増えるセキュリティ予算、それでも拭えない不安 企業はなぜ「泥縄」から脱却できないのか?
セキュリティ予算を増額する企業が増える一方で、中長期的な計画を欠いた場当たり的な対応が浮き彫りになっている。背景には人手不足とガバナンスの欠如がある。KPMGの調査から企業の課題を考える。
2026年10月20日、フジテレビの番組宣伝システムが不正アクセスを受け、メディア関係者の個人情報が最大730件漏えいした可能性があると発表された。同日には栃木県警の被害も報じられた。災害時安否確認システムの委託先を経由して、全職員約3900人分の個人情報が流出した可能性がある。
2026年10月21日にはリクルートが「カーセンサーnet」などへの不正アクセスによって、最大371万件規模の個人情報が漏えいした可能性があると公表するなど、国内ではセキュリティインシデントが連日表面化している。
こうした状況を受けて、多くの企業がセキュリティ関連の投資額を増加させている。一見すると対策が進んでいるように見えるが、現場のIT部門や情報システム部門の不安や負担は軽減されていない。
投資を増額しているにもかかわらず、サイバー脅威に対する根本的な解決に至らないのはなぜだろうか。
計画なき投資と深刻な人材不足の悪循環
問題の根底にあるのは、中長期的な戦略を欠いた場当たり的な予算投下と人材不足だ。
多くの企業は目先の脅威やインシデントへの対応に追われるあまり、数年先を見据えたセキュリティの中期計画を策定できていない。その結果、セキュリティ予算を増額しながらも、企業としてのセキュリティ管理体制の整備や運用設計は後手に回りがちだ。
この状況に追い打ちをかけているのが、セキュリティ推進組織の人員不足だ。セキュリティの専任担当者を置いている企業は少なく、他業務との兼務で運用せざるを得ない。専門的なスキルを持つ人材の確保が困難な中で、運用が回らずに緊急性の高い脆弱(ぜいじゃく)性へのパッチ適用や資産管理の徹底といった基本的な対応さえ遅れてしまう悪循環に陥っている。
KPMGの調査が示す、日本企業が直面するセキュリティ管理の現実
こうした企業の実態を鮮明に浮き彫りにしたのが、KPMGジャパンが発表した「サイバーセキュリティサーベイ2026/27」(速報版)だ。国内上場企業および売上高1000億円以上の未上場企業420社を対象とした同調査によると、56.9%の企業がセキュリティ予算を増加させている一方で、中期計画を未策定の企業が41.3%に上ることが明らかになった。
サイバーセキュリティ推進組織の人員については87.4%の企業が不足を認識しており、専任人数が「0人」と回答した企業は46.9%を占めた。緊急度が高い脆弱性へのパッチを1カ月以内に適用できている企業は52.1%と半数程度にとどまった。
ランサムウェア対応としてのバックアップ対策や、資産管理・ID管理ツールなどの導入は進んでいるが、45.4%の企業が運用面に課題を感じているという。
生成AIやAIエージェントの活用においても、明確な責任者を定めていない企業が38.2%に達し、各部門での個別の導入により全社的な把握ができていない実態(23.0%)も浮き彫りとなった。技術の進化に対してガバナンスと運用体制が追い付いていない実態が数値として裏付けられた形だ。
セキュリティ対策の再定義 持続可能な運用体制への転換
この結果が示しているのは、個別のセキュリティ製品やAIツールを単体で導入するだけでは高度化する脅威を防ぎ切れないという事実だ。自社のIT資産やAIの利用実態を把握できていなければ、いくら最新の防御システムを入れても抜け道が残ってしまう。
自社内の対策だけでは不十分であることも明白だ。同調査によると、インシデントの発生経路として「国内の委託先・取引先」経由が14.1%で最多となっており、栃木県警の事例のように利用している他社システムの弱点を突いた攻撃や、海外子会社のガバナンス不足を突いた侵害が増えている。
これからのセキュリティ対策は単なる「ITインフラの防衛活動」ではなく、サプライチェーンや子会社、AI活用まで含めた全社的なBCP(事業継続計画)として再定義する必要がある。単に予算を増やす防戦一方の投資から脱却し、事業を支える基盤としてセキュリティ運用を持続可能な形に組み替えることが求められている。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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