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需要が高まる「コネクテッドワーカーソリューション」 複数ERPベンダーが買収にて機能を追加

コネクテッドワーカーソリューションは、製造業者が人材不足に対処し、安全性と生産性を向上できるように設計されている。機能の基本と、需要が高まっている背景を解説する。

» 2024年11月12日 07時00分 公開
[Jim O'DonnellTechTarget]

 産業用オートメーションを提供しているRockwell Automationの「Plex」は、スマートマニュファクチャリング機能にコネクテッドワーカーソリューションを追加した。

 複数のERPベンダーが、買収を通じてコネクテッドワーカー向けの機能をアプリケーションに追加している。コネクテッドワーカー向けのソフトウェアの基本と、需要が高まっている背景を解説する。

コネクテッドワーカー向けのソフトウェアとは

 Plexの新しいコネクテッド・フロントライン・ワークフォース(CFW)は、減少する労働力や専門知識に関する問題に対処し、製造業者をサポートすることを目的としている。このCFWは、PlexのSaaS型のスマートマニュファクチャリングプラットフォームの一部である「Plex Manufacturing Execution System」に組み込まれている。

 新しい機能には製造プロセスや設備メンテナンスに関するガイド付きのインタラクティブな作業指示や、プロセスの理解を深めるための2Dモデリングおよび3Dモデリングが含まれている。また、コネクテッドワーカーサービスは「Microsoft Teams」と統合されている。

 Plexの製品管理のバイスプレジデントであるアンソニー・マーフィー氏によると、コネクテッドワーカー向けアプリケーションの重要な側面の一つは、経験豊富な従業員のスキルや知識を取り込んで、経験の浅い従業員に対するオンボーディングやトレーニングに役立てることだ。

 「Plexのコネクテッドワーカー向けアプリケーションは、反復作業を自動化したり従業員の生産性向上を支援したりするのではなく、新しく迎え入れた従業員を長期的に定着させるためにある。20年以上働いてきた人々の頭の中にあるスキルや知識を取り込んで次世代に伝え、失われないようにする」(マーフィー氏)

 マーフィー氏は「CFWアプリケーションはPlexによって開発され、顧客からのフィードバックを取り入れたものだ」と述べた。アプリケーションをコア製品として組み込むことで、顧客はサードパーティーのコネクテッドワーカー向けアプリケーションを導入する必要がなくなる。

コネクテッドワーカー向けアプリは、さまざまな課題に対応する

 製造業者は、労働力やスキルの不足に大きな課題を抱えていることが示されている。製造業向けのプラットフォームを提供するCaddiがスポンサーとして実施した調査「米国の製造業に対する圧力と生産性指数」によると、調査対象となった米国の製造業のリーダー330人のうち、半数以上(56%)は「熟練の従業員の不足が製造戦略やパフォーマンスに対する最大の圧力」と答えた。その他の圧力としては、「現在の従業員を戦略的な役割に引き上げること」(50%)や、「業務のデジタル化」(45%)が挙げられている。

 アナリストによると、これらの事実が、製造業界においてコネクテッドワーカー向けアプリケーションの市場が拡大している理由の一つだという。コンサルティング企業であるAdroit Market Researchのレポートによると、コネクテッドワーカー向け市場は2021年に31億9000万ドルと評価され、2029年までに217億3000万ドルに達すると予測されている。

 Forrester Researchのアナリストであるポール・ミラー氏は「コネクテッドワーカーという領域は、製造業における大きな課題の多くに関わっている。そのため常に大きな市場である」と述べた。

 「コネクテッドワーカー向けアプリケーションは、従業員にタイムリーなトレーニングを支援し、現場情報の取得を容易にし、現場の作業者が文書やデータにアクセスしやすい環境を構築する。また、安全性や事故報告を改善し、デジタルな作業指示を通じて複雑な作業を支援する」(ミラー氏)

ERPベンダーがコネクテッドワーカーのトレンドをけん引

 ITリサーチ企業であるTechnology Evaluation Centersのアナリストであるプレドラグ・ヤコブリェヴィッチ氏は、「企業向けの製造システムにおけるコネクテッドワーカー機能がトレンドとなっている要因には、DXやZ世代のトレーニングの問題、労働力不足がある」と述べた。

 複数のERPベンダーが、買収を通じてコネクテッドワーカー向け機能をアプリケーションに追加している。ヤコブリェヴィッチ氏は「2023年にはIFSがPokaを、2023年にはQADがRedzoneを、2022年にはEpicorがeFlex Systemsを買収した」と述べた。

 ヤコブリェヴィッチ氏によると、他の企業向け製造ベンダーも同様の機能を提供している。これには、「Microsoft HoloLens」の複合現実デバイスを使用する「Microsoft Dynamics 365 Remote Assist」や「Dynamics 365 Guides」、2022年にDiotaを買収して提供しているDassault Systemesの「Delmia Work Instructions Planning」、PTCの「Arbortex」やVuforiaのアプリケーションが含まれる。

 また、ヤコブリェヴィッチ氏は「他のERPプレイヤーは、ReverやAtheer、Tulipのようなコネクテッドワーカー向けソリューションプロバイダーとの提携や買収を模索するかもしれない」と述べた。

 調査企業であるConstellation Researchのアナリストであるホルガー・ミューラー氏は、「製造業者が高齢化する従業員や人材不足、システムのデジタル化の進展に関する問題に直面する中で、Plexのコネクテッドワーカー向け機能の重要性は高い」と同意している。

 「従業員は、機械と密接に連携し、業務を補完および迅速化し、自動化を進めていくだろう。成功には、継続的なトレーニングやタスクガイダンス、作業指示、可視化のための機能が必要だ」(ミューラー氏)

 また、ミューラー氏は「従業員のスケジュール管理やシフト管理をはじめとする製造業における人的資本管理(HCM)の機能においても革新が必要だ」とも述べた。

 「これらの能力がなければ、製造現場において人材や生産能力を確保するのは難しいだろう。これに加えて、コンプライアンスや認証のニーズも高まっており、現代的なHCMがついに製造現場に到達した」(ミューラー氏)

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