AIを入れても仕事は変わらない? アビームとNotionが「企業ナレッジ」に注目する理由
AIエージェントの導入が進む一方、企業固有の業務を任せるには、社内に分散する知識や個人の経験則をAIが使える形に整える必要がある。アビームとNotionは、ナレッジを起点に業務と組織を変える。
生成AIからAIエージェントへとAI活用の中心が移りつつある。質問への回答や文書作成を支援するだけでなく、業務の状況を判断し、必要な作業を自律的に進めるAIエージェントへの期待が高まっている。
一方で、AIエージェントを導入すれば、そのまま企業の業務が変わるわけではない。AIが企業固有の業務を担うには、業務手順や判断基準、過去の経緯、担当者の経験則などをAIが参照できる状態にする必要がある。だが、こうした情報は社内の複数のシステムや文書に分散し、暗黙知として個人に蓄積されているケースも少なくない。
そこでアビームコンサルティングとNotionが打ち出すのが、企業ナレッジを起点に、AIを前提とした業務・組織運営への転換を支援する取り組みだ。
AIエージェントに「自社の仕事」をどう教えるか
企業がAIエージェントを活用する上で課題となるのが、汎用的なAIの性能だけでは解決できない「企業固有の文脈」だ。例えば営業なら、単に顧客情報を検索するだけでなく、「この条件ならどの提案を優先するのか」「過去に似た案件ではどう判断したのか」といった知識が必要になる。人事や経理、法務などでも、業務手順だけでなく、判断の背景や例外への対応が求められる。
こうした情報がマニュアルやデータベースに整理されていればAIに参照させやすいが、実際には会議の議論や過去の資料、担当者の経験などに分散していることも多い。そのため、AIエージェントを導入しても、参照できる情報が限定されれば、個別業務の効率化にとどまり、組織全体の業務変革につなげにくい。
両社はこの課題に対し、企業内のナレッジをAIが活用できる形に整備し、それを起点として業務プロセスや組織運営そのものを再設計するアプローチを取る。
Notionを「Agent OS」として活用
両社は2026年10月から「ナレッジ起点AI組織変革支援サービス」を提供する。アビームコンサルティングが業務・組織変革やチェンジマネジメントの知見を提供し、Notionが業務やナレッジを統合するプラットフォームを提供する。
ポイントは、「Notion」を単なる情報共有ツールとしてではなく、AIエージェントが業務の文脈を理解するための「Agent OS」として位置付けることだ。
企業に分散している知識やノウハウをAIエージェントが参照できる形に構造化し、継続的に更新されるナレッジ基盤として整備する。その上で、人とAIの役割や業務プロセス、組織運営を見直す。つまり、AIを既存業務に後から組み込むのではなく、「AIがいること」を前提に仕事の進め方そのものを設計し直すことが狙いだ。
AIエージェントを「作って終わり」にしない
支援内容は、構想策定から実装、定着までをカバーする。まず、経営課題や変革テーマを整理し、AI活用戦略や業務プロセスを設計。AI CoEの構築や、Notionをナレッジ・AIエージェント活用の基盤とするロードマップ策定も支援する。
その上で、「Notion AI」や「Custom Agents」などの標準機能を活用し、社内問い合わせへの対応、議事録やドキュメント作成、案件管理、レポーティングなどの業務を高度化する。
さらに、「Notion Developer Platform」を使い、SAPなどの基幹システムや「Salesforce」「ServiceNow」「Microsoft 365」「Google Workspace」、企業独自のシステムなどとの連携も想定する。
例えば会議終了や稟議申請をきっかけに、AIエージェントが関連文書を作成したり、関係者への通知やタスク起票を実行したりする仕組みを構築できるという。営業や人事、経理、法務、ITなど、部門ごとの業務に特化したカスタムエージェントの設計・実装も対象となる。
「個人の経験」を組織の資産に変える
両社が想定する用途は、現場の業務効率化だけではない。経営・組織マネジメントでは、各部門の取り組み状況や経営指標をNotion上で可視化し、経営層と現場が同じ情報や文脈を共有できる環境を構築する。
部門業務では、営業や人事、経理、法務などのプロセスを人とAIが協働する前提で再設計。案件管理や文書作成、進捗管理などを1つの基盤上で連携させる。
さらに現場では、作業手順や設備保全のノウハウ、判断の経緯などを組織のナレッジとして蓄積。これまで個人の経験に依存していた業務を、人とAIが継続的に学習・改善するサイクルへ転換することを目指す。
ここで重要なのは、AIエージェントそのものを増やすことではない。AIが仕事を担うための「企業固有の知識」を整備し、それを人とAIの双方が利用できる状態にすることだ。
##AI活用の次の壁は「ナレッジ」と「組織」
これまでの企業の生成AI活用では、文書作成や検索、要約など、個人の作業を効率化する用途が中心だった。AIエージェントの普及が進めば、次は複数の業務をまたいでAIに仕事を任せる段階へ移る。
その際に問われるのが、「AIに何をさせるか」だけではなく、「AIが仕事をするための知識をどう整えるか」「人とAIの役割をどう分けるか」という問題だ。
アビームコンサルティングとNotionは、こうした課題に対して、企業ナレッジを起点に業務と組織を再設計するアプローチを打ち出した。
両社は初年度、製造や金融、商社などの国内大手企業を中心に導入を進め、得られた知見を業界別のレファレンスアーキテクチャやベストプラクティスとして展開する方針だ。
AIエージェントの導入競争が進む一方で、企業にとっては「どのAIを導入するか」だけでなく、「自社の知識をどうAIに渡し、AIと働くことを前提に組織をどう変えるか」が新たなテーマになりそうだ。
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