トヨタグループでマリン事業を手掛けるトヨタマリンが、スクラッチで開発したレガシーなサプライチェーン基盤を刷新した。トヨタマリンが導入期間を短縮化するために決断した「ある選択」とは。
トヨタグループでマリン事業を展開する トヨタ自動車の事業開発本部 新事業推進部 マリン事業室(以下、トヨタマリン)がDX(デジタルトランスフォーメーション)の一環としてサプライチェーン基盤を刷新した。
トヨタ自動車は、1997年からマリン事業に取り組んでいる。自動車エンジンをはじめとする技術の応用や品質管理のノウハウなど、クルマづくりで培ってきた技術を利用して海洋レジャーで利用されるプレジャーボートを製造している。コロナ禍によって事業環境が変化する中で、「モビリティカンパニー」への変革を目指す同社はリソースやコスト、時間が限られる中で、マリン事業の価値を高める仕組みの再構築が急務だと考えた。
従来、トヨタマリンは独自要件でスクラッチ開発したレガシーシステムを利用してきたが、次のような課題が浮上した。
新艇建造のための部品調達や在庫管理、アフターパーツの販売管理を実施する中で、事務処理工数の増加への対応運用ルールの見直しに伴ってシステム改修が必要になり、改善スピードが課題となっていた。潜在顧客の開拓や、顧客満足度を最大化させるために先端技術を盛り込める仕組みの構築、他のプラットフォームとの連携強化なども必要だった。マリン事業の価値向上戦略の一環として、商品の生産性を向上させるだけでなく、形骸化した既存業務の無駄を排除し、余力を創出することも重視したという。
こうした条件を基にトヨタマリンが採用したのがOracleが提供する「Oracle Fusion Cloud Enterprise Resource Planning」(Oracle Cloud ERP)と「Oracle Fusion Cloud Supply Chain & Manufacturing」(Oracle Cloud SCM)だ。
導入の決め手となったのは、次の3点だ。
Oracle Cloud ERPとOracle Cloud SCMの導入によって開発からアフターサービスまでが統合されたことによって、新艇の個別受注からアフターサービスまでが一元的に統合された。部品表や調達、納期の管理、在庫管理などが実施できる。
具体的には艇ごとの原価管理が可視化され、改訂情報がリアルタイムに反映されるようになり、在庫補充数量のミニマックス計画(下限となる在庫量を下回った時点で上限の在庫量と現在の在庫の差を発注する考え方)に基づく自動提案が可能になった。トヨタマリンはOracle Cloud ERPとOracle Cloud SCMによってメンテナンス業務や事務処理の効率化、生産性の向上を図っている。
トヨタマリンは今回のプロジェクトにおいて、Fit to Standardのアプローチを採用することで、SaaS(Software as a Service)の標準機能を最大活用し、アドオン開発のコストを極限まで抑制した。これによってOracle Cloud ERPとOracle Cloud SCMの導入期間を可能な限り短縮したとしている。
トヨタ自動車の西田健一氏(事業開発本部 新事業推進部 マリン事業室 主幹)は「トヨタマリンは、限られたリソースで事業成長を支えるためレガシーシステムの刷新を決断した。短期導入や早期定着、継続的な進化を実現できる基盤として、Oracle Cloud ERPとOracle Cloud SCMを選択した」と説明する。「AIなど最新テクノロジーの活用も視野に入れて省力化や自動化、業務改善による事務処理の効率化と生産性のさらなる向上を目指せることに期待している」(西田氏)
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