キーマンズネットは読者を対象に、2026年に向けたIT投資意向や直面している課題に関するアンケートを実施した。今回は、全アンケート結果から見えてきた情シス部門の課題と、それを打破するための対応策を示す。
2026年、ITは単なる業務支援の枠を超え、企業の競争力を左右する原動力になっている。一方で、それを支えるIT部門は複雑化する課題とリソース不足の板挟みになっている。
キーマンズネットは読者を対象に、2026年に向けたIT投資意向や直面している課題に関するアンケートを実施し(実施期間:2025年11月26日〜12月24日、有効回答数:408件)、全7回にわたって「セキュリティ」「システム運用」「生成AI」「VMware対応」「データ分析」「情報収集」「IT投資」について記事を届けてきた。これらを俯瞰(ふかん)すると、日本のIT部門が抱える構造的な課題が浮かび上がってくる。
特別編となる今回は、全アンケート結果から見えてきたIT部門の課題と、それを打破するための処方箋を提示する。
システムの運用状況において、直近1年間における不具合や障害の発生頻度を尋ねたところ、最も注目すべきは、14.5%の回答者が自社のシステムで障害が起きているかどうかを「把握していない」と答えた点だ。
さらに、レガシーシステム刷新の取り組み状況について、27.5%の回答者が「特に検討していない」と答えた。また、IT製品・サービスの検討を始めるきっかけとして、半数以上(53.4%)が挙げたのは「既存システムの老朽化・サポート終了」という受動的な理由だった。
ここから見えてくるのは、日頃から技術トレンドを把握して計画的に刷新を進めるのではなく、「サポート切れ」などの外部要因に迫られて初めて腰を上げるという「事後対応(リアクティブ)」の常態化だ。動いているものは触らないという保守的な文化が、見えないリスクを増幅させている可能性がある。
直近では、「Windows 10」のサポート終了(EOS)対応において、移行が間に合わず有償保守(ESU)の支払いを余儀なくされたり、直前の駆け込み需要による調達コスト高騰に苦しんだりした例が挙げられる。
なぜ、刷新が必要だと分かっていながら企業は動けないのか。刷新における障壁を尋ねたところ、最も多かった回答は「予算の確保」(41.7%)だった。
これは単にお金がないというだけの問題ではない。IT投資の課題解決が進まない背景には、「予算要求や企画を担える人材が不足しているから」(32.8%)、「投資対効果(ROI)を具体的・定量的に示せないから」(26.2%)といった理由が上位に挙がっている。
つまり、経営層に対して古いシステムを使い続けることの隠れたコストやリスクを定量的に説明し、ITインフラへの投資は単なるコストではなく、不可欠な戦略的投資と納得させるだけの説明力や合意形成のプロセスが決定的に不足しているといえる。
経営層の理解とリソースの有無はIT投資格差として表れている。
生成AIの利用状況を見ると、従業員5001人以上の企業では64.9%が「利用している」と回答した一方で、500人以下の企業では3割程度にとどまっている。また、2026年度に増額して投資する項目において、これまでトップだった「セキュリティ対策」と同率1位に躍り出たのが「AIエージェント」(28.4%)だった。
しかし、AIエージェントへの投資意欲を従業員規模別に見ると、投資継続・拡大層では従業員5001人以上の企業が占める割合が29.2%であるのに対し、投資縮小・未導入層では43.3%を100人以下の企業が占めている。人材や予算に余裕のある大企業は、AIやマネージドサービスを活用して既存業務を代替させるフェーズに移行しつつある。一方で、中小企業はレガシーシステムの維持にリソースをとられ、企業規模によるIT競争力の二極化が進行している。
人手・スキル不足により日々の火消しに追われ、経営層にROIを提示できないため予算が降りず、結果として古いシステムを延命せざるを得ない。この負の連鎖から脱却するためにIT部門と経営層は何をすべきか。
まず、可視化による説得力の向上が考えられる。障害履歴や変更履歴をデータとして蓄積し、見えないリスクを可視化する。「どこにメスを入れるべきか」を客観的なデータに基づき、ROIとして経営層に突きつけることが第一歩となる。
次に、手放す勇気と自動化の推進だ。社内にリソースがないのであれば、全てを自前で抱え込む属人的な運用を減らすべきだ。マネージドサービスの活用や、投資項目1位となった「AIエージェント」をはじめとする自動化ツールの導入を前提とした運用へ移行するのが選択肢として考えられる。
最後に、創出されたリソースを「企画・戦略立案」と「リスキリング」へシフトさせることだ。今回の調査では、「IT分野でのリスキリング、IT人材育成」への投資を「減額・投資しない」とする割合が20.1%に上り、依然として人材への投資意欲が低い実態が見えた。AI時代において求められるのは、運用保守のスキルではなく経営課題をITで解決する企画力だ。
全体を通して、日本企業が長年続けてきたその場しのぎの運用に終止符を打ち、持続可能なデジタル基盤へと刷新することが求められている。
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