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業績向上の鍵となる「人の持続可能性」 意味と実現方法を解説

企業がビジネスと人のパフォーマンスを向上させたいのであれば、「人の持続可能性」に焦点を当てたアプローチが必要だという。その意味と実現方法とは。

» 2024年03月07日 07時00分 公開
[Carolyn CristHR Dive]
HR Dive

 あるコンサルティング企業が発表した報告書によると、企業がビジネスと人のパフォーマンスを向上させたいのであれば、「人の持続可能性」に焦点を当てたアプローチが必要だという。

 人の持続可能性に焦点を当てるとは、いっただいどういった取り組みを指すのか。そして、実現する方法とは。

「人の持続可能性」の本当の意味と実現方法

 コンサルティング企業のDeloitteが2024年2月6日(現地時間)に発表した報告書よると、経営幹部と従業員の間で、人の持続可能性に関する取り組みが自社にあるかどうかについて、認識の乖離(かいり)が大きいという(注1)。

 人の持続可能性とは、従業員や顧客、社会全体の成果を優先することを指す。人の持続可能性に関する取り組みが自社にあるかどうかについて、調査に回答した経営幹部の89%は「自社は何らかの形で人の持続可能性を推進している」と答えたものの、同じように感じている従業員は41%だった。

 Deloitte Consultingのアート・マゾール氏(米国における人的資本実践のリーダー兼プリンシパル)は(注2)、「組織が数々の課題に取り組む中で、受け入れるべき根本的な変化は、仕事の中心に人を据えることだ。結局のところ、ビジネスのパフォーマンスを推進するのは、物理的資産よりも人である」と述べた。

 また、マゾール氏は、次のようにも述べている。

 「これを達成するために、リーダーは人が組織にどれだけの利益をもたらすかに焦点を当てるのではなく、組織が人にどれだけの利益をもたらすかを考えなければならない」

 95カ国1万4000人のビジネスリーダーおよび人事リーダーを対象とした調査では、ほとんどのリーダーが、組織の繁栄のために人のパフォーマンスに焦点を当てることの重要性を理解していた。しかし、Deloitte Consulting LLPの専門家は「問題を知ることと、前進するために十分な行動をとることとの間に存在するギャップを埋める必要がある」と述べた。

 実際のところ、「組織のおかげで入社時よりも成長できた」と回答した従業員は43%しかいない。従業員は、「仕事のストレスの増加」や「新しいテクノロジーが自分に取って代わることへの懸念」などを主要な課題として挙げている。

 Deloitte Consulting LLPは「仕事の中心に人を据える一環として、企業は人のパフォーマンスに関する新たな評価基準を設定する必要がある」と述べている。従来の評価基準には労働時間や作業時間を評価するものがあったが、仕事の役割が変化し続ける中で、人のパフォーマンスを把握するには不十分だろう。データ活用の新たな機会が増えるにつれ、企業は従業員にどのような情報を開示すべきかを検討する必要も出てくる。

 例えば、調査回答者の53%は「自分の組織は従業員のパフォーマンスと価値を測定するための、より良い方法を探っている段階にある」と述べ、「自分の組織がこの分野でリーダーシップを取っている」と回答した割合は8%だった。

 Deloitte Consulting LLPは、信頼と透明性が大きな役割を果たすだろうと指摘する。従業員は、組織が責任を持ってデータを使用していると確信すれば、企業を信頼する可能性が高くなる。しかし、調査において「組織が責任ある方法でデータを使用していると確信している」と答えたのは、わずか37%だった。

 Deloitte Consulting LLPのシモーナ・スペルマン氏(米国における人的資本実践のリーダー兼プリンシパル)は、「リーダーは手元に膨大な量の労働データを持っている。これは活用方法次第で、金脈にも地雷にもなり得る。従業員にとっては、どのようなデータが収集されるのか、なぜ収集されるのか、誰がアクセスできるのかが分かることが特に重要だ。これは信頼の醸成につながる」と述べた。

 調査企業であるForresterのレポートによると、雇用主は従業員体験を改善する取り組みの優先度を落としているようだ(注3)。これは従業員体験に関する冬の時代の到来につながる可能性がある。しかし、Forresterの専門家は「チェックリストに頼るのではなく、従業員と実際に関わり合うことで、このトレンドに逆行すべきだ」と述べている。

 MIT Sloanの研究によると、生産性を向上させたいなら、雇用主は個人に対する投資よりも従業員に対する一貫性に重点を置くべきだという(注4)。研究者によると、燃え尽き症候群の多い時代では、従業員に対する一貫性がないと全体的なパフォーマンスを向上させるのが難しくなるという。

 人材管理や組織開発に関するコンサルティングを提供するThe Josh Bersinのレポートによると、人材に関する懸念が続く中でも成長を促進するため、企業は、「スキルの再習得」「人材の定着」「AI」を重視せざるを得なくなるという(注5)。しかし、新しいツールでできることは限られており、強力なテクノロジーを生かすためには、新しいリーダーシップのモデルや、より統合された人事制度との組み合わせが必要だという。

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