オンライン販売が成長し、消費者が迅速な配送と低価格を求める現代において、3PLサービスの重要性はますます高まっている。3PLの仕組みやプロバイダーの選び方を解説する。
3PL(サードパーティーロジスティクス)プロバイダーは、調達や受注から顧客対応までの一連の業務の管理を担うアウトソーシング型の物流サービスを提供する。3PLは物品の保管や出荷を伴うあらゆるサービスの契約などの広範な役割を持つ。
3PLサービスには、配送管理や倉庫スペースを提供するものや、サプライチェーンマネジメントの形でシステム全体をカバーするものもある。3PLの仕組みやプロバイダーの選び方を確認していこう。
はじめに、電子商取引における3PLの仕組みの一例を紹介しよう。出版社は、出版物を制作するためにライターおよび編集者、グラフィックデザイナーを雇うが、消費者からの注文処理や書籍の出荷に伴って発生する配送業務を社内で対応したくないと考える場合がある。
そのような場合、出版社はフルフィルメントセンターを利用してオンラインの顧客注文を処理し、商品の配送のためにトラック配送業者を雇う。フルフィルメントセンターと配送業者はどちらも3PLのプロバイダーとして機能する。また、単一の3PLプロバイダーが書籍の注文に対応し、発送まで対応することも可能だ。
3PLのビジネスを営む業者との契約により、出版社は必要なときにのみ供給、配送サービスを利用し、発送コストをより効果的に管理しながら、書籍の制作という自社のコアコンピタンスに集中できる。
3PLの歴史は数十年前にさかのぼる。サプライチェーンマネジメントに関連する専門家のための国際的な団体であるCouncil of Supply Chain Management Professionalsは、3PLという略語が生まれたのは、50年前にさかのぼることを明らかにした。同団体は用語集に「3PLという用語は、1970年代初頭に初めて使用され、当初の目的は異なる配送手段を組み合わせて配送サービスを提供する企業を配送契約上で区別することだった。それまでの配送契約に登場する当事者は、荷主と単一の方法で配送を行う業者のみだった」と記載している。
1980年のThe Motor Carrier Act(自動車運送事業法)によってトラック配送業界の規制が緩和され、配送料金が引き下げられ、競争が激化した。3PLという用語は、1990年代にコンサルタントや会議の中で広まり、インターネットの台頭を含むテクノロジーの進化と結び付いたと考えられる。その後、2008年に制定されたthe Consumer Product Safety Improvement Act(消費者製品安全改善法)では、「3PLプロバイダーという用語は、消費者が注文した商品を受け取り、保管または配送する者であり、製品の所有権を取得しない者を指す」という法的な定義が登場した。
オンライン販売の成長と、より迅速な配送と低価格を求める消費者のニーズの増加は、3PLサービスの需要を急増させた。また、3PLの発展にはサプライチェーンの可視性を拡張するRFID(無線周波数識別)やGPS(全地球測位システム)などの追跡技術の発展も関連している。一方、IoTは、トラック配送やその他の配送業者の追跡指標、KPI(重要業績評価指標)の改善に寄与した。
サプライチェーンコンサルタント企業であるArmstrong & Associatesが2017年に発表した報告書によると、「Fortune 500」に認定されている米国内の企業の90%は、物流の面で3PLプロバイダーに依存している。Armstrong & Associatesが2001年に報告したとき、同割合は46%だった。
組織が3PLプロバイダーとの提携に関心を示すシナリオには次のようなものがある。
倉庫や技術の非効率的な管理がコストを引き上げ、組織の利益に悪影響を与えることがある。このようなシナリオでは、これらの業務を専門とする3PLプロバイダーが業務を効率的に処理する。
特定の商品に対する需要の急増など、特殊な状況下では組織のスタッフが手いっぱいになり、顧客からの苦情が増える可能性がある。顧客満足度の高いサービスプロバイダーは問題解決の良い選択肢となるだろう。
組織が新たな市場に進出する機会を見つけた場合、特に広い範囲に拠点を有する3PLプロバイダーは、ロジスティクス業務の拡大を支援する。
特に、倉庫管理ソフトウェアなどの高度なシステムに予算をかけられない小規模な企業でこの問題が顕著だ。いずれにしても在庫管理には組織のスタッフによる時間と労力が必要だ。しかし、在庫管理を専門とする3PLプロバイダーは在庫を管理するだけでなく、在庫状況をリアルタイムで更新し組織に提供する。
例えば、小規模な電子商取引のフルフィルメントセンターは、最初は地域レベルで運営されるが、ビジネスが拡大すると小さな倉庫で注文を処理しきれなくなる。その際、3PLプロバイダーがより大きな施設への移転をサポートする。
本質的に3PLプロバイダーが必要でない場合でも、予算内でパートナーシップを結ぶことができれば物流業務は改善される。
3PLパートナーとして最適な相手を評価するための複数の基準がある。ビジネスリーダーは、サービスプロバイダーと提携する際に次の質問を用いるべきだろう。
プロバイダーとの長期的なパートナーシップを求める組織は、単に手頃な価格のスキームだけを検討するわけではない。適切なプロバイダーとは、顧客体験を優先して事業を展開する管轄区域の法律や規制を順守し、組織の既存のテクノロジーと互換性のあるサービスを提供するプロバイダーだ。プロバイダーはこれらの基準を満たしていることを証明する認定や資格を持っている場合がある。
主要な3PLプロバイダーは世界中に存在している。世界の3PLサービス市場における主要プロバイダーのリストには、Ceva Logistics、CH Robinson、DB Schenker、DHL Group、FedEx Corporation、JB Hunt、Kuehne + Nagel、日本通運、Panalpina、UPSなどの企業が含まれる。
3PLサービスプロバイダーは専門とする物流分野に応じて分類される。主に次の3種類がある。
輸送サービスは商品の移動を専門としている。これらの3PLプロバイダーには、FedExやUPSなどの小包運送業者の他、航空貨物や鉄道、海上輸送などの輸送手段が含まれる。
これらのプロバイダーは通常、注文の処理や履行、出荷をする。注文される前に3PLプロバイダーの倉庫はサプライヤーまたはメーカーからパレットなどの在庫を受け取り、保管する。「DHL Supply Chain」は倉庫ベースの3PLプロバイダーの一つだ。
物流の物理的な側面を扱うのではなく、これらのプロバイダーは高度な管理ソフトウェアを使用して、貨物の支払いや在庫管理などの分野に特化している。CH Robinsonは財務ベースの3PLの一例だ。
3PLサービスプロバイダーと提携することで、組織にはさまざまなメリットがもたらされる。
3PLにはメリットがある一方で、次のような課題もある。
3PLに関する議論では、4PL(第四者物流)という概念がよく出てくる。3PLプロバイダーが自社の契約サービスの一部をアウトソーシングすると4PLプロバイダーとなる。例えば、フルフィルメントセンターがシュリンクラッピングと貨物の計量を他社に委託する場合、そのセンターは4PLプロバイダーとして機能する。
3PLプロバイダーは特定のアウトソーシングサービスのマネジャーと見なされるのに対し、4PLプロバイダーはサプライチェーン全体のサービスを監督する役割を担う。4PLプロバイダーはサプライチェーンにおけるクライアント企業の単一の連絡窓口として機能し、さまざまな3PLアクティビティーを選択して管理する。
貨物輸送と3PLは似ているように思われるかもしれないが、明確な違いがある。
貨物運送業者は実際に資材を出荷するのではなく、クライアント企業と運送会社との連絡役として機能する。価格交渉や輸送手段の決定、経済的な輸送ルートの確立などを担当する。一方、3PLプロバイダーは運送業者よりも幅広いサービスを提供する。
また、3PLプロバイダーは出荷される商品やサービスに対して責任を負うが、貨物運送業者は単なる仲介業者であるため、責任を負わない可能性が高い。
企業が1つ以上の3PLパートナーシップを確立すると、その企業はそれらのパートナーシップの成功とビジネス価値を決定する権限を持つ。3PLパートナーシップの成功を測定するKPIについても学ぶ必要がある。
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