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基幹システムを任せて大丈夫? 最新「IaaS」解説IT導入完全ガイド(1/5 ページ)

開発環境や情報系システム、管理系システムの移行先として一般的な選択肢となったIaaS。基幹系システムの移行はどうだろうか?

» 2015年07月13日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]

 IaaSは開発環境や情報系システム、管理系システムのサーバ移行先として既に一般的な選択肢になっている一方、基幹系システムのIaaSへの移行ケースはいまだ限定的だ。基幹系システムの運用管理コストやシステム拡張に要する時間に大きな課題を抱えながらも、IaaSのセキュリティやパフォーマンス、安定性に不安を感じる企業も多いようだ。今回は、特に基幹系システムの移行先としてのIaaSに焦点を当て、移行に際して検討すべきポイントを幾つかの事例を紹介しながら考えてみたい。

クラウドサービスの境界線は曖昧に

 IaaSは、ベンダーが所有するサーバやストレージ、ネットワーク機器などの能力を必要に応じて利用できるサービスのこと。ITインフラの最下層部分をベンダーが所有し、運用管理にも責任を持つ。

 OSやミドルウェアなども業者から提供されるが、その部分の運用管理は利用企業に任される。加えてOSやミドルウェアの運用管理も業者が行うのがPaaS、さらにその上のアプリケーションの提供と運用管理も業者任せにできるのがSaaSだ。

 少々分かりにくいのは、同一ベンダーが同一インフラを用いてIaaSとPaaS、時にはSaaSまで提供している場合があり、ベンダーやサービス名称だけでは何を指しているのかはっきりしないことだ。

 例えばPaaSとしてスタートした「Microsoft Azure」がIaaSを提供するようになり、IaaSとして普及した「Amazon EC2」はサービスを追加してPaaSも内包したAWSに発展した。また国内大手ベンダーでは、IaaS、PaaS、SaaSに加え、時にはハウジングなどのデータセンターサービス、運用管理サービスやシステム構築・開発のプロフェッショナルサービスまで組み合わせた提案を行っており、ユーザー企業は必要に応じていかようにもサービスを選択できるようになってきた。

 従来はパブリッククラウドとプライベートクラウドとの組み合わせを「ハイブリッドクラウド」と呼んでいたが、現在ではこれにユーザー企業内の既存システムやデータセンターのハウジングシステムも含む「ハイブリッド化」あるいは「マルチクラウド化」が進んでいるのが1つのトレンドだ。

 図1を見てみよう。これは、NECが同社クラウドサービスを製造業の基幹系システム向けに適用するイメージを描いたものだ。

ハイブリッドインフラのイメージ 図1 オンプレミス、ハウジング、IaaS、PaaS、SaaSのハイブリッドインフラのイメージ(製造業の場合)(出典:NEC)

 図に見るように、ユーザー企業が所有するインフラと、NECが提供するIaaS、他社が提供するIaaSやPaaS、SaaSを連携したハイブリッド環境が実現するわけだが、同社が強調しているのは他のクラウドサービスや自社所有環境(オンプレミス/ハウジング環境)との統合管理機能だ。

 例えば、特定業務システムが実体としてハウジング環境とクラウド環境にまたがって連携する形をとっていても、全ての稼働状況がその業務システムの視点で監視でき、必要な操作が同一ポータルから実行できる。同社IaaS内のインスタンス作成、削除、構成管理などのプロビジョニングができるのは当然、加えて自社所有環境や他社クラウドサービス内の環境であってもリソース使用状況参照、インシデント登録や参照、リモートコマンド実行、構成情報登録や参照などの統合管理が可能なのだ。

 もちろんクラウドサービス単位の管理も同一ポータルで行える。これは、クラウド利用で運用がブラックボックス化するのを防ぐ効用があり、運用実態に応じた構成変更などを加えやすくする。特に基幹系システムでは全てを一気にクラウド化するのは難しく、従来の環境との連携を必要とすることも多いだろう。

 そこで強く求められる安定性や性能を、ユーザー企業の判断で確保するのに統合管理機能は好適だ。他社でもOpenStackなどのクラウド環境構築管理ツールや統合運用管理ツールを組み合わせるなどしてハイブリッドなクラウド統合管理機能を提供している。これは今後のクラウド利用では見逃せない側面だ。

異なるプラットフォームを業務システムの視点から統合管理可能なセルフサービスポータルの例 図2 異なるプラットフォームを業務システムの視点から統合管理可能なセルフサービスポータルの例(出典:NEC)
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