現役情シスに聞いた「忙しすぎる理由」 やりたいけど手が回らない仕事とは? 228人調査
問い合わせ対応に追われる情シス。だが本当に足りていないのは、その問い合わせを減らすための整備作業だった。キーマンズネットが228人に聞いた調査から、負担の重い仕事と後回しにされる仕事の“ねじれ”が見えてきた。前編では、人数・担当体制・担当業務の実態を読み解く。
問い合わせや障害対応は待ってくれない。その一方で、台帳や手順書の整備、業務改善、IT戦略の策定にも取り組まなければならない。情シスに求められる仕事が広がる中、現場では何が負担となり、何が後回しになっているのか。
キーマンズネットは「情シスの業務負荷と運用体制に関する調査/2026年」(実施期間:2026年7月30日~8月23日、回答件数:228件)を実施した。前編では、情シスの人数や担当体制、担当業務を確認した上で、「負担が重い業務」と「後回しになっている業務」の違いを見ていく。調査から浮かんだのは、単に仕事が多いというだけではない、情シスが抱える構造的な問題だった。
情シスは少人数でも、仕事は減らない
社内のPC端末やネットワーク、SaaS、セキュリティなどを管理する「情シス業務」を、日常的に何人で担当しているのか。全体では「3~5人」(18.9%)が最も多く、「20人以上」(18.4%)、「2人」(18.0%)、「1人」(16.7%)が続いた(図1-1)。
ただし、企業規模によって状況は大きく異なる。従業員100人以下では「1人」が32.4%、「2人」が39.4%で、2人以下の体制が71.8%を占めた。一方、従業員数1001人以上では「20人以上」が47.4%を占め、6人以上の体制が68.4%に上った。大企業では複数人で分担できる仕事も、中小企業では1~2人がまとめて担っている可能性がある。
人数が少なければ、他の仕事との兼任も増える。担当体制を聞いたところ、「全員が情シス業務の専任である」が37.3%で最多だった。一方、「全員が他の業務と兼任している」(18.9%)、「専任者が中心で、一部に兼任者がいる」(18.0%)、「兼任者が中心で、一部に専任者がいる」(6.1%)、「専任者と兼任者が同程度いる」(4.4%)を合計すると、兼任者がいる体制は47.4%となった(図1-2)。
担当人数との関係を見ると、兼任者を中心とする体制は、担当者が1人の場合で36.8%、2人の場合で48.8%だった。これに対し、3人以上では「全員が専任」または「専任者が中心」の体制が計73.6%を占めた。少人数の企業ほど、情シス業務だけに専念できない様子がうかがえる。
守りの仕事は減らず、攻めの仕事が加わる
では、その情シスは何を担当しているのか。ここからは、情シス業務の主担当者や情報システム部門の担当者、兼任者、管理職・責任者の計134人を対象に結果を見ていく。
担当業務では、「社内からの問い合わせやヘルプデスク対応」(79.9%)、「PC、スマートフォンなどの調達や設定、端末管理」(76.1%)、「ネットワークやサーバ、クラウド基盤の運用」「ITベンダーの選定や契約、調整」(ともに73.1%)が上位に並んだ(図1-3)。さらに、「ユーザー部門のIT導入や業務改善支援」は65.7%、「IT戦略や予算、中長期計画の策定」も51.5%に上る。
つまり情シスは、端末管理や問い合わせ対応といった日々の運用を維持しながら、業務改善や中長期計画も進めなければならない。守りの仕事が減らないまま、攻めの仕事が加わっている。この担当領域の広さが、情シスの負担を考える出発点となる。
負担が重い仕事ほど、後回しにはできない
特に負担が重いと感じる業務を3つまで選んでもらったところ、「社内からの問い合わせやヘルプデスク対応」が43.3%で最多となり、「セキュリティ対策や監視、インシデント対応」が38.8%で続いた。「ユーザー部門のIT導入や業務改善支援」は20.9%、「ネットワークやサーバ、クラウド基盤の運用」と「IT資産台帳や手順書、社内ルールの整備」はともに20.1%だった(図2-1)。
負担が重い業務を挙げた118人に、その理由を聞くと、「突発的な対応が多く、予定を立てにくい」が55.9%で最多だった。「手作業や個別対応が多い」が46.6%、「特定の担当者に知識や業務が集中している」と「専門的な知識や判断が必要になる」がともに42.4%で続く。負担を生んでいるのは、業務量だけではない。予定を崩す割り込みや、簡単には他の人に渡せない仕事の性質も影響している。
それでは、本来は対応したいものの、人手や時間が足りず、十分に着手できていない業務は何か。上位は「IT資産台帳や手順書、社内ルールの整備」(38.1%)、「セキュリティ対策や監視、インシデント対応」(27.6%)、「ユーザー部門のIT導入や業務改善支援」(26.9%)だった(図2-2)。
ここで注目したいのが、2つの設問で順位が入れ替わっていることだ。ヘルプデスク対応は「負担が重い業務」では1位だったが、「後回しになっている業務」では8位相当まで下がった。反対に、台帳や手順書、社内ルールの整備は、負担が重い業務の4位タイから、後回しになっている業務の1位に上がった。
負担が重いから、後回しになるわけではない。問い合わせ対応は負担が大きくても、その場で処理しなければ利用者の仕事が止まりかねない。台帳や手順書の整備は重要だが、今日着手しなくても直ちに問題が表面化するとは限らない。仕事の優先順位を決めているのは、重要性だけでなく、目の前の緊急性でもあると考えられる。
台帳や手順書の整備を担当する人の“半数”が、その整備を後回しにしている――。担当業務とのクロス集計は、この記事で最も具体的な矛盾を映し出す。各業務の担当者のうち、同じ業務を後回しにしている割合を算出すると、「IT資産台帳や手順書、社内ルールの整備」は50.0%に達した。担当者の半数が、その業務を担っているにもかかわらず、十分に着手できていない。次いで「ユーザー部門のIT導入や業務改善支援」が34.1%、「セキュリティ対策や監視、インシデント対応」が30.2%だった。
一方、「ITベンダーの選定や契約、調整」は3.1%、「PC、スマートフォンなどの調達や設定、端末管理」は10.8%、「社内からの問い合わせやヘルプデスク対応」は13.1%、「ネットワークやサーバ、クラウド基盤の運用」は14.3%にとどまる。いずれも後回しにすれば、日常業務に比較的早く影響が表れる仕事だ。止められない仕事を優先した結果、そのしわ寄せが台帳や手順書の整備、業務改善などに向かっていると考えられる。
問い合わせに追われるほど、問い合わせは減らせない
緊急度の高い仕事を優先する一方で、重要な仕事が後回しになる。この構造は、情シス業務や現在の体制、仕事の進め方に対する不満を聞いた自由回答にも表れていた。自由回答を整理すると、その背景には「突発的な割り込み」「リソース不足と属人化」「経営層・他部門の理解不足」という3つの要因がある(図3)。
1つ目は、問い合わせなどによる割り込みだ。「ちょっとした操作の問い合わせでも連絡が入る」「こまごましたことで手が止められる」「技術の進歩・変化についていけている人間が少ない。継続的な情報収集、勉強が必要なはずの業務だが、日々の業務を回すことのみで終わってしまっている」といった声が寄せられた。「日々の運用業務に追われており、本当に必要な攻めのITをやる時間がない」「緊急性を有することにかかわる時間が少なくなく、重要な仕事が後回しになる時がある」との回答もあった。
ここには皮肉な循環がある。問い合わせに対応するほど、問い合わせを減らすための社内ルールや手順書を整備する時間がなくなる。ルールや手順書の整備が遅れれば、同じような問い合わせが再び寄せられる可能性がある。現場が目の前の仕事に真面目に対応するほど、将来の負担を減らす仕事が遠のいていく。
2つ目の問題は、リソース不足と属人化だ。「15年来、人数は増えていないが担当業務は大きく増加しており、効率化だけでは個人の負荷を下げられない」「負荷が高く代わりがいない」といった声が寄せられた。人数が足りないだけでなく、代わりを務められる人がいないことが、既存の担当者を日常業務から離れられなくしている。
また、「保守運用業務を減らし、業務改善の仕事を増やしていきたいが、メンバー自身、保守運用業務の方が勝手が分かっていてやりやすいので、そこにあぐらをかいていると感じている」という回答もあった。「どうしても属人化になりやすい」「新しい取り組みを行わない保守的な組織になりつつある」との懸念も寄せられている。属人化は、単に休みにくい、引き継ぎにくいという問題にとどまらない。今の運用を最もよく知る人が、今の運用を回すだけで手いっぱいになることで、変化そのものが難しくなる。
3つ目は、経営層や他部門の理解だ。「経営層が理解できず予算化されない。コストを渋る」「便利屋のような扱いを受けている」「さまざまなシステムの下支えをしている部門に対する理解が欲しい。単なるコストと捉えていると感じることが多い」といった声があった。情シスが「何でも屋」として扱われる一方で、改善に必要な予算や人員は確保されにくいという不満だ。
中には、「経営層を含む非エンジニアには専門的知識や技術が必要な業務とそうではない業務、また外部に任せて良い業務と社内に決定権を持つべき業務の切り分けが難しい為対応が反転してしまっていることが課題です。結果として効果のないことに予算が割かれ、必要な部分を外注出来ない為業務改善のスピードが落ちているもしくは一向に進まない状況です」との指摘もあった。
人や予算を増やせば、全て解決するとは限らない。どの仕事を社内に残し、何を外部に任せるのか。経営層や利用部門とどのように役割を分担するのか。止められない仕事を回しながら、将来の負担を減らす仕事にどう時間を振り向けるのか。情シスの負担を軽減するには、個々の業務を効率化するだけでなく、仕事の分け方そのものを見直す必要がある。
後編では、業務が後回しになる理由と、その結果として生じている影響を確認する。さらに、外部委託によって負担は本当に軽減されているのか、どの業務を外部に任せたいと考えているのかを、アンケート結果から掘り下げる。
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IT担当者300人に聞きました
業務課題、注目のITツール……。話題には上るけれど、実際のところはどうなのか。キーマンズネット会員の声で知る、隣のカイシャのIT事情。読者のホンネを紹介します。
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