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「4部屋に1部屋は空予約」という実態を解消する「会議室予約システム」最新事情IT導入完全ガイド(3/3 ページ)

» 2016年10月11日 10時00分 公開
[吉村哲樹オフィスティーワイ]
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会議室運用効率化の取り組みの効果を見える化

 こうした仕組みを運用するうちに、システム上には会議室の予約や利用の実績データがどんどんたまっていく。これらのデータを集計・分析すれば、「いつ、どの会議室を実際に利用したか」「この会議室の稼働率はどれぐらいか」「予約がキャンセルされた確率はどの程度か」といったように、会議室の利用実態を定量的に把握できる。

 もし特定の部署で予約のキャンセル率が高ければ、その旨を指摘して会議室利用の改善を促すことができる。また、収容人数より少ない人数での利用が全体的に多ければ、個々の会議室のスペースを狭くして、数を増やした方がいいのかもしれない。そもそも、会議室の実質的な稼働率が低いのであれば、会議室のスペースを減らして、空いたスペースを他の用途に割り当てる手も考えられる。

 データの中からこうした知見を簡単に得られるよう、多くの会議室予約システムではログを集計・分析して、その結果をグラフや表の形で提示できる機能を備えている。例えばSmartRoomsでは、「会議室ごとの予約率」や「平均会議時間」「稼働率」といった代表的な指標をグラフや表で参照できるレポートを10種類ほど出力できる(図3参照)。また、集計データをCSVファイルにも出力できるため、別途BIソフトウェアなどでそれを読み込み、詳細な分析を行うこともできる。Crestron Fusionも同様のレポーティング機能を持つほか、システム管理者に毎週1回レポートを自動送付する機能も備える(図4参照)。

 会議の効率化がもたらす効果は定量化がなかなか難しいが、こうした機能を活用すれば導入効果を数値として可視化でき、実効的な会議効率化の施策立案に生かせるほか、会社の上層部に対して導入効果をアピールしやすくなる。実際に製品の導入を検討する際には、こうした機能の有無にもぜひ着目したい。

会議室の予約率/稼働率を時間帯別に集計 図3 各会議室の予約率/稼働率を時間帯別に集計。「SmartRooms」の例(出典:内田洋行)
会議室毎の合計使用時間(Crestron Fusion) 図4 会議室ごとの合計使用時間を集計。「Crestron Fusion」の例(出典:日本クレストロン/イトーキ)

会議室予約システムを選定する際のポイント

 その他にも、会議室予約システムの製品・サービスを選定する際に留意したいポイントを幾つか挙げてみよう。

既存グループウェアとの連携

 多くの会議室予約システムは、グループウェア製品の会議室予約管理機能と連動することを前提としている。もし既に自社でグループウェア製品を導入しており、会議室の予約管理を行っているのであれば、導入を検討している会議室予約システムがそのグループウェア製品との連携をサポートしているか、事前に確認しておく必要がある。

 もしサポートされていない場合は、サポート対象のグループウェア製品を新たに導入するのか、もしくは既存グループウェアとの連携部分を開発するのか(そもそも開発できるのか)といった点を慎重に検討し、そのために掛かるコストや時間なども考慮した上で導入計画を立てるべきだろう。

オンプレミスかクラウドか?

 会議室予約システムの中には、自社システム内にサーバを設置するオンプレミス型だけでなく、デバイスや管理用端末だけを用意すれば、後はベンダーのクラウド環境に接続してすぐ利用を始められるクラウド型製品も存在する。

 クラウド型製品は導入時にかかる時間やコストを節約でき、かつ運用の手間も掛からないが、長期的に見るとオンプレミスより割高になるケースもある。どちらを選ぶべきかは、慎重に検討する必要があるだろう。例えばCrestron Fusionは、2017年より国内においてクラウドサービスとしての提供を始める予定だが、会議室の数に応じて月額料金が決まるため、会議室の数が少ない中小企業にとってはコストメリットが大きいといえるだろう。

システム連携や拡張性は?

 会議室予約システムを単体で導入しても十分な効果が見込めるが、周辺システムと連携させることでよりソリューションの価値を高めたり、システムにカスタマイズを施すことでその使い勝手をより一層向上させることもできる。Crestron Fusionは、もともと多種多様なAV機器や照明器具の一元管理・監視システムがベースとなっているため、周辺機器との連携に強みを持っており、柔軟なカスタマイズ性も備えるという。

 ただし、あまりに多くのシステムや機器と複雑に連携し、独自カスタマイズを大量に施してしまうと、システムの運用性や保守性にマイナスの影響が出ることも心配されるため注意が必要だ。

 以上、今回は会議室予約システムについての概要を紹介した。こうした取り組みを進めていくと、会議室の壁を取り払ったりガラス張りにすることで社内コミュニケーションの風通しを良くしたり、あるいは会議が減った分増えてしまったメールやチャットのコミュニケーションを効率化する必要が出てきたりと、会議以外の要素も含めた社内コミュニケーション全体の「トータルコーディネーション」が必要になる。従って会議室予約システムの導入も、本来は全社的な経営戦略の一環として位置付けられるべきものだろう。

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