企業のSNS利用では、従業員の個人アカウントでの利用と、企業アカウントでの利用の両面を考える必要がある。個人アカウントへの企業ポリシーの適用が可能かどうかは判断が難しい部分があるものの、大抵の会社の就業規則には「服務原則」として社会的なルールやマナーを守るべきことが明記してあり、セクハラ、パワハラ、人種差別などの禁止や秘密保持の原則、会社資産の私的利用禁止などの項目も明文化してあるはずだ。その範囲内であれば、就業時間内はもちろん時間外でも不適切なSNS利用を抑止するためのコントロールが効くと考えて差し支えない。
問題は、どんな投稿が許され、何がいけないのかを企業のポリシーとして明確にして、従業員の自覚を高めて適切な利用を図ることだ。そのための根拠になるのが「ソーシャルメディアポリシー」であり、そのポリシーを役割に応じて具体化した「SNS利用ガイドライン」である。明文化したポリシーを持つことで、企業として確固たる姿勢で従業員への教育を推進できる。また従業員側では行動基準が明確になることで投稿内容の是非を自己判定することが容易になる。
ソーシャルメディアポリシーを公開している企業は外資系企業や大手国内企業を中心に多数ある。まず会社としてのSNS利用についての考え方を表明し、会社が承認したアカウントについて利用目的(顧客との適切かつ質の高いコミュニケーションを実現する、など)を明確化した後、対象者の種別に沿って利用に関する心構えや原則およびルールを明文化するのが基本的なパターンだ。企業内でも役割に応じてSNS利用ルールは異なり、根幹となるソーシャルメディアポリシーにのっとって細則を決めるガイドラインを数種類策定することが望ましい(図1)。
図1に見るように、既存の就業規則をはじめとする社内ルールと、業務を委託する外部企業との間での契約も踏まえて、整合性のとれたガイドラインにすることが重要だ。
例えばコカ・コーラシステムではSNSに対する行動指針の基本理念を示したうえ、透明性の担保、消費者のプライバシーの保護、第三者の権利の尊重、技術利用に対する責任、傾聴と事例の活用という5つの基本的価値観をうたい(コミットメント)、それにのっとって「社員及び協力会社によるソーシャルメディアの利用について」のガイドラインを策定している。
また、「個人の立場で、ソーシャルメディアを利用する場合の基本指針」では、これらを理解し、順守することを求め、さらに「認定ソーシャルメディア担当者に対して求めること」として、社員や公認アカウント運営委託スタッフに対するガイドラインもまとめている。
ガイドラインの呼び方は各社さまざまだが、従業員の不適切投稿抑止についてとりわけ重要なのが、不特定多数の一般の人々に対して公表する「コミュニケーションガイドライン」と、内部的に利用する「社員活用ガイドライン」、企業アカウントで投稿を計画的に行う「運用チーム向けガイドライン」の3つである。以下にそれぞれが含むべき内容を簡単に紹介していく。
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