択した伊豆、下田の旅行が思いのほか快適だったことで、何とか充実した夏休みを子どもたちと過ごすことができて本当によかった。

 一方で、7月末に沖縄に“飛べてしまった”友人から、台風で外出できず、コンビニからは商品が消え、ホテルのラウンジで無為な時間を過ごさざるを得ない状況が続いていると、嘆きのLINEが届いていた。

しかも5泊6日の沖縄旅行のはずが、気付けば13泊14日というロングステイを余儀なくされ、その間のホテル代などが積み上がっているという。

 「東京に戻ってからが恐ろしい」と語った友人だが、結局そのあと挽回できたのだろうか。


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