ある調査によると、2024年のITエンジニアの給与の上昇率はインフレ率に追い付いていないという。AIをはじめとする高度スキルを持つIT人材が不足する中で、なぜこのような事態が起きているのか。
キャリア開発サービスを提供するDiceが2025年1月6日(現地時間)の週に発表したデータによると(注1)、2024年におけるITエンジニアの平均給与はわずか1.2%の増加にとどまったという。同調査は2800人以上のITエンジニアを対象に実施された。
IT業界における給与はなぜ伸び悩んでいるのだろうか。その背景には、「AIの専門性があれば高い給与がもらえる」という以外の、根本的な問題が存在するようだ。
Diceのデータによると、2024年におけるITエンジニアの平均給与は11万2500ドルだった。AIに関する専門知識を持つエンジニアは、その他と比較して18%の給与上昇がみられた。
給与の伸び悩みが続く中、ITエンジニアは新たなチャンスを得ることに前向きな姿勢を示している。2024年には雇用されているエンジニアの約半数が、「新しい職を積極的に探した」と報告しており、これは2023年の29%から増加している。
テック業界における2024年の求人市場は、以前よりも制約が多かった。これは企業がITの優先順位を見直し、予算により注意を払うようになったためだ。
専門職向けのキャリア開発と求人プラットフォームを提供するDHIグループのアート・ザイル氏(CEO兼プレジデント)によると、コロナ禍後の求人市場ではITエンジニアの供給過多が起こり、2024年にはより控えめな採用数で推移したという。
「誰かが採用されても、実際にチームに配属されるのは数カ月後だったという話を聞いたことがある。現在は、こうした過剰な採用はなくなり、平均的な状況に戻りつつある」(ザイル氏)
他の組織の調査データも、ITエンジニアに対する需要の冷え込みを裏付けている。IT業界の非営利団体であるCompTIAが発表した調査レポートによると、2024年は複数月でIT業界における失業率が急上昇し、同年6月には4年ぶりの高さとなる失業率3.7%を記録した(注2)。このような変動はあったものの、同年12月には企業が7000人分のITエンジニアの求人広告を出し、明るい兆しも見えた(注3)。
企業が生成AIの導入を進める中で、データサイエンスなどの重要な基盤技術を含む専門的な役割が再び注目を集めている。ザイル氏によると、2023年にDiceのプラットフォームでAIスキルを持つITエンジニアに対する求人は約10件に1件の割合だった。2024年に終わりにはAIスキルを要求する求人は約3件に1件の割合に上昇したという。
「プロジェクトの数に比べて、AIスキルを持つ専門家の数が不足している」(ザイル氏)
出典:Tech salaries barely inched up in 2024(CIO Dive)
注1:The Dice Tech Salary Report 2025(Dice)
注2:Tech unemployment rose to nearly 4-year high in June(CIO Dive)
注3:Tech talent market wraps 2024 on a high note(CIO Dive)
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