ANAのノウハウを外販 航空会社の「勤務計画AI」を他業界へ
複雑な条件を考慮する勤務計画の作成をAI・数理最適化技術で支援するサービスが登場した。インテリジェントフォースは、ANAとの約4年間の共同開発で培った技術や開発ノウハウを応用し、企業ごとの業務ルールや制約条件に合わせて勤務計画作成の仕組みを構築する。
航空会社が扱うのは、飛行機だけではない。大量の乗務員を、さまざまな条件を満たしながらどう配置するかという「人のスケジューリング」も、航空会社にとって重要な業務の一つだ。
運航乗務員の勤務計画は単純なシフト表ではない。必要な人員数に加え、乗務に必要な資格や労働時間、休暇、勤務間隔など、複数の条件を同時に満たす必要がある。運航計画の変更などにも対応しなければならず、担当者の経験や判断に頼っていては、作成に膨大な時間がかかる。
人員配置の複雑さは航空業界だけではない
こうした課題に対し、全日本空輸(ANA)と共同で勤務スケジュールの自動作成システムを開発してきたのが、インテリジェントフォースのグループ会社であるR&Dだ。
2021年からANAと運航乗務員のスケジュール自動作成システム「AI Scheduler」(AIS)の共同開発を進め、2026年4月から本格運用を開始した。そして今回、インテリジェントフォースは、この共同開発で培った技術やノウハウを他企業にも提供する「AISプラットフォーム」の提供を始める。
ただ航空会社向けに作ったシステムを、そのまま他社に販売するわけではないことだ。
同社が外販するのはANA向けのシステムそのものではなく、ANAとの共同開発を通じて得たAI、数理最適化技術や、複雑な業務ルールを整理し、勤務計画に落とし込むための開発ノウハウをベースに、新たに設計したプラットフォームだ。
今回のサービス化の背景にあるのは、複雑な現場で勤務計画を最適化した経験を、航空業界以外にも応用できるのではないかという考えだ。
勤務計画の作成が難しいのは、航空業界に限った話ではない。鉄道・バスや物流、医療、製造、小売・サービスなどでも、必要な人員を確保しながら、従業員の資格や技能、労働時間、休暇、勤務間隔など、複数の条件を考慮する必要がある。
だが、一般的なパッケージシステムでは、企業や現場ごとの細かなルールに対応しきれないケースもある。その結果、表計算ソフトなどを使って担当者が手作業で勤務計画を作成しなければならない。
こうした方法では、作成そのものに時間がかかるだけでなく、「誰がどう判断してこの勤務表を作ったのか」が分かりにくくなり、業務の属人化にもつながる。担当者が異動したり退職したりした場合、これまで培ってきた経験やノウハウをどう引き継ぐかという問題もある。
AISプラットフォームが狙うのは、こうした「複雑すぎて既製品では対応しにくい勤務計画」だ。必要人員や保有資格、労働時間、休暇、勤務間隔など、企業ごとに異なる条件を考慮しながら、業務ルールに応じたスケジュール案を作成する。導入時には、まず対象となる業務や制約条件を整理し、その企業に適した最適化ロジックを設計する。
もう一つ、同サービスで特徴的なのが、勤務計画の作成を全てAIに任せるわけではない点だ。AI、数理最適化技術によってスケジュール案を作成する一方で、最終的な判断には人が関わる。
勤務計画には、システム上で条件として設定できるものだけでなく、現場の経験や判断が必要になるケースもある。単純に制約条件を全て満たした最適解を出せば、それがそのまま現場で受け入れられるとは限らない。そのため同社は、AIによるスケジュール案の作成に加えて、既存の人事・勤怠・業務システムとの連携、導入後の運用設計、さらに利用状況に応じた改善や定着までを支援する。
AIで人員配置を自動化することそのものよりも、企業ごとに異なる「人の配置のルール」をどう整理し、AIと人間の判断をどう組み合わせるかが、サービスのポイントだ。
では、なぜ航空会社との共同開発から、他業界向けのサービスが生まれたのか。一つの答えは、航空会社の勤務計画が、そもそも非常に複雑な問題だからだ。
資格や勤務時間、休暇、勤務間隔など、多くの制約を抱える現場でスケジュールを作成するには、単にAIの技術を導入するだけでは足りない。現場の業務を理解し、何を制約条件として扱うのか、どこまでを自動化し、どこからを人の判断に委ねるのかを設計する必要がある。
ANAとの共同開発では、こうした複雑な勤務計画をシステムに落とし込むための技術やノウハウを蓄積してきた。その経験を、航空会社だけの特殊なシステムに閉じ込めるのではなく、他の業界にも展開する。
鉄道やバスなら乗務員、物流ならドライバーや倉庫スタッフ、医療なら医師や看護師、製造なら技能や資格を持つ作業員。業界は違っても、限られた人員を、複数の条件の中で適切に配置するという問題には共通点がある。
AISプラットフォームは、こうした共通する課題に対し、企業ごとの業務ルールに合わせて仕組みを個別に構築していく。
すでに複数企業から相談が寄せられており、一部ではサンプルデータを使った初期検証も進めているという。同社では、いきなり大規模なシステムを導入するのではなく、まず対象となる業務や制約条件を整理する。簡易的なアルゴリズムを構築して適用可能性を確認した上で、本格的なシステム開発につなげる考えだ。
今回のAISプラットフォームは、そうしたANAで使ったシステムの販売ではなく、複雑な現場で培った勤務計画の解き方を、他社の現場に合わせて再構築するという取り組みだと言える。
複雑な条件の中で人をどう配置するか。航空会社のために開発した解を、さまざまな業界で使えるシステムにする試みでもある。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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