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Salesforceの生成AIチャットbotは業務をどう変えるのか?

Salesforceが次世代カスタマーサービスチャットbotを発表した。どのような技術で、業務をどう変えるのか。

» 2024年08月08日 08時00分 公開
[Don FluckingerTechTarget]

 2024年7月にSalesforceは「自律型AIエージェント」と呼ぶ次世代型のサービスチャットbotを発表した。現在試験運用中で、2024年の後半にリリースされる予定だ。SalesforceはこれまでもAIを使ったチャットbotを提供してきたが、生成AIが連携されることで、複雑なシナリオを作成することなく、顧客の意図を深く理解できるようになるという。一方で、生成AIチャットbotには顧客との関係性を悪化させるリスクもあるという。一体なぜだろうか。

Salesforceの生成AIチャットbotは業務をどう変えるのか?

 Salesforceが提供するプラットフォーム「Service Cloud」の最高製品責任者であるライアン・ニコルス氏は「『Einstein Service Agent』と呼ばれる自律型AI botは、生成AIを使用して顧客の意図を検出し、フローを呼び出し、ユーザーのSalesforceインスタンス内でアクションを引き起こすことを約束する」と述べた。

 自然言語処理や予測分析、生成AIが連動することで、Einstein Service Agentがシナリオを選択し、顧客の問題に対する解決策を見つけるよう誘導するという。

 現在のbotは、返品や払い戻し、パスワードの変更、サブスクリプションの更新などのカスタマーサービスに対する個々の要求に対応するために、ルールに基づくロジックでプログラムされている必要がある。

 生成AIによって支援される自律型botは、理論的には、顧客の問題をより深く理解し、より正確に問題を検出できる。つまり、顧客が商品の返送を依頼したとき、botはそれが「返品」を意味することを理解する。また、それを達成するためのプロセスを要約できる。Salesforceによると、Einstein Service Agentは、「WhatsApp」や「Apple Messages for Business」「Facebook Messenger」、SMSテキストで動作するという。問題を説明する言葉を顧客が見つけられない場合は、テキストだけでなく、アップロードされる画像やビデオ、音声も理解する。

 調査企業であるConstellation Researchのリズ・ミラー氏(アナリスト)は「近々登場するこれらのbotは優れた機能だが、適切に活用されなければならない」と述べた。そうでなければ、現在の技術よりも顧客の時間を無駄にし、顧客との関係を悪化させる可能性がある。

 ミラー氏は、自律型AIエージェントの実装を成功させる鍵は、botが故障したり、顧客からの要求に混乱したりした場合に備えて、近くで人間がフォローすることだと考えている。

 B2Cの商材であれB2Bの商材であれ、顧客は従来型のルールに基づくbotにうんざりしている。なぜなら、それらのbotの存在により、担当者と話すまでに時間がかかるためだ。顧客が真に望んでいるのは、担当者との会話だ。

 「botが複雑な質問に対応できるのは素晴らしいことだ。これらは自律型エージェントが扱わなければならない事項であり、解決しなければならない事項でもある。このような進歩があれば、複雑な質問を人間がプログラムする必要がなくなる。仮に人間がプログラムを怠っても、bot全体が機能しなくなることもない」(ミラー氏)

 「しかし、生成AIのようなテクノロジーの飛躍の際には『人と言語、思考プロセスは複雑であり、極めてマッピングが難しい』という警告が同時になされるべきだと考えている。テクノロジーの歴史において、人が人と話したがる大きな理由の1つだ」

 ニコルス氏は「近々リリースされるEinstein Service Agentについて、ユーザーはセットアップに時間をかけずに済むだろう」と述べた。一部の企業は、サービスコールで顧客が要求する可能性のある数千の発話や問い合わせ内容を、会話の意思決定ツリーにマッピングしている。

 「それは大変な工数がかかるもので、稼働のコストもかかる。それらを変更しなければならない場合、スパゲティのように複雑に絡み合ったフローチャートの会話デザインに対処しなければならない」(ニコルス氏)

 ニコルス氏は「Einstein Service Agentの自律型AIパイロットプログラムに参加しているSalesforceの顧客は、プログラムする必要のあるシナリオの数を大幅に減らしている」とも述べた。生成AIツールは、サービスリクエストの背後にある多くの言葉の順列を理解することができるためだ。以前はそれぞれを手作業でプログラムする必要があった。Salesforceのユーザーにとって、このテクノロジーは開発者やデータサイエンティストに発生する工数の削減につながる可能性がある。

 Einstein Service Agentの価格は、リリース時に発表される。

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