メディア

MES(製造実行システム)とERPの違いと共通点

生産管理システムであるMES(製造実行システム)はERPシステムと似た機能も持つが、違う点もある。MESとERPの違いについて学ぼう。

» 2023年12月22日 08時00分 公開
[Paul MaplesdenTechTarget]

 MES(製造実行システム)とERPは、いずれもメーカー企業の業務改善に役立つ機能を持つ。だが、この2つには大きな違いがある。サプライチェーンを統率するリーダーはその違いを理解し、最大限の価値を得るためにこの2つのシステムの統合を検討すべきだ。

 MESは製造業系企業が業務効率を最大化するのに役立つプラットフォームだ。対してERPシステムは財務や人事など、企業の基幹業務の管理や統合を担う。

 サプライチェーンを統率するリーダーがMESとERPについて知っておくべきことを説明しよう。

MESとは?

 MESは、原材料を加工して最終製品にするまでのプロセス全体を追跡、報告するソフトウェアプラットフォームだ。

 MESプラットフォームは、以下のような業務の実行に役立つ。

  • 製造リソースの適切な配分: MESは労働力や原材料、製造機器といった製造リソースの適切な配分の決定を支援する。
  • 法律や品質、製造基準の順守状況の確認: 多くの製品は特定の法規制や品質基準を満たす必要がある。MESはユーザーが法令順守の状況を追跡できるように監査証跡を作成する。仕事の流れや指示などのデータも保存するため、規制基準の順守状況を確認するのにも役立つ。
  • スケジューリングと製造フローの管理: MESのデータは、製造にかかわるステークホルダーがスケジューリングやバッチコントロール、作業命令に関する決定を下すのに役立ち、需給が急速に変化する状況では特に有用だ。
  • 製造や加工に関するレポート作成: MESは製造プロセスの詳細な報告や分析ができるため、効率化やコスト削減に役立つ場合がある。

ERPとは?

 EPRシステムは財務や人事、顧客関係管理(CRM)など、企業のさまざまなビジネスプロセスを管理・統合するプラットフォームだ。モジュール型のシステムとしてERPを実装し、必要に応じて機能を追加するケースが多い。

 ERPシステムは以下のような分野ではMESと似た機能を提供している。

  • エンドツーエンドの自動化と生産性向上: ERPシステムはさまざまなビジネスプロセスを自動化するため、コスト削減や業務全体の生産性向上につながる場合がある。
  • データの一元的な収集や統合、分析: ERPシステムは複数の事業部門のデータを一本化するため、データ分析やレポート作成が可能になり、効率が悪い箇所の確認や業務の改善が容易になる。
  • 業務プロセスの可視化: ERPシステムは業務を可視化するため、規制の確実な順守に役立つ。
  • ワークフローの標準化と最適化: ERPシステムはワークフローを最適化し、効率を高めるのに役立つ可能性がある。

MESとERPの違いは?

 MESとERPシステムの主な違いは、それぞれのプラットフォームが稼働するフィールドだ。MESは製造プロセスの詳細なステップに焦点を当て、ERPシステムは会社運営についてより広い視野を提供する。

 MESとERPシステムで異なる機能としては以下のようなものがある。

  • 従業員のスケジューリング: MESは特定の機器を扱う従業員の割り振りなど、焦点を絞ったスケジューリングに対応できる。一方、ERPシステムは製造部門全体の従業員を対象とする。
  • 変化するデータへの対応: MESは製造データをリアルタイムで分析し、問題があればユーザーに通達する。ERPシステムもリアルタイム分析はできるが、長期的な傾向や将来のニーズの分析を主眼としている。
  • 資産との統合: MESはさまざまな製造装置と容易に統合できるが、ERPシステムは他の部署のソフトウェアと統合することでそのメリットを最大限発揮する。

 メーカー企業はMESとERPシステムの両方を利用することで恩恵を受けられ、それがひいては製造業務全体の改善に役立つ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

会員登録(無料)

製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。