レガシーシステムのデータはビジネスにおける洞察の宝庫だが、データの抽出は依然として難しい。213人を対象に実施された調査を基に原因を考える。
企業はビジネスやAI活用に生かそうとレガシーなメインフレームアプリケーションに閉じ込められたデータを取り出そうとするが、苦戦しているようだ。発掘は、ビジネスにおける洞察や分析、AI導入における活用を目的に実施されている。
ある調査によると、回答者の4分の3以上が「メインフレームのデータや、データに付随する背景やそのデータが持つ意味を理解するための補足情報へのアクセスが課題」と考えており、3分の2近くは「メインフレームとクラウドのデータソースの統合に苦労している」と回答した。
企業におけるメインフレームのデータ活用の実態や、活用が難しい理由を考える。
2024年5月、ソフトウェア開発企業であるRocket Softwareは半導体チップを製造するFoundryに依頼して、データ分析や管理、エンジニアリング、アーキテクチャの専門家213人を対象に調査を実施した(注1)。
Rocket Softwareにおいてデータの近代化を担当するマイケル・カリー氏(プレジデント)によると、クラウドとメインフレームの文化には断絶が存在するという。同氏は、「互いを理解し合うことのできないチームが存在している。メンバーは、クラウドツールでの利用に適さない技術で作られたアプリケーションのデータにアクセスしようとしている」と述べた。
企業がクラウドの導入を進め、生成AIの採用を拡大する中で、経営幹部はメインフレームアプリケーションに蓄積された豊富なデータの活用に注目している。
Foundryの調査では、回答者の半数以上が「分析ツールの作成とビジネスにおける取り組みの推進はメインフレームデータへのアクセスにかかっている」と回答した。しかし、メインフレームのデータ資産を活用する能力を持っている企業は全体の4分の1強にすぎない。
カリー氏は、「CIO Dive」に対して次のように語った。
「メインフレームに存在するデータは、他のデータよりもはるかに高い価値を有している。なぜならば、それらのデータは取引のリアルタイムの流れや、現場で起こっている物事を表しているためだ。ビジネスは長年にわたり、これらのアプリケーションの中で体系化されてきた」
10年以上にわたってクラウドへの移行が進められてきたにもかかわらず、メインフレームは依然として企業で活用されている。IBMによると、現在も世界の取引の約70%をメインフレームシステムで実行しているという(注2)。
「その間に構築されたルールセットやロジック、全ての接続や統合は、ビジネスにおける意思決定や関係、実施された統合や買収を表している。それらをただ置き換えることはできない」(カリー氏)
ITサービス企業であるKyndrylの調査によると、企業はデータをクラウドに移行するのではなく、ハイブリッドで特定のタスクに特化したコンパクトなモデルを実行することを検討しているという(注3)。大量のデータをクラウドに送信する代わりに、AIを自社で動かして専有データを利用することで、セキュリティやコンプライアンスに関する懸念を和らげられるとKyndrylは示している。
IBMの最新の報告書によると、技術リーダーたちはレガシーなCOBOLアプリケーションのモダナイズを支援するため、生成AIのコーディングツールに目を向けている(注4)。一方、Rocket Softwareが調査企業であるForresterに委託して作成した報告書では(注5)、アプリケーションの全面的な書き換えは失敗しやすく、リファクタリングの方が一般的に優れた選択肢であると指摘されている。
「書き換えは最終手段だ。しかし、多くの人が試みて失敗に終わった」(カリー氏)
必要なデータを特定して分類できれば、大半の組織は大規模なオーバーホールを実施せずにコアメインフレームアプリケーションにアクセスし、価値を引き出せる。
IT部門はワークロードを実行するメインフレームを管理しているが、アプリケーションはビジネスと強固に結び付いている。カリー氏によると、経営陣はクラウドデータに関する取り組みの成果を目にすると、自社のデータがなぜそこに含まれていないのかを知りたがるという。
注1:Rethinking the Role of Mainframe Data in Enterprise AI and Analytics(Rocket Software)
注2:AI adoption rush puts mainframes back in the spotlight(CIO Dive)
注3:An unlikely hero is running generative AI workloads: the mainframe(CIO Dive)
注4:AI adoption rush puts mainframes back in the spotlight(CIO Dive)
注5:Most mainframe application rewrites fail the first time(CIO Dive)
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