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社内ネットが18分で全滅 AI搭載ランサムウェアの恐怖

AIを利用したサイバー攻撃が本格化してきた。調査によればAIツールの悪用により、ランサムウェア攻撃の侵入拡大時間が激減した。AIを活用するかどうかが犯罪グループの盛衰を左右するほどだ。

» 2025年12月04日 07時00分 公開
[Eric GellerCybersecurity Dive]
Cybersecurity Dive

 XDR(eXtended Detection and Response)やセキュリティ運用プラットフォームに強みを持つReliaQuestは2025年10月21日(現地時間、以下同)に「Annual Cyber-Threat Report 2025」を公開した。この報告書の特徴はランサムウェア・アズ・ア・サービス(RaaS)とAIの関係を調査したことだ(注1)。

 RaaSを使う大部分の攻撃グループはAIを搭載したツールを使用しており、これがランサムウェア攻撃のスピードを高めている可能性が高いという。

社内ネットが18分で全滅 AI搭載ランサムウェアの恐怖

 自動化が攻撃に影響を与えていることを示す指標の一つとして、ReliaQuestはブレイクアウトタイムの大幅な短縮を挙げている。ブレイクアウトタイムとは、攻撃者が最初の侵入に成功してから、ネットワーク内の他の端末へ侵害を広げるまでに要する時間のことだ。同社によると、ブレイクアウトタイムは2024年の48分から、2025年半ばには18分へと短縮されたという。

 現在のランサムウェア攻撃はRaaSツールの開発・運営者と、RaaSを使って企業を攻撃するアフィリエイターが分離していることが多い。

 報告書によると、RaaSグループはウイルス対策ソフトを検知する機能や、ランサムウェアの実行を妨げるソフトウェアを自動的に停止させる機能などを備えたAI搭載型のツールをアフィリエイターに提供しているようだ。

 セキュリティ研究者の間では「AIが脅威の状況をどれほど変えているのか」について意見が分かれている(注2、注3)。しかし、ReliaQuestの報告書は、AIによる自動化が攻撃スピードを高めているという新たな証拠だ。さらに、RaaSグループに関する調査結果からは、AIツールが犯罪グループのサービス内容をより魅力的なものに変え、競争力を高める役割を果たしていることがうかがえる。

悪名高い攻撃グループはRaaS+AIでどう変わったのか

 報告書によると、一部のRaaSグループはAIを活用して競争上の優位性を確保しているようだ。悪名高いランサムウェア攻撃グループ「LockBit」は2024年に法執行機関による一斉摘発を受けて、攻撃ができなくなり、攻撃グループの間での評判が落ちた。だが、現在では高度な機能を多数備えたRaaSモデルを全面的に採用することでより多くのアフィリエイターを引き寄せ、組織の立て直しを試みている。

 対照的なのが知名度の高いグループ「Medusa」だ。同グループは衰退傾向にあり、データリークサイトに掲載される被害組織の数が数カ月ごとに減少し、アフィリエイター向けの自動化ツールを提供していないという状況のようだ。

 他にも注目を集めている攻撃グループがある。「The Gentlemen」と呼ばれるグループは、サイバー専門家が2025年9月に初めて存在を確認したばかりだ。それにもかかわらず、アフィリエイター向けの自動化ツールをすでに提供している。研究者は「同グループが持つ高度な機能が成功の原動力になっている可能性が高い。実際、同グループは活動開始からわずか1カ月で、データリークサイトに30社以上の被害組織の社名を掲載した」と述べた。また「DragonForce」というグループも高度なツールを活用して、ブランド力を高めた。2024年と比較して、2025年には被害を与えた組織の数を2倍に増加させたという。

 一方、これらの進化はまだ初期段階にある。報告書によると、アフィリエイターにAIを搭載した機能を提供しているRaaSグループは全体の50%に過ぎないという。

 ReliaQuestの研究者は次のように述べた。「分析対象となったRaaSグループのうち、最も防御が強固な組織を侵害可能で、高額な身代金を獲得できるエリートクラスのアフィリエイターを引き付けるために必要な3つの能力全てを提供できるグループは半数にも満たなかった」

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