すご腕アナリスト市場予測
第3のプラットフォームへの変遷期に見るユーザー部門のIT予算(2/5 ページ)
ITのコモディティ化がユーザー部門をIT投資に向かわせる
ユーザー部門のIT投資が増えている理由は何だろうか。その背景には、ITプラットフォームの変化という大きな潮流があることが挙げられよう。
IDCの捉え方では、ITの世界のプラットフォームの変化は10~20年ごとに起きている。第1のプラットフォームはメインフレームと端末、第2のプラットフォームはクライアントサーバシステム、そして第3のプラットフォームは、モバイル、ソーシャル、ビッグデータ、クラウドの4要素で構成される、現在変化が進行中のプラットフォームだ。
現在でもメインフレームは古くからの企業で活用されてはいるものの、基幹系システムの多くはクライアントサーバシステムに移行しており、その一部はさらにWebシステムに移行し、クラウドへの移行も徐々に進んでいる状況だ。現在は第3のプラットフォームの普及期にあたると考えている。
このプラットフォームの変化は、ITのコモディティ化を一層進めている。かつてのITシステムは、専門技術者が企画、開発し、知識や経験豊富な運用管理者とオペレーターが力を合わせて運用してきたのだが、今では既にパッケージソフトベンダーやクラウドサービスベンダーなどの側である程度は構築が済んだシステムを、簡単なパラメータ設定でカスタマイズするだけで、実用的なITサービスが享受できるようになった。
特に訓練を積んだ開発技術者や運用管理者、専任オペレーターがいなくてもよくなったわけだ。ユーザー部門としては、必要なITサービスが専門知識なしで入手できるのなら、何もIT部門の手を借りることなく、自部門のニーズを満たしてくれる製品やサービスに部門予算を注ぎ込んだ方が手軽で早いと考えるケースも増えてくるだろう。これは、調査結果からも裏付けられる。図2は、部門IT予算があると答えた企業に、部門IT予算がある理由を尋ねたものだ。
ユーザー部門では、その最大の理由は「現場要件を迅速かつ的確に反映するため」と答えている。これはある意味当然のことではあろうが、裏を返せば、従来のようにIT部門にIT予算管理や投資先の決定を任せていては、ユーザー部門が必要とするサービスが望ましいタイミングでは利用できないという経験が積み重なったための不満の表明と見ることもできよう。
また同じ理由がIT部門でも一番多く回答されたところや、「IT部門の業務範囲が狭い、ユーザー部門の業務知識が必要」という理由を挙げた人が、IT部門のほうがやや多いところを見ると、IT部門の方でもユーザー部門のニーズに的確に応えられていないことが認識されていることがうかがえる。
「IT製品/サービスが使いやすくなった」という理由を挙げたのはIT部門が多く、ユーザー部門が少ない。一方「ユーザー部門のITスキルが高まった」という理由はIT部門もユーザー部門も同率で挙げられた。この2つは関連している。
例えばサーバの導入や設定などのインフラ設計をしなくともクラウドからサーバが調達できるようになり、プログラム開発言語を知らなくても簡単な設定やスクリプトが扱える程度のスキルでも十分にソフトウェアを思い通りに使えるようになったことが「使いやすくなった」ことの意味だ。
「ITスキルが高まった」という回答には、ITを使いこなすために必要なスキルのレベルが下がり、相対的にユーザー部門のスキルが上がっているという意味が含まれているだろう。しかし、これにはIT部門とユーザー部門との間に認識のギャップがあるようだ。IT部門が考えるほどにはユーザー部門はIT製品やサービスを簡単に使いこなせていない。
ユーザー部門の現場では、以前よりはIT導入の難易度が低くなってきたとはいえ、自助努力をして負担を背負っても業務効率のために自部門でのIT投資と導入、運用管理をせざるを得ないという事情がここに見えてはこないだろうか。
これらの数字の背後から浮かび上がるのが、既存システムの運用とメンテナンスに多くの時間を費やしている現在のIT部門の姿だ。第2のプラットフォームである比較的古くからの基幹系システムは、そもそも長年の利用により改修や追加が繰り返されてシステムが複雑化、肥大化して運用管理工数がかさみがちだ。
時を経るごとに工数が増えていく一方で、IT部門の人的リソースはなかなか補充されない。知識や経験豊富なベテラン技術者が年齢を重ねて徐々に減っていくと、全体として人材不足に陥ってしまうこともある。だからといって既存基幹システムの運用管理は手を抜くことができず、新規投資案件には手が回らない事情があるのだ。
その一端を如実に示しているのが図2の「IT投資案件が増え、IT部門だけでは対処できない」「IT部門のレベルが低い、スピードが遅い」という回答だ。IT部門の悩みがこのグラフからにじみ出てくるようだ。
なおIDCでは、今年はじめに国内ITサービス市場におけるIT技術者のリソース状況に関する調査も行っている。そこで明らかになった不足水準が高い上位の職種は (1) 金融向けの上流工程を担当するSE/コンサルタントなど、(2) ビッグデータを扱えるデータサイエンティスト、(3) セキュリティ技術者……となった。あくまでも事業拡大や新規ビジネスの模索など「攻めのIT」を目指す方向に関心が向き、それを下支えするリスク管理のためのセキュリティ人材を除いて、既存システムの安定稼働を支える人材は上位に入ってこない。企業ITの第3のプラットフォームへのさらなる移行が進まない限り、運用管理チームの苦悩はこれからも続きそうだ。
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