AI人材を採用できない中小企業、専門家を「必要な時だけ」活用する支援サービス
生成AIを導入しても、現場で使いこなせなければ業務改善にはつながらない。中小企業ではAI人材の不足や研修、費用が壁となる中、専門人材を常時抱えるのではなく、「必要な時だけ活用する」という選択肢を提供するベンダーがある。
生成AIを導入したものの、現場で使われない。どの業務から始めればいいのか分からない。専門人材を採用しようとしてもコストや人材不足がボトルネックになる。中堅・中小企業では、AIを「導入すること」よりも、その後の業務への定着や人材育成が課題になっている。
こうした課題に対し、Stella Holdingsは2026年9月、中小企業のAI導入とDXを支援する「AI Boost」の提供を始めた。AI活用や税務、公的制度活用などの専門家による伴走支援と、業界・職種・習熟度に応じた企業研修を組み合わせ、AIの導入から現場への定着までを支援する。
「AIを導入しただけ」で終わる中小企業 次の壁は定着
生成AIの業務利用が広がる一方、中堅・中小企業では「何から始めればいいのか分からない」「導入したツールが現場に定着しない」といった課題を抱えている。
AIを使うには、単にツールを契約するだけでは足りない。自社の業務のどこに適用できるのかを見極め、従業員が実際に使えるようにする必要がある。さらに、導入によって業務や従業員の役割が変われば、人事評価や社内の業務設計を見直す必要もある。
専門人材を社内に確保する方法もあるが、AIに詳しい人材は採用難度やコストの面でハードルがある。汎用(はんよう)的なAI研修だけでは、実際の業務にどう使うのかまで落とし込めないケースもある。
Stella Holdingsは、こうした「導入前後の壁」を、専門家による伴走、実務を想定した研修、公的制度の活用という3つの側面から支援する。
AI専門人材を採用する前に「必要な時だけ専門家」
AI Boostの専門家支援では、企業の経営課題に応じた人材が課題整理からツール選定、導入、定着までを支援する。
単にAIツールを紹介するのではなく、同業種・同様の課題を抱える企業の導入事例などを踏まえ、自社で再現できる業務手順を設計する。支援終了後も企業側で改善を続けられる状態を目指す。
これは、AI専門人材を正社員として採用し、社内に抱えるのとは異なるアプローチだ。AI活用の課題が発生したタイミングで専門家の知見を取り入れ、導入や運用の仕組みを社内に残していく。
同社によると、支援実績は3000社超、登録専門家は800人超。企業ごとの課題に応じて専門人材を組み合わせる。
「AI研修を受けた」で終わらせない 業務を題材に実践
AI活用では、従業員がツールの使い方を知っているだけでは業務変革につながりにくい。
例えば、生成AIで文章を作成する方法を学んでも、自社の営業資料や顧客対応、管理業務のどこで使えば効果が出るのかが分からなければ、日常業務には定着しにくい。
AI Boostの企業研修では、生成AIの基礎から業務への適用までを対象とし、業界、職種、習熟度に応じて内容を設計する。受講企業の実務を題材とした演習も取り入れ、実際の業務で使える技能の定着を狙う。
AIを「知っている人」を増やすだけでなく、「自分の仕事で使える人」を増やすことを重視する形だ。
補助金・助成金もAI導入の壁に 申請まで支援
中小企業にとっては、AI導入に必要な費用も課題に挙がりやすい。補助金や助成金などの公的制度は複数存在する一方、制度ごとに条件や申請方法が異なるため、自社で利用できる制度を探し、申請まで進めること自体が負担になる。
AI Boostでは、公的制度に関する情報提供に加え、提携する社会保険労務士や行政書士らによる申請支援も用意する。
同社によると、対象制度を利用した場合、対象経費の最大75%の補助を受けられる可能性があるとしている。ただし、利用できる制度や補助率は制度ごとの要件によって異なる。
AIツールの導入費用だけを見るのではなく、専門家支援や研修などを含めて、導入から定着までにかかる負担をどう抑えるかという観点で支援する。
AI導入で「人事評価」まで変わる?
AIを業務に組み込めば、従業員の仕事の内容も変わる可能性がある。
例えば、これまで資料作成やデータ入力に費やしていた時間をAIによって削減できれば、従業員には顧客との対話や企画、判断など別の役割が求められるようになる。
AI Boostには、人材採用やシステム開発、人事評価を担うグループ会社も参画する。
Stella Talent Partnersは「採用ブースト」や、AIによる自動架電で面接設定を自動化する「面接ブースト」を提供。Stella Research & Developmentは基幹システムや業務アプリ、AIエージェントの開発を担う。Stella Logistic Partnersは人事評価制度の改善に加え、AI導入による役割変化に応じた評価・処遇の再設計を支援する。
AI導入を「IT部門だけの問題」とせず、採用、人材育成、システム、人事制度まで含めて企業変革につなげる考えだ。
中小企業のAI活用、「ツール選び」の次に何が必要か
AI Boostの対象は従業員300人未満を中心とする中堅・中小企業だ。研修、専門家支援、公的制度活用支援は、それぞれ単独でも組み合わせても利用できる。
中小企業のAI活用では、AIツールそのものを選ぶことがゴールではない。自社のどの業務に適用するのか、誰が使うのか、導入後にどう改善するのかまで設計する必要がある。
さらに、AIによって仕事の進め方や従業員の役割が変われば、採用や研修、人事評価といった周辺の仕組みも見直しが必要になる。
Stella Holdingsは、AI Boostを通じて専門家による知見と企業内の人材を組み合わせ、AIの導入から定着までを支援する方針だ。
生成AIの導入が広がる中、企業に問われ始めているのは「AIを導入するか」だけではない。AIを導入した後、誰が使い、どう業務を変え、その変化をどう企業の仕組みに組み込むのか。中小企業のAI活用は、ツール選定から「人と組織の変革」へと論点が広がりつつある。
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